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かもめ通信
レビュアー:
「シェトランド四重奏」のあの面々が帰ってきた!と思いきや……以前とは全く変わってしまった人もいれば、二度と帰ってこない人もいて……複雑な思いを抱きながら読み進めるも、相変わらずの読み応え!
イングランド本島とノルウェーを橋渡しするかのように北海の北辺に浮かぶ
シェトランド諸島を舞台に繰り広げられてきた
イギリスのミステリー作家、
アン・クリーブスの「シェトランド四重奏」の続編、新シリーズの始まりです。

四重奏のラストがあまりにも衝撃的だったので
その先いったいどうなるの?!と新作を待ちわびた読者も多かったはず。

私が待たずにすんだ訳は、
四重奏を読みおえてしまうのがもったいないと積んでいる間に
あちこちで(謎解きとは直接関係の無い)衝撃のラストのネタバレを目にしてしまい
それが原因でついつい読まずにいたところ、いつの間にか新シリーズが始まっていた!
というお粗末な理由によるものなのですが。(汗)

それはさておき、今回は……。


故郷をとりまくエネルギー問題を取材するために
シェトランドに帰省していた本土の新聞記者が死体となって発見されます。
第一発見者は、四重奏でもお馴染みの野心家地方検察官ローナ・レインでした。

この殺人事件を捜査するために本土から派遣されてきたのは、
今回が初登場で殺人事件の捜査を指揮するのはこれが初めてだという
見かけも中味もかなり個性的な女性警部ウィロー・リーヴズ。

シェトレンドで迎えるのは毎度お馴染みの
ちょっとばかり頼りないサンディ刑事。

その後ろにはこれまで同様、
無口で思慮深く、観察眼に優れたジミー・ペレス警部が控えているはず……
とおもいきや、彼は病気療養中で
最近ようやく非常勤で仕事に復帰しつつあるという
なんとも不安定な状況にありました。


ペレス警部が抱える事情を理解するためにはやはり、
前作『青雷の光る秋』を読むことをお薦めしたいわけですが、
物語の展開そのものは、どちらかというと前作よりも
四重奏シリーズの他の作品の流れを汲んでいるような気も。
いずれにしても
結婚前に繰り広げられるイベントや、親戚やら職場やらの人間関係など
シェトランドの慣習や風土を織り込みながら
とにかくひたすら人々の話に耳を傾けていくというスタイルです。

このシリーズは、一つの事件を
複数の登場人物それぞれの視点から描いていく手法がとられています。
同じ物事を見聞きしても、人それぞれの受け止め方があり、
その微妙なズレがまた読みどころなのですが、
今回はペレス警部が“かつての彼”ではないだけに
サンディ刑事や、リーヴズ警部からの目線がとりわけ重要になっていて
今まで以上にこの手法が活きているように思われました。

その一方で、これまた毎度おなじみのミスリードにつぐミスリードが
今回は今ひとつ効いていないというか、
5作目にして初めて私にも真犯人の目星が……?!

これが単なるまぐれあたりに過ぎないのか
それとも私が作者の癖をつかみかけているからなのか
ペレス警部の今後と共に
その辺のことも確認したくなって
いそいそと次巻へ手を伸ばすのでした。

<シェトランド四重奏>
大鴉の啼く冬/原題:Raven Black (2006)
白夜に惑う夏/原題:White Nights (2008)
野兎を悼む春/原題:Red Bones (2009)
青雷の光る秋/原題:Blue Lightning (2010)

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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2229 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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