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かもめ通信
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“地球の中心までトンネルを掘る(Tunneling to the Center of the Earth)”だなんて!なんといってもタイトルが秀逸だと思わない?!
“地球の中心までトンネルを掘る(Tunneling to the Center of the Earth)”
なんといってもタイトルが秀逸だ。

(SFかしら?ナンセンスものかも?)と首をかしげながら手に取ってみるとどうやら短編集らしかったので、(どれどれちょっとさわりだけでも……)と立ち読みを始めたところ、「えっ?!ええっ~!!なにこれ?!面白い!!」というわけで、読んだのは表題作を含めた11の短編。(以下、カッコ内の★はお気に入り度)


●派遣は派遣でも代理祖父母の派遣会社に勤める女性が主人公の「替え玉」(★★★★★)

●いつも必ず歩数を数えながら歩く青年が語る「発火点」(★★★)

●弟が姉について、詳細な解説を試みる「今は亡き姉ハンドブック:繊細な少年のための手引き」(★★★★)

●犬猿の仲でありながらとある事情から肩を並べてひたすら折り鶴を折る兄弟たち「ツルの舞う家」(★★★)

●クイズオタクの2人の少年の折り合いの付け方「モータルコンバット」(★★★)

●大学を卒業したもののこの先どうしたらいいの途方に暮れた若者たちが始めたこと。「地球の中心までトンネルを掘る」(★★★★)

●その男がなんとしても観たいと思ったのは頭を弾丸で撃ち抜くのに絶対死なないというショーだった。「弾丸マクシミリアン」(★★★)

●なぜかずらりと歯が生えそろった赤ん坊に魅せられた男が語る「女子合唱部の指揮者を愛人にした男の物語(もしくは歯の生えた赤ん坊の)」(★★★)

●チアリーディング部に所属する少女は、本当はプラモデル作りが趣味のインドア派。「ゴー・ファイト・ウィン」(★★★★)

●その博物館はごくごくありふれた日用品のコレクションを展示する「あれやこれや博物館」(★★★)

●依頼人に“起こりうる最悪のシナリオ”をことごとく提示するというのが彼の仕事だった。「ワースト・ケース・シナリオ株式会社」(★★★)


文体は読みやすく、主人公たちの仕事など設定が妙に細かくて細部まで面白い。
読み進めていくうちに心がざわついてなんとなく落ち着かない気分になってきたが、決して不快ではなく後味も悪くない。

思いかえしてみても登場人物のうちの誰かを気に入ったとか、あの話のこのエピソードがすごく好きだなどということは全く思い浮かばないのに、なぜだか「この本、好きだなあ」と思ってしまう。

それはもしかすると、主人公たちのいずれもが、世間一般の“常識”に照らすと“こうあるべき”だと考えられるところからほんの少しずれているにもかかわらず、そうしたあれこれを否定も肯定もせず、ただあるがままに受け入れる物語の寛容さが、読者である私にとっても心地よかったからかもしれない。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2233 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. ef2015-09-22 06:27

    地底にはもう一つの世界がある。……というのは、ウエルズ、ヴェルヌらが書いてきたことですよね~。この本、献本に応募ちぅ。だって、すっごくそそりますよね。かもめさんに書いて頂いてますますそそった~。当たると良いな~。いや、当たらなくてもいつかレビューする!

  2. かもめ通信2015-09-22 06:55

    もしかしてSF好きの人はこのタイトルをみるとつい語りたくなるのかしら?w
    我が家でも普段は私が読んでいる本には全く関心をしめさない家族が、めずらしく「おや?SF読んでいるの?」と聞いてきて、「違う」と言ってもひとしきり、SF話をしていましたww

    ふふっefさんがこれをどう読まれるかも楽しみです。

  3. ef2015-09-22 07:02

    私も最初はずぇったいSFだろうと思ったのだな。でも、かもめ通信さんのレビューを読んだら……。でも、それでも私の好物なジャンルだわよね。
    そう、「地底にはもう一つの世界がある」というテーマは、コアなSFfanには避けては通れないテーマなのだ!だからみんなそう思うのもさもありなん。ところで、かもめ通信さん、本に熱中している時に他人から話しかけられたらどうします? 私、時々嫁から話しかけられてそっけない返事をしてしまって……だって、読ませてよぉなんだけど。

  4. かもめ通信2015-09-22 07:48

    ギクッ
    >本に熱中している時に他人から話しかけられたらどうします? 
    それを私に聞くとは…もしかしてefさん千里眼?!ww

    私はね~役割的には圧倒的な割合で疎まれる役です(><)
    そして年中、そっけない返事をされたり、大事な要件を聞き流されたりしています(-_-;)

    ちなみに私が夢中になっているときだったら?
    大抵こう言いますね。「あと○分待って!」「あと○ページ読んでから!」って。

  5. ぴょんはま2015-09-22 21:40

    SFではないんですか。
    何となく「霧に橋を架ける」が連想されて、SF・ファンタジーと思いこんでいました。
    風変わりな物語集なのは同じ?

    音楽を聴いている人にはイヤホンを引っ張って、本を読んでいる人には本の前に手をかざして、「いつなら話せる?」と即答を要求する迷惑な私・・・

  6. かもめ通信2015-09-22 22:37

    えーと。「SFではない」と言い切れるほどに「SFとはなにか」がわかっていない私ですが、少なくても私がSFに抱いているイメージとは違いました。(滝汗)
    おまけに『霧に橋を架ける』も読んでいないので、みなさんの書評をちょこっと覗いてきたのですが…(汗)
    少なくても、宇宙船や異星人、タイムトラベル的なものはでてきません。

    物語に描かれているのは、一見すると“ごく普通のありふれた日常”です。
    だけどどこか微妙にずれていて“普通”じゃない……あれ?でもそもそも“普通”ってなに??というか……。
    いやーもうこれはねえ。読んでみて!としかいいようがありません。(苦笑)
    好き嫌いははっきり分かれるだろうと思います。
    そして私は結構好きでした。

    皆さんの書評を拝見するのが非常に楽しみです!(笑)

  7. 青玉楼主人2016-05-17 23:43

    それでは、仲間に入れてください。

  8. かもめ通信2016-05-18 07:00

    お仲間!いつでも歓迎ですw

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