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ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
読んでいるだけならほんとに愉快。
「アフリカ大陸の中央を占める広大な熱帯雨林をすみずみまでうるおして流れる、ナイル河に次ぐアフリカ第二の大河」コンゴ河を、著者田中真知さんは、二度、主に丸木舟で下っている。
最初は1991年(当時はザイール河)に妻と。二度目は、21年後の2012年(コンゴ紛争直後)にコンゴ在住の「シンゴくん」と。


思いがけない出来事の連続で、万事休す、と思うような難所はいくつもあったのに(リアルなインディー・ジョーンズのよう)そのどれもこれもを著者は笑い話にしてしまう。


現地には、先進国の都会とは別の時間が流れている。その時間の流れに身を任せることで生まれる余裕だろうか。
次の船を当てもなく二週間待てる時間感覚、おおらかな「ゆるし」、大河の美しい夕暮れ……
途方もなく困難な旅だ、なぜこんな旅をわざわざ、と思いながら読んでいたが、同時に、何度もそこに呼ばれるように引き寄せられる気持ちを、ちょっと羨ましいと思った。


だけど、二度のコンゴ川下りの状況はずいぶん違っている。間にコンゴ紛争があった。
紛争が収束しても一度壊れたものは元に戻らないのだ。
この地に住む人びとが失ったものはたくさんあり、その責任の一端(かなりたくさん?)を、遠く離れた国の、たとえば私たちの安寧な生活が負っている。
それでも、生きていく人びとの、あっけらかんとするほどの逞しさには、驚き、あきれるよりも、感動してしまう。見ているだけで元気になってくる。


先進諸国が共有するのは「未来はコントロールできるし、されるべきだ」という幻想だと、著者は書いている。コントロールできないのは自分の責任だという強迫観念が、人の苦しみを増している面もある、と。
そういう強迫観念、思い込みが強ければ強いほど、この大陸に溢れだしている豊かさや生命力はみえなくなってしまう、と。
快適で安全な生活をしている私たち。それなのに、不安や苛立ちが次から次なのは、やはり何かおかしいのかもしれない。


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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1750 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

読んで楽しい:2票
参考になる:28票
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