はるほんさん
レビュアー:
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ショートケーキとイカスミを使って、味噌汁を作るような。
今更だが初読の西さん。
直木賞受賞作である「サラバ!」の評判がいいようなので
他の著作を読んでおこうと思っていた。
特に前評判などは気にせず、何となく本書を手に取った。
主人公は鳴木戸 定。
マルキ・ド・サドをもじった名前と言うから、酷い。(笑)
※参考:サド侯爵夫人とわが友ヒットラー
そんな名を付けた父親は紀行作家で、一風変わった人だった。
ずっと家には不在であったが、母を亡くした定を世界旅行に連れ回し、
人肉食の儀式を体験させ、最期は目の前でワニに襲われて死んだ。
一風どころか相当に数奇な環境で育った定も、少々独特だ。
「ふくわらい」ヲタクなのである。
いまどきの子供では知らないのではないだろうかと思える程、
日本古来のシンプルなボードゲームを愛するあまり、
現実世界でもつい、目の前の人の顔パーツを動かしてしまうのだ。
故に彼女が持つ感覚は少々人とズレている。
顔はあくまでパーツの集合であり、可変なものなのだ。
人は見た目が9割、なんて本があったが
それが一定しない彼女は、名前に反して浮遊する価値観の中を生きている。
人と居ながらにして、人を見ていないのだ。
自活するようになった彼女は、編集の仕事に就く。
周囲にやや奇人と思われながらも、価値に惑わされない定は
偏屈な作家の理屈や無理にも淡々と応えていく。
(雨乞いはそんな気軽に応えていいもんじゃない気がするが・笑)
作家の紡ぐ「言葉」を見ているからだ。
「言葉」というパーツを集合させる作家の仕事に、敬意をもっているのだ。
見えているものをパーツとして捉える定。
ありのままの言葉を紡ぐ、プロレスラー兼業の作家。
定に猛アタックする目の見えない男。
容貌で得と損をしてきた同僚の女。
さまざまな「パーツ」が、定の無表情の「ふくわらい」に影響を落とす──
成程なあと思った。
奇妙な素材から万人に分かるものを作ると言うか、
面白い行程でストーリーを作る作家さんだなと感じた。
ショートケーキとイカスミを使って、味噌汁を作るような。
ええっと思わせてその落としドコロが、意外に心に近い場所へ来るのだ。
奇人の定というパーツを受け入れる周囲。
周囲と言うパーツを受け入れる定。
そのくだりは読んでいて、思わず鼻の奥がつんとする。
ああ、これはいい作品だったかも──
と思った途端、ラストで新喜劇のごとくずっコケた。
なんか本当にうえええ!?ってなった。
味噌汁の中からメロンが出てきた気分。
…コレはワザとなんだろーか?
や、決して悪い結末という訳ではないのだが、
すぐ近くまで来ていた定が、あっという間に成層圏まで飛んで行ってしまった感。
むむ、最後の最後でこの本の評価が分からなくなった。
そういう意味では確かに、もう1冊読んでみるかとは思ったが、
最後にズレた結末があるって事で「ふくわらい」なんだろーか。
(´ε`;)ウーン…
直木賞受賞作である「サラバ!」の評判がいいようなので
他の著作を読んでおこうと思っていた。
特に前評判などは気にせず、何となく本書を手に取った。
主人公は鳴木戸 定。
マルキ・ド・サドをもじった名前と言うから、酷い。(笑)
※参考:サド侯爵夫人とわが友ヒットラー
そんな名を付けた父親は紀行作家で、一風変わった人だった。
ずっと家には不在であったが、母を亡くした定を世界旅行に連れ回し、
人肉食の儀式を体験させ、最期は目の前でワニに襲われて死んだ。
一風どころか相当に数奇な環境で育った定も、少々独特だ。
「ふくわらい」ヲタクなのである。
いまどきの子供では知らないのではないだろうかと思える程、
日本古来のシンプルなボードゲームを愛するあまり、
現実世界でもつい、目の前の人の顔パーツを動かしてしまうのだ。
故に彼女が持つ感覚は少々人とズレている。
顔はあくまでパーツの集合であり、可変なものなのだ。
人は見た目が9割、なんて本があったが
それが一定しない彼女は、名前に反して浮遊する価値観の中を生きている。
人と居ながらにして、人を見ていないのだ。
自活するようになった彼女は、編集の仕事に就く。
周囲にやや奇人と思われながらも、価値に惑わされない定は
偏屈な作家の理屈や無理にも淡々と応えていく。
(雨乞いはそんな気軽に応えていいもんじゃない気がするが・笑)
作家の紡ぐ「言葉」を見ているからだ。
「言葉」というパーツを集合させる作家の仕事に、敬意をもっているのだ。
見えているものをパーツとして捉える定。
ありのままの言葉を紡ぐ、プロレスラー兼業の作家。
定に猛アタックする目の見えない男。
容貌で得と損をしてきた同僚の女。
さまざまな「パーツ」が、定の無表情の「ふくわらい」に影響を落とす──
成程なあと思った。
奇妙な素材から万人に分かるものを作ると言うか、
面白い行程でストーリーを作る作家さんだなと感じた。
ショートケーキとイカスミを使って、味噌汁を作るような。
ええっと思わせてその落としドコロが、意外に心に近い場所へ来るのだ。
奇人の定というパーツを受け入れる周囲。
周囲と言うパーツを受け入れる定。
そのくだりは読んでいて、思わず鼻の奥がつんとする。
ああ、これはいい作品だったかも──
と思った途端、ラストで新喜劇のごとくずっコケた。
なんか本当にうえええ!?ってなった。
味噌汁の中からメロンが出てきた気分。
…コレはワザとなんだろーか?
や、決して悪い結末という訳ではないのだが、
すぐ近くまで来ていた定が、あっという間に成層圏まで飛んで行ってしまった感。
むむ、最後の最後でこの本の評価が分からなくなった。
そういう意味では確かに、もう1冊読んでみるかとは思ったが、
最後にズレた結末があるって事で「ふくわらい」なんだろーか。
(´ε`;)ウーン…
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
この書評へのコメント
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書評一覧を取得中。。。
- 出版社:朝日新聞出版
- ページ数:304
- ISBN:9784022647900
- 発売日:2015年09月07日
- 価格:626円
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