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かもめ通信
レビュアー:
アラフォー世代の女性達たちのあれこれを描く読み応えのある物語で私はとっても気に入ったのだけれど、もしかしてこの本、邦題と打ち出し方で随分損をしていないかしら?
そもそもなぜこの本を手にしたのかというと
先日献本抽選のあった『過去を殺す女』に当選し
本を送って貰ったはいいが、いざ読もうと思ったときにようやく
これがシリーズ第2作目で、
1作目も既に翻訳刊行されていると気づいたからだ。

おそらくは2作目から読んでも支障はないのかもしれないが
どうせなら登場人物達との出会いは大切にしたいと思い
いそいで1作目に当たる本書を入手したというわけ。

裏表紙の宣伝文句はこうだ。
離婚して学生時代を過ごした町に戻った新聞記者ディクテ。彼女の誕生日を祝いオープンカフェで盛り上がっていた時、目の前の川に桶に入った赤ん坊が流れてきた。一方親友の一人が勤める病院では新生児が額にいたずら書きをされ、さらにそこで出産した別の親友の赤ん坊が誘拐された。ディクテは赤ん坊を巡る三つの事件の取材に奔走する。デンマークを舞台にしたライトミステリ。


ところがいざ読み始めるとライトミステリと銘打っている割に
なかなか前に進めない。

いやいや決して面白くないわけではないのだ。
むしろかなり興味深く、好きなタイプの作品だ。

ミステリよりも主人公を含めたアラフォー世代の女性たちの
仕事の悩み、パートナーとの関係、親のこと、子のこと、
10代の性とアラフォー世代の性の問題等々、
赤裸々に描かれるあれこれは、
ミステリなしでも十分に読み応えのある物語に仕上がっていると思うのだ。

それだけにミステリに期待して手にした読者が
“がっかり”してしまうとしたら、とても残念なことだとも思う。

同時にこのちょっと変わった邦題と宣伝文句の“ライトミステリ”という言葉から
コージー的な脱力系のドタバタ劇を期待していると、
この物語のトーンからしてやはり“がっかり”する読者がいるのではなかろうか。
(ちなみに原題は“Skjulte Fejl og Mangler”
直訳すると隠れた疵ぐらいの意味のよう。だいぶイメージが違うよね?)

訳者解説によると北欧では近年
こういった女性の日常生活に事件をからめた
「フェミクリミ」と呼ばれるジャンルの作品が増えているのだとか。
仕事と家庭の両立、家事や子育てに関するあれこれ、
パートナーとの関係、そもそもの生きがい
悩ましいこと、腹の立つこと、
誰かに聞いて欲しいけれど誰にも言えないあれやこれ、
そういう問題を真正面から描くことも可能だろうが
ミステリとセットなら取っつきやすく読みやすい。

この際思い切って日本でも、
そういうジャンルを前面に打ち出して売り出す方がいいのかも。

たとえそういう打ち出しをしたとしても工夫をすれば
読者対象を女性に狭めることなしに
「近頃、彼女がいったいなにを考えているのかよく分からなくてねえ」
などという男性諸氏にも需要があると思うけどなあ。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2236 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2016-08-02 10:20

    シリーズ第2弾!
    『過去を殺した女』のレビューをアップしました。
    http://www.honzuki.jp/book/238860/review/156797/

  2. No Image

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