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Wings to fly
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いたずらで乱暴で衝動的。大人には頭痛の種だが愛さずにいられない、トムは「無垢の反逆者」。
アメリカの古典的名作の主人公「トム・ソーヤー」の名前はみんなが知っている。でも、この長い物語を全部読んだことがあるという大人(特に女性)は、どのくらいいるのだろう。実は私、小学生の頃に絵本で一度だけ読み「トム、だいっきらい!!」と思った。

だってあの頃、おバカで横暴な同級生男子は女子のスカートをめくったり、芋虫をひっつけようとしたり、給食のマーガリンを教室の天井に投げて張り付けたり。あいつらと同じようなことしてるじゃない、ああヤダヤダ。しかしこの年齢になって読んでみたら、母性本能のくすぐられ方が半端ない。なんてまあ可愛いんでしょ、トムったら。

学校や教会で、窮屈な規則が大嫌いなトムはいつも騒ぎを巻き起こす。可愛いベッキーちゃんとの恋の駆け引きや、宝さがしに洞窟での迷子、そして恐ろしい殺人事件の顛末。南北戦争以前のアメリカ、ミシシッピー河の畔セントピーターズバーグの町での、春から夏への物語だ。

どこまでやったらおばさんが本気で怒るか、どうしたら笑い出してうやむやになるか、トムはちゃんと知っている。「ホントに腹が立つ!」と思いながらもポリーおばさんは、トムの悪気のなさや心の温かさに、彼を愛さずにはいられない。その気持ちをいつの間にか読者も共有してしまうのだ。巻末の解説にあった「無垢の反逆者」という言葉以上に、少年トムを表現する言葉はなかろう。

死んだネズミを結びつけた棒とか、突っついて遊ぶためのダニとか、そんな物欲しがる男の子の気持ちは永遠の謎だけどね。わざと他の男の子と仲良くするところを見せつけて、それでも無視されたら泣いてキレちゃったベッキーちゃん、その気持ちならよくわかるよ。

「トム!」
「ト、ム!」
「ト~ム~!」
ポリーおばさんがトムを探す冒頭の呼び声で、私は物語に引き込まれた。土屋京子さんの翻訳は、生き生きとした会話が素晴らしい。小学生時代に、若い母親だった頃に、周りで聞こえていた口喧嘩やバレバレの嘘、アホさ全開の無鉄砲と涙の“ごめんね”も。あの頃のあれこれが、無性に懐かしくなった。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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この書評へのコメント

  1. 風竜胆2015-07-12 15:16

    これ、本当に出るのかなと思っていました。さすがは、Wings to fly さん。

  2. Wings to fly2015-07-12 15:22

    いま貼り付けてきました。これで51冊目(^^)

    皆さまも、風竜胆さんの掲示板企画:新潮文庫の夏2015へどうぞ!

    http://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no224/index.html?latest=20

    作品が同じなら、新潮文庫じゃなくてもokだそうですよ。

  3. ぴょんはま2015-07-12 16:43

    トム・ソーヤーも、ハックルベリー・フィンも、女になりたくなかった頃に一人称で読みましたが、息子が生まれてから読んでいない・・・再読したら親目線になるだろうなあ。

    英語音読CDで冒頭部分を聴いたことはあります。あの導入は見事ですよね。

  4. Wings to fly2015-07-12 20:44

    ぴょんはまさん
    ポリーおばさんの、まさに母親目線で読みました。ジャムだらけのお口のまま、フェンスを乗り越えて逃げてく冒頭からして、男の子のお馬鹿さと可愛らしさが炸裂ですね(笑)


    ”これは少年少女のために書いたけれど、今は大人になった諸氏にも、かつての自分がどんなだったか、微笑ましい気持ちで思い出して欲しい。”

    マーク・トウェインの「序章」の中の言葉です。かつて少年たちをどんな目で見ていたか、様々な追憶が蘇りましたよ。なんで時代を超えて読まれるのかも、やっと理解できました。

  5. No Image

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