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ぱるころ
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『何か、物語はあるかい?』そんなふうに話しかける、不思議な赤いペン。ペンを拾った人間は無意識のうちに、自分の中に潜む物語を紡いでいく。
図書館の児童書コーナーを通りかかったときのこと。この本を紹介する14歳の文章がたまたま目に入り、とても巧かったので思わず手に取った。
ホラーめいた装丁だが、怖い話ではなく不思議な話。


学校で赤いペンの噂を耳にした、中学2年生の村上夏野。そのペンは、拾った人に何かを書かせて、書き終わるとどこかへ消えてしまうのだという。夏野は赤いペンのことが気になり、真相を確かめたいと考える。
人見知りの夏野だが、信頼できる大人からアドバイスをもらい、個性豊かな協力者たちも加わった。

実際に赤いペンを拾ったことがあるという人たちを探し出して、話を聞いてみると…
そのペンは外国製のような美しいデザインで、持ってみると心地よい重さがある。なのでつい拾って持ち帰り、何かを書きたくなるのだという。

ところが、ペンを使っていつの間にか自分が書き上げた文章や絵は、自分自身も忘れていた遠い過去にまつわること。幼い頃に事故で亡くなった親友の思い出、若かりし頃に諦めた夢や、ダム建設のために消えた生まれ故郷。
「どうしてこんなものを…」本人がその意味を理解したとき、ペンはどこかに消えてしまう。

調査を続ける夏野たちの間にやがて浮かび上がったのは、謎多き作家 片桐筆。年齢も性別も非公表のまま四十年以上前から作品を出し続けているという、その正体は…。
そして、夏野が赤いペンの謎を追う、本当の理由とは…。


作者の澤井美穂は、高校の国語教諭をしながら児童文学の創作を始めたそう。2015年、最初に出版したのがこの作品だ。

夏野は赤いペンのことを調べるために、知らない場所へ行ったり、初めて会う人から話を聞いたりする。「苦手」を一つずつ克服するたびに噂の真相に近づいていく、成長の物語でもある。

心にバリアを張ることはときに必要だが、大切なものを置いてきてしまわないように…赤いペンを拾った人たちの体験談から、作者のそんなメッセージをしっかりと感じ取ることができた。

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ぱるころ
ぱるころ さん本が好き!1級(書評数:147 件)

週1〜2冊、通勤時間や昼休みを利用して本を読んでいます。
ジャンルは小説・エッセイ・ビジネス書・自己啓発本など。
読後感、気付き、活かしたい点などを自分なりに書き、
また、皆さんからも学びたいと考え参加しました。
よろしくお願いします。

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