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Wings to fly
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藤原定家が探偵役だけど、古典に詳しくなくても楽しめます。上質の歴史ミステリー!
まず探偵役にびっくりしちゃう。なんと歌人の藤原定家ですよ。教科書にも載っているあの人が、毒舌の相棒に「ああなんて鈍いヤツ」と溜息をつかれながら京の都を迷走する。

時は鎌倉幕府成立から4年後、定家30代、『小倉百人一首』や『新古今和歌集』の撰者となるのはまだ未来のことだ。位も低く貧乏な定家は、今をときめく権大納言・源通親に呼ばれ意外なお願いをされる。古今伝授を授けて欲しいというのだ。古今伝授とは『古今和歌集』を編んだ紀貫之が、歌の解釈や作歌の作法を弟子に伝えた指南らしい。歌道の名門家に生まれ歌の才は有名だとはいえ、古今伝授なんて受けてない。大納言はどうしてそんなことを知りたいの?

「古今伝授は、本当は治世の道理を説くものだと聞いたぞ。」
しばらくすると、今度は関白の九条家からも同じことを頼まれる。帝の外祖父として勢力拡大を図ろうとする源通親と、関白九条兼道の勢力争いに巻き込まれてしまう定家。困っていたら突然、「そろそろお前に古今伝授を授けるからこの三種のお題を解きなさい。」と父が言いだした。謎々みたいなお題が解けないと伝授の資格がないそうだ。解き明かす手がかりもつかめないうちに、今度は父が何者かに誘拐される。定家、大ピンチ!

さてそこに、さる高僧からの紹介でやってくる助っ人が長覚である。頭脳明晰で容貌華やか、全然謙虚じゃない男。だって祖父は保元の乱で敗死した“悪左府”こと藤原頼長、おじいちゃんが勝っていたら摂関家嫡流を継いだはずの御曹司だもん。やがて紀貫之の子孫の可愛い潮丸が加わり、謎解きトリオが誕生だ。「古今伝授」をめぐる三つの謎は、定家をどこに導くのか。

時の権力者・頼朝の意向に左右される鎌倉時代初期の平安京。舞台設定も斬新で、創作と史実がほどよく混ざり合った上質の歴史ミステリーである。人は良いけどちょっぴり頼りなくて恐妻家の定家と、上から目線で口は悪いけどちょっぴり優しい長覚。後白河法皇の皇女・式子内親王がマドンナ役で華を添える。最大の魅力は登場人物のキャラと細部に漂うユーモアだ。次巻の謎は「六歌仙」、早く買いに行かなくちゃ!

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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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