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平家は滅びなかった。その血筋を後の世に伝えた、清盛の娘たちのおかげで。
☆上中下三巻合わせた書評です。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。」一門の隆盛を極めた後、壇ノ浦の戦いで滅亡した平家。その栄華の儚さを描いた『平家物語』は、“男の権力闘争”のお話とも言えよう。
平清盛には8人の娘がいた。系図には、安徳天皇の母建礼門院徳子以外に「女」とだけ書かれた娘たちが、名門貴族に嫁いだことが記されている。本書『女人平家』は、その姫たちの物語である。
清盛の妻時子は、自分の娘も夫が外で生ませた娘も、西八条の屋敷で大切に育てあげる。いかに両親に愛されようと、娘は嫁いで縁をつなぎ父の権力を盤石にするための大事な駒。中でも徳子は、いずれ帝の妃にと育てられた特別な姫であった。しかし帝の目に留まったのは、楚々とした美貌と優しい心根を持つ姉の佑子。
佑子には大江広元という相思相愛の相手がいる。行動的な妹典子は母に姉の恋を告げ訴えるが、時すでに遅し。我が子同様に育ててくれた継母時子の恩に報いるため、佑子は心染まぬ相手に嫁いでゆく。
平家の姫の恋の相手に、頼朝の片腕で鎌倉幕府の政所初代別当・大江広元を持ってくるキャスティングといい、一生を特別の絆で繋がれる佑子と典子姉妹のキャラクターといい、すでに徳子の悲劇を暗示するこしらえ方といい、郎党を含めた家族の心温まるサイドストーリーといい、吉屋信子のストーリーテリングにひたすら感心。
二人の男子に恵まれ妻の立場は安泰だが夫を愛せない佑子、安徳帝の叔母で後鳥羽帝(安徳帝が生きているうちに朝廷が擁立した、反平家を象徴する天皇)の祖母という複雑な立場に苦悩する典子。このダブルヒロインは、一族滅亡という究極の苦難の時に強さを発揮する。壇ノ浦で生き残った中宮徳子を助け、手をつないで(婚家の男たちを微妙に操縦し)生きてゆく姿が、実に生き生きと魅力的だ。
「平家の血は、女系によって滅びませぬ。」
佑子の婚家は四条侯爵家、典子の婚家七条家は水無瀬子爵家として、明治時代まで残った。史実とフィクションが程良く混じり合っためくるめくストーリーに引きこまれ、三巻が長いとは思えなかった。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。」一門の隆盛を極めた後、壇ノ浦の戦いで滅亡した平家。その栄華の儚さを描いた『平家物語』は、“男の権力闘争”のお話とも言えよう。
平清盛には8人の娘がいた。系図には、安徳天皇の母建礼門院徳子以外に「女」とだけ書かれた娘たちが、名門貴族に嫁いだことが記されている。本書『女人平家』は、その姫たちの物語である。
清盛の妻時子は、自分の娘も夫が外で生ませた娘も、西八条の屋敷で大切に育てあげる。いかに両親に愛されようと、娘は嫁いで縁をつなぎ父の権力を盤石にするための大事な駒。中でも徳子は、いずれ帝の妃にと育てられた特別な姫であった。しかし帝の目に留まったのは、楚々とした美貌と優しい心根を持つ姉の佑子。
佑子には大江広元という相思相愛の相手がいる。行動的な妹典子は母に姉の恋を告げ訴えるが、時すでに遅し。我が子同様に育ててくれた継母時子の恩に報いるため、佑子は心染まぬ相手に嫁いでゆく。
平家の姫の恋の相手に、頼朝の片腕で鎌倉幕府の政所初代別当・大江広元を持ってくるキャスティングといい、一生を特別の絆で繋がれる佑子と典子姉妹のキャラクターといい、すでに徳子の悲劇を暗示するこしらえ方といい、郎党を含めた家族の心温まるサイドストーリーといい、吉屋信子のストーリーテリングにひたすら感心。
二人の男子に恵まれ妻の立場は安泰だが夫を愛せない佑子、安徳帝の叔母で後鳥羽帝(安徳帝が生きているうちに朝廷が擁立した、反平家を象徴する天皇)の祖母という複雑な立場に苦悩する典子。このダブルヒロインは、一族滅亡という究極の苦難の時に強さを発揮する。壇ノ浦で生き残った中宮徳子を助け、手をつないで(婚家の男たちを微妙に操縦し)生きてゆく姿が、実に生き生きと魅力的だ。
「平家の血は、女系によって滅びませぬ。」
佑子の婚家は四条侯爵家、典子の婚家七条家は水無瀬子爵家として、明治時代まで残った。史実とフィクションが程良く混じり合っためくるめくストーリーに引きこまれ、三巻が長いとは思えなかった。
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「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。
この書評へのコメント
- Wings to fly2015-06-22 08:08
それが私も、なんで父の本棚に吉屋信子⁇ って思ったのね。母に聞いたら「それ私が買ったの。」と言ってました。納得。でも、こっそり読んだかもね(笑)児玉清さんも吉屋信子がお好きだったそうですから^ ^
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- 出版社:朝日新聞社出版局
- ページ数:237
- ISBN:9784022601957
- 発売日:1979年05月01日
- 価格:346円
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