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はるほん
レビュアー:
人間が読めばちょっと「?」だが、ひょっとして虫たちが読んだら「あるある!」と大爆笑なのかも。
表紙があんまりめんこくて、本屋で思わず手に取った。
ぺらと捲って、おやと思う。
漫画じゃないか。
文庫サイズの漫画ってちょっと読み難いんだけどと思いつつ
結局買ってしまった。

名の通り、虫を扱った短編漫画十数話。
これがなんとも面妖で、一口には語りがたい。

絵柄はカワイイともリアルとも古風とも見え、
その話は虫の生態でもあるような幻想譚でもあるような、
また古典の改編物のようでもある。
オチもすかっと腑に落ちたり、捕まえる前に風に吹っ飛んで行ったり、
音はすれども姿は見えぬようであったり、
まさに小さな虫を追いかけているような作品だ。

なのにそれを見るために虫眼鏡をもって地に這いつくばるように、
虫籠の中の動きを飽くることなく眺めてしまうように、
思わずじいと本に見入ってしまう。
本が小さいと言う物理的な理由だけではなく、
このかそけき世界の独特な世界観が、なにやら心を惹きつける。
漫画を読みながら、ふと別の作品を思い出した。

「蟲師」だ。
蟲というオリジナルの生物が、人と同じ世界に生きながらも
独立した倫理と生態で生きている。
主人公の蟲師・ギンコは人と蟲の境界線を当然のものとし、
その境界線を守りながら生きている。

本書に出てくるのは蟲というオリジナルの生き物ではない、「虫」だ。
けれど確かに彼らは、この世界で独立している。
野に山に、更には家屋にまで入り込む存在でありながら
彼らは恐らく、全く人間というものを意識していない。
清々しいほどに、無視している。

人間が読めばちょっと「?」なこの漫画もひょっとして
虫たちが読んだら「あるある!」と大爆笑なのかもしれない。
そんな事を考えてしまうほど、これは「異世界」な空気を纏っている。
いや、そんな虫視点でストーリーが描ける秋山さんもタダモノではない。
現代の「虫愛ずる姫君」である。

最後の「雪迎え」の話が好きだ。
いや、好きだと言えるほどその中身を説明できないのだが、
連れ合いを無くした老人と蜘蛛の触れ合いに
なにやら心の中がもぞっと動く。
1.5センチほど。

成程、「一寸の虫にも五分の魂」とはこういう事であったかと。
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はるほん
はるほん さん本が好き!1級(書評数:684 件)

歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。

年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。

秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。

2018.8.21

読んで楽しい:17票
素晴らしい洞察:1票
参考になる:13票
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この書評へのコメント

  1. トムタン2015-09-13 13:23

    これ、「青林工藝社」版の単行本が家にあって、何とも言えず好きです!文庫になってるんですね。

  2. はるほん2015-09-13 13:56

    >トムタンさん
    わーい!好きな人いらしたーーー!(≧▽≦)
    やー、文庫は手軽でいいんですが、漫画は単行本でもよかったかもです。
    隅にちまっと描かれている文字とかが見づらくて~。

    何とも言えない「好き」、よくわかる気がします!

  3. アリーマ2015-09-13 23:54

    をを、これは・・・!
    ということで、図書館の在庫を調べたら『こんちゅう稼業』という旧作が書棚に!
    早速借りてきて、どっかで見たことあるよで無いよな独特の世界観にズブズブはまっております。
    前後しましたが、こちらも是非読みたいです。

  4. はるほん2015-09-14 06:51

    >アリーマさん
    えええ!そんな作品が!!(ぐぐる)
    お~~!ひょっとして売れ行きが良ければまた文庫化されるかもですね!
    この方、絵本もイロイロ出されているらしく
    こちらもちょっと拝読したいなあと思っておったのです。

    ねー、不思議な世界ですよねえ。
    手に取ってくださって嬉しいっす!

  5. アリーマ2015-09-16 02:27

    『こんちゅう稼業』は表紙がまた素敵ですよ。伊藤若冲オマージュです。
    ミテネミテネ♪

  6. はるほん2015-09-16 06:56

    >アリーマさん
    おおお成程!写実と想像の融合と言う意味でもピッタリ!>若沖
    ミテミテミマス♪

  7. No Image

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