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滋賀作の胸を焦がすよ井伊直弼 たった4杯で夜も眠れず
桜田門、と言えば今は警視庁だが
歴史的にはやはり桜田門外の変。
井伊直弼が暗殺された事件のことだ。
ええ、滋賀の彦根藩主の。(さも常識そうに)
日本史の井伊大老と言えば、
日米修好通商条約であり安政の大獄であり、ドチラかと言うと悪名高い。
自分も職場で「滋賀の人は井伊直弼をどう思ってるんですか」という
人生初の質問を受けたことがある。(笑)
いや別に、大老を想ってドキドキしたり胸を焦がしたコトはねぇけど。
不利な条約を結んでしまったことは確かに失策だが、
同時に幕府の過渡期だったのだから仕方ない。
が、それは現代にある自分達の目線だからこそ
開国・倒幕のターニングポイントとなった井伊大老の悪行を
「歴史」として納得することが出来るのだ。
話が長くなったが、本書はタイムスリップを軸にしたSF歴史ノベルだ。
宇宙物理を専攻する学生と教授は何の因果か、
黒船が来航した幕末にタイムスリップしてしまう。
そこに居合わせたのが、大老の井伊直弼。
教授のアドバイスで、大老は開国を決意するのだが──。
ここまでならあるあるなタイムトラベル物だが、
次にこの二人は2030年の近未来に飛ばされてしまうのだ。
そこではなんと某大国が巨大な軍事力を背景に、
海域条約の改正を迫っているという、一触即発の事態が起こっていた。
しかも時の総理は、教授の元教え子だった。
──戦争か、条約改正を飲むか。
国民や識者から非難ごうごうの総理に、教授はアドバイスを──
うん?この展開どっかで見たことねぇ?
そう、これは現代版「井伊直弼」と「黒船来航」なのだ。
いや、このアイディアは面白い。
歴史人が善人か悪人かという問いに
私達は恐らく、「是」という回答を述べるだろう。
自分達が立っている足元は、それらが土台となっているからだ。
が、現実や未来になった途端、恐らく解答は割れるだろう。
正直なところ、歴史と国家の説明はややライトだ。
(反してタイムスリップの説明は何故か細かい・笑)
が、現代の日本に「黒船」が来航したら、
ちょうど時事問題もあいまって、「戦争」という言葉がリアルな現実問題となる。
──不利な条約を飲むか、開戦か。
そこで初めて読者は、井伊直弼が立っていた場所が
いかに最悪な状況だったかという事を知る。
や、自分も大老を想って胸を焦がしたのはコレが初めてだよ!
確かに、最善の一手ではなかった。
けれど大老は「開戦」という最悪の事態だけは回避したのだ。
滋賀作だからと言って、「名君だった」と言う面だけをプッシュはしない。
その「独断」のために大老は歴史に選ばれ、そして暗殺された。
歴史のターニングポイントとして、大老は重要な一点だったのだ。
そういう意味で、大老を善人に描く必要は無い気もしたが、
微妙な桜田門外の変という歴史イベントを
面白い形で題材にした点を評価したい。
なにより滋賀の名跡と近江牛の番宣やよし。
滋賀褒メテクレルヒト、ミンナイイヒト。(宇宙人か)
実は今年は、井伊直弼公生誕200年祭。
お膝元の彦根では今年の7月から12月まで、
なんと167日間にも渡って大老をはぴばしているらしい。
悪名の方が高いのに、コレだけ愛されている歴史人は
なかなか居ないと思う。
さあ!君もこのちょいワル親父に胸を焦がすがいい!!
ついでに滋賀におこしやすがいい!
心の底からおもてなしてくれるわ!!
