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雪の結晶の美しさを世に広めた殿様とふたりの家臣の、雪の研究をめぐる物語。
タイトルの「六花(りっか)」とは雪の結晶のこと。江戸時代に雪を研究し、結晶の観察結果を『雪華図説』という本にまとめ出版した殿様がいた。古河藩主、土井利位(としつら)。この殿様は天保年間に老中首座を務めるなど政治的手腕にも秀でていたが、雪の結晶の美しさを世に広めたことで後世に名を残した。
雪華文様の意匠は現代でも様々な所で見かける。本書はそのデザインの元となった『雪華図説』をめぐる人々のお話である。物語は古河藩の下級武士、小松尚七の視線で綴られてゆく。尚七の心の中にはいつも、「なぜ?どうして?」の疑問が渦巻いていた。
「草木に咲く花はみな花びらが五枚です。どうして雪だけが六弁なのか、何よりもそれが不思議でなりませんでした。」
周囲から「何故なに尚七」と呼ばれていた男は、雪に見とれていた渡良瀬川のほとりで生涯を変える出会いをする。藩の重臣、鷹見忠常に見出され若殿のご学問相手に推挙されたのだ。学問でも政治でも、考え続けなければ前に進まない。他人に何と言われようと考えることをやめない、尚七の資質は貴いと忠常は言った。
『雪華図説』完成までの道筋や研究方法など自然科学的な事柄よりも、どちらかといえば登場人物の人間性に力点を置いて描かれている。幕府の重職を歴任し老中への道を上ってゆく殿様、土井利位。学者肌で野心に薄い殿の背中を押し続けた切れ者の側近、鷹見忠常。主従の壁を越えた学究の友として、殿の心を支えた小松尚七。
立場が違えば悩みも違う。それぞれの孤独や苦しみを癒すのは、雪の結晶へ純粋な思いだった。天保の大飢饉、シーボルト事件や大塩平八郎の乱。揺れ動く時代に揉まれ、純朴な尚七も成長してゆく。彼の周囲の人々の言葉がとても印象深い。
大槻玄沢は「恥を恐れてはいけない。間違いからこそ人は学ぶ。」と諭し、後に伴侶となる通詞の娘は「(学びの機会は)望めばいくらでも手に入るのに、殿方にはそれができるのに、なぜ手放そうとなさるのですか!」と泣いた。
小さな結晶が結びついて真っ白な雪になるように、人の結びつきで人生は作られてゆくのだと、語りかけてくるようだ。
雪華文様の意匠は現代でも様々な所で見かける。本書はそのデザインの元となった『雪華図説』をめぐる人々のお話である。物語は古河藩の下級武士、小松尚七の視線で綴られてゆく。尚七の心の中にはいつも、「なぜ?どうして?」の疑問が渦巻いていた。
「草木に咲く花はみな花びらが五枚です。どうして雪だけが六弁なのか、何よりもそれが不思議でなりませんでした。」
周囲から「何故なに尚七」と呼ばれていた男は、雪に見とれていた渡良瀬川のほとりで生涯を変える出会いをする。藩の重臣、鷹見忠常に見出され若殿のご学問相手に推挙されたのだ。学問でも政治でも、考え続けなければ前に進まない。他人に何と言われようと考えることをやめない、尚七の資質は貴いと忠常は言った。
『雪華図説』完成までの道筋や研究方法など自然科学的な事柄よりも、どちらかといえば登場人物の人間性に力点を置いて描かれている。幕府の重職を歴任し老中への道を上ってゆく殿様、土井利位。学者肌で野心に薄い殿の背中を押し続けた切れ者の側近、鷹見忠常。主従の壁を越えた学究の友として、殿の心を支えた小松尚七。
立場が違えば悩みも違う。それぞれの孤独や苦しみを癒すのは、雪の結晶へ純粋な思いだった。天保の大飢饉、シーボルト事件や大塩平八郎の乱。揺れ動く時代に揉まれ、純朴な尚七も成長してゆく。彼の周囲の人々の言葉がとても印象深い。
大槻玄沢は「恥を恐れてはいけない。間違いからこそ人は学ぶ。」と諭し、後に伴侶となる通詞の娘は「(学びの機会は)望めばいくらでも手に入るのに、殿方にはそれができるのに、なぜ手放そうとなさるのですか!」と泣いた。
小さな結晶が結びついて真っ白な雪になるように、人の結びつきで人生は作られてゆくのだと、語りかけてくるようだ。
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- 出版社:祥伝社
- ページ数:270
- ISBN:9784396634537
- 発売日:2014年12月11日
- 価格:1598円
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