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ミステリータッチな怪奇浪漫を、アンドリュー・ロイド・ウェバーの名曲なしで味わってみた。
この作品をもとにしたミュージカルの主題歌“PHANTOM OF THE OPERA”は、世界で最も有名なイントロを持つ曲と言われている。始まりはこんな歌詞である。
Beneath the opera house
I know he`s there
(私は知っている
オペラ座の真下に彼がいることを)
パリの劇場オペラ座で不可思議な出来事が連続して起きた時、皆が口を揃えて「彼の仕業だ」と言った。しかし、本当にその男の実在を知る者はひとりしかいなかった。「彼」が、歌姫クリスティーヌを愛するようになるまでは。
オペラ座に起きる奇怪な事件、歌姫クリスティーヌと幼馴染ラウールの恋、物語はこの二つを柱として進んでゆく。
オペラ座の新しい支配人宛てに、「怪人」を名乗る男から金銭をはじめ様々な要求を述べた手紙が届くが、支配人は悪戯だと思い歯牙にもかけずにいた。すると、殺人事件が起きたり客席にシャンデリアが落下したりと思わぬ出来事が続くようになる。なぜなのか?
オペラ座の端役クリスティーヌは、素晴らしい謎の声の主にレッスンをつけてもらい、代役で主演した舞台をチャンスに一夜にしてスターにのし上がる。幼馴染と再会し、ふたりは恋に落ちる。しかし、クリスティーヌは何かに怯え続けて恋人を遠ざけようとする。なぜなのか?
ふたつの「なぜ?」は絡み合い、クリスティーヌはある日上演直後の舞台から煙のように姿を消す。怪人の正体を知る不思議なペルシア人とラウールは、オペラ座地下深くの湖にある怪人の住処へと急ぐのであった。
舞台に比べて原作の方が登場人物の掘り下げは深い。怪人エリックの心の痛みは、彼の過去に詳しく触れられた原作の方がしっかりと伝わる。それでもうーん、「音楽の天使」なんて言葉にコロッと騙されたあげく拉致監禁されちゃうクリスティーヌって、ちょっとアホなんじゃないか。いや待てよ、涙とキッスが寂しい男に及ぼす威力を計算していた凄腕の女なのか。クリスティーヌの純真さが、なんだか胡散臭い。舞台では彼女が歌う美しい“MUSIC OF THE NIGHT”に、そんなこと忘れて感動しちゃうのだけれど。
ミステリアスで怪奇浪漫の雰囲気たっぷりだが、孤独と妄執が真の優しさに触れて浄化される愛の物語である。同情心からなる真心の清らかさを、愛と呼んでよいのなら。
Beneath the opera house
I know he`s there
(私は知っている
オペラ座の真下に彼がいることを)
パリの劇場オペラ座で不可思議な出来事が連続して起きた時、皆が口を揃えて「彼の仕業だ」と言った。しかし、本当にその男の実在を知る者はひとりしかいなかった。「彼」が、歌姫クリスティーヌを愛するようになるまでは。
オペラ座に起きる奇怪な事件、歌姫クリスティーヌと幼馴染ラウールの恋、物語はこの二つを柱として進んでゆく。
オペラ座の新しい支配人宛てに、「怪人」を名乗る男から金銭をはじめ様々な要求を述べた手紙が届くが、支配人は悪戯だと思い歯牙にもかけずにいた。すると、殺人事件が起きたり客席にシャンデリアが落下したりと思わぬ出来事が続くようになる。なぜなのか?
オペラ座の端役クリスティーヌは、素晴らしい謎の声の主にレッスンをつけてもらい、代役で主演した舞台をチャンスに一夜にしてスターにのし上がる。幼馴染と再会し、ふたりは恋に落ちる。しかし、クリスティーヌは何かに怯え続けて恋人を遠ざけようとする。なぜなのか?
ふたつの「なぜ?」は絡み合い、クリスティーヌはある日上演直後の舞台から煙のように姿を消す。怪人の正体を知る不思議なペルシア人とラウールは、オペラ座地下深くの湖にある怪人の住処へと急ぐのであった。
舞台に比べて原作の方が登場人物の掘り下げは深い。怪人エリックの心の痛みは、彼の過去に詳しく触れられた原作の方がしっかりと伝わる。それでもうーん、「音楽の天使」なんて言葉にコロッと騙されたあげく拉致監禁されちゃうクリスティーヌって、ちょっとアホなんじゃないか。いや待てよ、涙とキッスが寂しい男に及ぼす威力を計算していた凄腕の女なのか。クリスティーヌの純真さが、なんだか胡散臭い。舞台では彼女が歌う美しい“MUSIC OF THE NIGHT”に、そんなこと忘れて感動しちゃうのだけれど。
ミステリアスで怪奇浪漫の雰囲気たっぷりだが、孤独と妄執が真の優しさに触れて浄化される愛の物語である。同情心からなる真心の清らかさを、愛と呼んでよいのなら。
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この書評へのコメント
- Wings to fly2016-11-05 09:06
ぷるーとさん
おお。是非読んで比べてみて下さい!その感想も伺いたいです(^^)
新訳文庫、次々出てくるので目移りしちゃうんですよ(笑)
なので、このガイドブックに頼ってます。
光文社古典新訳文庫・駒井稔編集長が熱く推奨する「今こそ読まれるべき古典」79冊
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