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かもめ通信
レビュアー:
女がいる。僕の作品を読みながら戸惑う女がいる。とか、言っていそう。そういう戸惑いもまた、著者にとっては想定内なのだろうけれど。
実をいうとこの本を読むのは二度目だ。
気に入った本は何度でも読む私ではあるが、
この本に関して言えば、まだ再読の機が熟しているとは言い難かった。

というのも
初読の時、なんだか全くつかみ所が無くて
あるいはもしかすると著者の他の作品
『ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし―ドナウを下って』
あたりを読んでからなら、
また違ったものが得られるかもしれないと思っていたのだけれど
結局『ハーン=ハーン……』も未だ読みたい本のリストに待機中なのだ。

にもかかわらず、再度この本を手にしたのは
祝 #白水社 #エクスリブリス #創刊10周年 記念読書会 
がまもなく全点制覇を達成しそうだからという
かなり下世話な理由に他ならなかった。

そして今、私は途方に暮れている。
この本はやはり私の手にあまる。

ちなみにこの本のレビューは、私がこのレビューを書き始めた時点では
本が好き!には一つもなかった。
(今はぴょんはまさんのレビューがある。ぴょんはまさんありがとう!)
アマゾンにもない。
読書メーターにはあるがレビューの数は極端に少ない。

でもまあ、気を取り直してなんとか紹介してみよう。

まずは構成、これは独特だ。
語り手〈僕〉による97の断章からなっている。

そのほとんどは「女がいる。」というシンプルな一文で始まる。
その点は、同じエクス・リブリスの 『ぼくは覚えている』に似ている。
だがその後も、また変わっていて、
「僕を愛している。」か「僕を憎んでいる。」
あるいは「僕を愛……憎……」などと続く。

読んでいくうちに、この「女」がどんな人物であるか
「僕」とどんな関係にあるのかが次第に明らかになっていく……というのなら
読み手の私も安心できるのだが、
「女」は常に変化していて、つかんだと思ったら、すり抜けていく。
実際のところ「女」は何人いるのか、
本当に存在しているのかどうかもわからない。

ある章に登場する女と激しくセックスをしたかと思うと、
別の章ではただレストランで向かい合って食事をしている「女」について
妄想を膨らませる。
ある章に登場する「女」は語り手の元妻らしく、
また別の章の「女」は母親であるらしい。

同じフレーズの繰り返しが、
文章にリズムを加え、
声に出して読むのが心地よいかとも思うが、
突然「女は口が臭い」といいだしたかと思うと
いきなり声高にワギナだベニスだと叫び出すから
穏やかな気持ちで読みあげることができない。

稀に違った出だしで始まることがあるが
それも男がいる。僕を憎……。いや、実際は女だ。とか
「女は僕を愛している」がいる。
「女は僕を憎んでいる」がいる。などという。

「女」を語っているようで、
「女」の存在も不確かで
本当に「女」のことだけを語っているのかも定かではなく
時折盛り込まれるハンガリーの歴史的事柄への言及、引用の裏に、
こめられているのだという皮肉やユーモアすらつかみきれない。

訳者解説によれば著者は名門大貴族の末裔としてブダペストに生まれたのだそう。
ポストモダン的な作風を特徴とし、ヨーロッパ内外で広く知られ、
1995年に刊行された本書はすでに15以上の言語に翻訳され、
海外ではしばしば舞台作品としても上演されているのだとか。

そう聞いて、私はますます途方に暮れた。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2233 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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