※滋賀枠で指名献本いただいた気がしますので、暑苦しく御礼申し上げます。
歴史的にはやはり桜田門外の変。
井伊直弼が暗殺された事件のことだ。
ええ、滋賀の彦根藩主の。(さも常識そうに)
日本史の井伊大老と言えば、
日米修好通商条約であり安政の大獄であり、ドチラかと言うと悪名高い。
自分も職場で「滋賀の人は井伊直弼をどう思ってるんですか」という
人生初の質問を受けたことがある。(笑)
いや別に、大老を想ってドキドキしたり胸を焦がしたコトはねぇけど。
不利な条約を結んでしまったことは確かに失策だが、
同時に幕府の過渡期だったのだから仕方ない。
が、それは現代にある自分達の目線だからこそ
開国・倒幕のターニングポイントとなった井伊大老の悪行を
「歴史」として納得することが出来るのだ。
話が長くなったが、本書はタイムスリップを軸にしたSF歴史ノベルだ。
宇宙物理を専攻する学生と教授は何の因果か、
黒船が来航した幕末にタイムスリップしてしまう。
そこに居合わせたのが、大老の井伊直弼。
教授のアドバイスで、大老は開国を決意するのだが──。
ここまでならあるあるなタイムトラベル物だが、
次にこの二人は2030年の近未来に飛ばされてしまうのだ。
そこではなんと某大国が巨大な軍事力を背景に、
海域条約の改正を迫っているという、一触即発の事態が起こっていた。
しかも時の総理は、教授の元教え子だった。
──戦争か、条約改正を飲むか。
国民や識者から非難ごうごうの総理に、教授はアドバイスを──
うん?この展開どっかで見たことねぇ?
そう、これは現代版「井伊直弼」と「黒船来航」なのだ。
いや、このアイディアは面白い。
歴史人が善人か悪人かという問いに
私達は恐らく、「是」という回答を述べるだろう。
自分達が立っている足元は、それらが土台となっているからだ。
が、現実や未来になった途端、恐らく解答は割れるだろう。
正直なところ、歴史と国家の説明はややライトだ。
(反してタイムスリップの説明は何故か細かい・笑)
が、現代の日本に「黒船」が来航したら、
ちょうど時事問題もあいまって、「戦争」という言葉がリアルな現実問題となる。
──不利な条約を飲むか、開戦か。
そこで初めて読者は、井伊直弼が立っていた場所が
いかに最悪な状況だったかという事を知る。
や、自分も大老を想って胸を焦がしたのはコレが初めてだよ!
確かに、最善の一手ではなかった。
けれど大老は「開戦」という最悪の事態だけは回避したのだ。
滋賀作だからと言って、「名君だった」と言う面だけをプッシュはしない。
その「独断」のために大老は歴史に選ばれ、そして暗殺された。
歴史のターニングポイントとして、大老は重要な一点だったのだ。
そういう意味で、大老を善人に描く必要は無い気もしたが、
微妙な桜田門外の変という歴史イベントを
面白い形で題材にした点を評価したい。
なにより滋賀の名跡と近江牛の番宣やよし。
滋賀褒メテクレルヒト、ミンナイイヒト。(宇宙人か)
実は今年は、井伊直弼公生誕200年祭。
お膝元の彦根では今年の7月から12月まで、
なんと167日間にも渡って大老をはぴばしているらしい。
悪名の方が高いのに、コレだけ愛されている歴史人は
なかなか居ないと思う。
さあ!君もこのちょいワル親父に胸を焦がすがいい!!
ついでに滋賀におこしやすがいい!
心の底からおもてなしてくれるわ!!
※滋賀枠で指名献本いただいた気がしますので、暑苦しく御礼申し上げます。
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
この書評へのコメント
- はるほん2015-11-05 17:59
>くにたちきちさん
なーるほど、大老で横浜と彦根が繋がってるんですねー。
自分も「どう思っているか」と質問されるまでそう感じてなかったのですが、
歴史人の悪人ランキング(?)みたいなのでは大老は上位のようです。
明治維新のきっかけなので、個人的には逆賊とは思いませんが…。
「開国」の偉業とその他にギャップがあるみたいですね。
少なくとも横浜やお膝元の彦根では、そのギャップを踏まえても
偉業の方を湛えたいというところではないでしょうか。
私見ですけど。
当時の日本はとにかく悪いものに対しては
「頭を潰す」「根を絶やす」という考えだったので
安政の大獄も井伊大老にすれば
他に仕方のない対処だったと思うんですけどねー。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 コメントするには、ログインしてください。
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- 出版社:大隅書店
- ページ数:240
- ISBN:9784905328131
- 発売日:2015年10月29日
- 価格:1620円
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