Yasuhiroさん
レビュアー:
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マティス、ドガ、セザンヌ、モネ、日本人が大好きな画家を取り上げた原田マハならではの「読む美術館」
原田マハさん曰く「読む美術館」です。彼女はよく知られているようにキュレーターの資格を持ち美術関係に造詣が深く、アンリ・ルソーを巡る物語「楽園のカンヴァス」は高い評価を得て山本周五郎賞を受賞しました。
そして本作は、日本人が大好きな画家を取り上げた短編集で四編が収録されています。どの作品にも作者の画家への尊敬と愛情が溢れんばかりに描かれており、それが時には鼻につくほどですが、特に印象派がお好きの方には楽しく読めると思います。
第一話: 「うつくしい墓」:ニースのホテルで暮らす晩年のアンリ・マティスのもとで奉公することになったメイドが後年「ル・フィガロ」のインタビューにこたえる形式で書かれた物語。晩年のアンリ・マティスの描写、そしてパブロ・ピカソのマティスに対する死後も変わらぬ尊敬の念をマグノリアの花に託した設定も上手い。それ以上にまばゆい光や海の香りを運ぶ風、咲き誇る花など、南仏ニースの魅力的な自然描写もこの小編の大きな魅力です。
第二話: 「エトワール」:老年のアメリカ人女流画家メアリー・カサットが回顧する、エドガー・ドガの真実。偏執的にオペラ座の「踊り子」たちをモデルとして描き続けた彼の真の目的とは何だったのか。そして彼が生涯でただ一作だけ作成した彫刻のモデルとなった14歳の踊り子がカサットに語った、オペラ座に入ってくる少女たちの悲しい現実。哀しみに満ちているけれど美しい物語。
第三話: 「タンギー爺さん」: 四話中で最も魅力的な人物である画材屋のタンギー爺さん。その娘がポール・セザンヌに宛てた手紙で構成された物語。セザンヌが描いたいびつな形の林檎がやがて世界を変えると信じ続けた爺さんが正しかったのか、彼に未来はないと断定する旧友にして既に人気作家であったエミール・ゾラのどちらが正しかったのか?それは歴史が証明していますが、当時の現実はそれほど甘くはありませんでした。それでもタンギー爺さんは幸せに死んだのではなかったか、と思わせる原田マハの暖かい視線が印象的な物語。
また、ポンプに補充して使用されていた絵の具が、錫のチューブになった事により画家が暗い室内のアトリエから開放され、戸外に出て描くことができるようになった、という記述には、印象派の成り立ちにはそういう画材の進歩も関与していたのかと感心しました。
第四話: 「ジヴェルニーの食卓」: トリはやはりクロード・モネ。おそらく日本で最も愛されている画家、そして日本文化を愛し続けた画家。彼の「睡蓮」に至るまでの波乱に満ちた数十年を、傍で支え続けた義娘のブランシュの視点で描いており、また彼を支持し続けた政治家クレマンソーも魅力的に描かれ、掉尾を飾るに相応しい力作です。ちなみにブランシュも幼い頃よりモネの制作過程を見続け、知らず知らずのうちに薫陶を受け、モネ風の素晴らしい絵を描いています。
そして本作は、日本人が大好きな画家を取り上げた短編集で四編が収録されています。どの作品にも作者の画家への尊敬と愛情が溢れんばかりに描かれており、それが時には鼻につくほどですが、特に印象派がお好きの方には楽しく読めると思います。
第一話: 「うつくしい墓」:ニースのホテルで暮らす晩年のアンリ・マティスのもとで奉公することになったメイドが後年「ル・フィガロ」のインタビューにこたえる形式で書かれた物語。晩年のアンリ・マティスの描写、そしてパブロ・ピカソのマティスに対する死後も変わらぬ尊敬の念をマグノリアの花に託した設定も上手い。それ以上にまばゆい光や海の香りを運ぶ風、咲き誇る花など、南仏ニースの魅力的な自然描写もこの小編の大きな魅力です。
第二話: 「エトワール」:老年のアメリカ人女流画家メアリー・カサットが回顧する、エドガー・ドガの真実。偏執的にオペラ座の「踊り子」たちをモデルとして描き続けた彼の真の目的とは何だったのか。そして彼が生涯でただ一作だけ作成した彫刻のモデルとなった14歳の踊り子がカサットに語った、オペラ座に入ってくる少女たちの悲しい現実。哀しみに満ちているけれど美しい物語。
第三話: 「タンギー爺さん」: 四話中で最も魅力的な人物である画材屋のタンギー爺さん。その娘がポール・セザンヌに宛てた手紙で構成された物語。セザンヌが描いたいびつな形の林檎がやがて世界を変えると信じ続けた爺さんが正しかったのか、彼に未来はないと断定する旧友にして既に人気作家であったエミール・ゾラのどちらが正しかったのか?それは歴史が証明していますが、当時の現実はそれほど甘くはありませんでした。それでもタンギー爺さんは幸せに死んだのではなかったか、と思わせる原田マハの暖かい視線が印象的な物語。
また、ポンプに補充して使用されていた絵の具が、錫のチューブになった事により画家が暗い室内のアトリエから開放され、戸外に出て描くことができるようになった、という記述には、印象派の成り立ちにはそういう画材の進歩も関与していたのかと感心しました。
第四話: 「ジヴェルニーの食卓」: トリはやはりクロード・モネ。おそらく日本で最も愛されている画家、そして日本文化を愛し続けた画家。彼の「睡蓮」に至るまでの波乱に満ちた数十年を、傍で支え続けた義娘のブランシュの視点で描いており、また彼を支持し続けた政治家クレマンソーも魅力的に描かれ、掉尾を飾るに相応しい力作です。ちなみにブランシュも幼い頃よりモネの制作過程を見続け、知らず知らずのうちに薫陶を受け、モネ風の素晴らしい絵を描いています。
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馬鹿馬鹿しくなったので退会しました。2021/10/8
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- 出版社:集英社
- ページ数:276
- ISBN:9784087453270
- 発売日:2015年06月25日
- 価格:605円
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