はるほんさん
レビュアー:
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大戦の前から始まり、その後も続いた「外交」という戦い。
──重光 葵(まもる)。
と聞くと誰?となりそうだが、教科書でこんな写真をみたことがないだろうか。
大戦後、日本がポツダム宣言を受けいれ
無条件降伏の文書に調印したのが、この重光外相だ。

第二次世界大戦は日本からみれば
1941年12月8日の真珠湾奇襲が始まりであり、
1945年8月15日の玉音放送が終焉のように思えるが、
その布石は日本の韓国併合にある。
ということは、遡れば既に日清戦争に端を発するわけだ。
大戦よりずっと前にはじまっていた世界の歪みと、
終戦後も続いていた日本の戦いを、外交と言う視点から語った物語だ。
日清戦争以降、清国内は分裂が進み、
各国の利権と国民の不満が渦巻く場所となっていた。
その暴動で公使であった重光は、右足を失う。
が、既に以前から中国では排日感情が高まっていた。
しかし日本も「生命線」とまで言われた満州を手放せない。
結果、親日の独立国として「満州国」をでっちあげる。
これが有名な「ラストエンペラー」の映画であり、
日本は勢いあまって国際連盟を脱退することになる。
重光は療養で故郷に戻ったが、復帰後大使としてイギリスへと赴く。
ドイツではヒトラーが独裁政治を敷き、英独間では緊張が高まっていた。
日本としては、満州の利権さえあればいい。
だが世界の中で、これ以上孤立するのはまずい。
英国とギリギリの国交を保つことが、重光の狙いだった。
だが日本は日独伊の三国同盟を結んでしまい、
重光の努力は水泡に帰してしまう。
時の首相・近衛文麿はここまでやらかしといて内閣を解散し、
あの東條英機が首相に任命される。
だが既に開戦は、避けられない事態となってしまっていた──
とまぁ、大戦にまつわる世界情勢が分かり易く書かれている。
が、恐らくテーマとしてA級戦犯──、
国際連盟を脱退した松岡洋右と、独裁だったと言われる東条英機の二人を
違う視点で見てみようという意図もあるのだと思う。
もどかしいな、と思う。
たった70年前のコトであるのに、
こういうものを読めば読むほど実像が分からない。
戦国や江戸ならそこに浪漫も感じるのだが
こと戦争に関しては、その不透明さがもどかしい。
とりあえず自分の中では「本当はいい人だった」という話は
「それでも戦争を止められない」という意味で心に留めることにしている。
重光外相も、A級戦犯として実刑を受けた人物だ。
が、彼の話はそこでは終わらない。
敗戦という無気力と不安が残された中、
尚も外交という剣を手に闘った男だったのだ。
戦後、アメリカが直接軍政を行うのではなく
日本政府が存続できたのは彼の功績であると言われる。
戦争責任という問題は、難しい。
今更過去を追求してどうなるものでも無いので、
むしろ責任が誰かだけにあるという主張の方が、腹立たしい。
「誰も戦争など望んでいなかった」という言い訳なんぞ、何の役にも立たない。
仮にまた戦争が起こったら、同じことを言うのか?
だが重光は諾々として判決に従い、
その後は日本の厳しい現実と未来を思い、強気に外交を振るった。
国際連合への復帰にも大きく貢献している。
後にロシアとの外交において、北方領土という問題は残されたものの
この人物に興味がわいた。
「大戦」という出来事の、前後を知る資料としてオススメ。
と聞くと誰?となりそうだが、教科書でこんな写真をみたことがないだろうか。
大戦後、日本がポツダム宣言を受けいれ
無条件降伏の文書に調印したのが、この重光外相だ。

第二次世界大戦は日本からみれば
1941年12月8日の真珠湾奇襲が始まりであり、
1945年8月15日の玉音放送が終焉のように思えるが、
その布石は日本の韓国併合にある。
ということは、遡れば既に日清戦争に端を発するわけだ。
大戦よりずっと前にはじまっていた世界の歪みと、
終戦後も続いていた日本の戦いを、外交と言う視点から語った物語だ。
日清戦争以降、清国内は分裂が進み、
各国の利権と国民の不満が渦巻く場所となっていた。
その暴動で公使であった重光は、右足を失う。
が、既に以前から中国では排日感情が高まっていた。
しかし日本も「生命線」とまで言われた満州を手放せない。
結果、親日の独立国として「満州国」をでっちあげる。
これが有名な「ラストエンペラー」の映画であり、
日本は勢いあまって国際連盟を脱退することになる。
重光は療養で故郷に戻ったが、復帰後大使としてイギリスへと赴く。
ドイツではヒトラーが独裁政治を敷き、英独間では緊張が高まっていた。
日本としては、満州の利権さえあればいい。
だが世界の中で、これ以上孤立するのはまずい。
英国とギリギリの国交を保つことが、重光の狙いだった。
だが日本は日独伊の三国同盟を結んでしまい、
重光の努力は水泡に帰してしまう。
時の首相・近衛文麿はここまでやらかしといて内閣を解散し、
あの東條英機が首相に任命される。
だが既に開戦は、避けられない事態となってしまっていた──
とまぁ、大戦にまつわる世界情勢が分かり易く書かれている。
が、恐らくテーマとしてA級戦犯──、
国際連盟を脱退した松岡洋右と、独裁だったと言われる東条英機の二人を
違う視点で見てみようという意図もあるのだと思う。
もどかしいな、と思う。
たった70年前のコトであるのに、
こういうものを読めば読むほど実像が分からない。
戦国や江戸ならそこに浪漫も感じるのだが
こと戦争に関しては、その不透明さがもどかしい。
とりあえず自分の中では「本当はいい人だった」という話は
「それでも戦争を止められない」という意味で心に留めることにしている。
重光外相も、A級戦犯として実刑を受けた人物だ。
が、彼の話はそこでは終わらない。
敗戦という無気力と不安が残された中、
尚も外交という剣を手に闘った男だったのだ。
戦後、アメリカが直接軍政を行うのではなく
日本政府が存続できたのは彼の功績であると言われる。
戦争責任という問題は、難しい。
今更過去を追求してどうなるものでも無いので、
むしろ責任が誰かだけにあるという主張の方が、腹立たしい。
「誰も戦争など望んでいなかった」という言い訳なんぞ、何の役にも立たない。
仮にまた戦争が起こったら、同じことを言うのか?
だが重光は諾々として判決に従い、
その後は日本の厳しい現実と未来を思い、強気に外交を振るった。
国際連合への復帰にも大きく貢献している。
後にロシアとの外交において、北方領土という問題は残されたものの
この人物に興味がわいた。
「大戦」という出来事の、前後を知る資料としてオススメ。
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:PHP研究所
- ページ数:395
- ISBN:9784569764184
- 発売日:2015年07月23日
- 価格:842円
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