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Wings to fly
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とても爽やかで、なんとなく現実感に乏しい部活小説。
みんなで読みませんか?課題図書倶楽部2016参加の書評です。

「中学校でやることに必要なのは、能力じゃない。嘘みたいだけど、努力だ。やる気や根気やチームワークや地道な練習が、勝敗を決める。」と、陸上部の桝井君は思っています。
この作品は、それを証明するような物語です。

舞台はのんびりした田舎の中学校の陸上部。部員たちはハンディを抱えています。
・鬼のような神のような顧問の先生が去り、新しい顧問の女性教師は陸上の指導経験ゼロ。
・男子駅伝の県大会連続出場の実績を途切れさせたくないが、出場者が足りない。

寄せ集めチームのひとりひとりが、どんな経緯で駅伝大会を迎えることになったのか、大会当日の1区から6区まで、ランナーたちの言葉で物語がつながれてゆきます。他校との競り合い、自分の心との勝負、たすきを渡すごとにチームの思いが重なりひとつのストーリーとしてふくらんでゆくという、駅伝ならではの構成が実に上手いと思います。

作り上げたイメージを崩さないよう言動に細心の注意を払う子。「くだらねえ」という言葉が自信の無さの裏返しの子。まだまだ幼い中学男子たちが、頼りないようでちゃんと生徒を見つめている顧問と共に、駅伝の練習を通じて成長してゆくという部活小説の王道です。

なんで補欠がひとりもいないのかしら、誰か怪我したら出場不能じゃないの・・・あら不調を押して出場させる展開のためですか、という疑問とかまた、「3年生はみんな引退して受験勉強しているのに、なんでうちの子だけ夏休みも走る練習しなくちゃいけないんです?!」とか文句を言ってくる保護者がいない、先生の天国みたいな職場環境は存在するのか、という疑問はさておき。

部長の桝井くんが、不気味なほど出来るヤツです(ラスト近くに一回だけキレましたが)。彼の外交手腕と信頼厚い人間性のおかげで物事が進んでゆきます。でも桝井君がなぜ駅伝大会出場にそれほどまでに賭けているのかが、ピンときません。桝井君が、部長としての責任を全うした物語だという感想を持ちました。

こんな良い子もいるのですと言われれば、そうですかうちの息子と友達はもっとバカでしたすみませんと謝るしかありませんが。この世代って、ピュアだからこそ相手に切りつける残酷さも持っていると思う。その暗黒部分が見事にスルーされたおとぎ話みたいです。良い子たちのスポ根小説って思いました。

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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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