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かもめ通信
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実録、奥様付きメイドは見た?!いやはやこれはイギリスの階級社会を覗くだけでなく、歴史を語る貴重な資料だ。
イギリス・ヨークシャーで、石工の父と雇い主の信任厚い洗濯メイドの母との間の長女として生まれたローズは、「旅行がしてみたい」という夢をいだいていた。
ローズの夢を知った母は、普通なら奉公にあがる年齢になった娘に、フランス語と洋裁の勉強をさせることにした。
庶民には夢のまた夢の旅行ができる職業として、母が薦めたのは“奥様付きメイド”だったのだ。

同世代の娘達がとっくに働きに出ているというのに、親の金で勉強を続けていることを心苦しくなったローズは、「“下働きメイド”として経験をつみながら、ステップアップを図ったらどうか」と母に提案してみるが、「一度“下働き”になったら、一生“下働き”のまま」だと、母は頑として譲らなかった。

やがて努力が実り“令嬢付きメイド”の職を経て、念願の“奥様付きメイド”となったローズは、子爵夫人にしてイギリス初の女性下院議員でもあるレディ・アスターに見初められ、不本意ながらお抱えメイドとなる。
アメリカ出身で、国内外の王族とも深い親交をもつレディ・アスターのメイドとなることはローズにとって、旅行の夢を叶えるだけでなく、ステップアップには違いなかったが、彼女が就職を嫌がったのにはワケがあった。
ナンシー・アスターは、その激しい気性ゆえ、メイドが居着かないことで有名なやっかいな女主人だったのだ。

持ち前の機転と自信と気の強さをフル稼働させ、たとえ相手がご主人様でも臆せずずけずけと物を言うローズを、レディ・アスターはたいそう気に入った。
とはいえそこは“難しい性格”の女主人。
褒めないどころか、声高に罵ることもあったとか。
それでもこのローズ、決して言われっぱなしでいないところがまたすごい。
まさに割れ鍋に綴じ蓋?!
結局2人は死が2人を分かつまで35年間もの間、ぴたりと寄り添って生活をすることになる。

戦争やスキャンダル、次々と家族をおそうの様々な問題を、手に手を取っていかに乗り越えてきたか。
奥様付きメイドが語るあれこれは、間違いなくイギリス史の一部でもある。
と同時に、“メイドや執事や庭師の仕事がどんなものか”や“ばあやとメイドの仲が悪いのはなぜか”など、昔ながらの翻訳小説を読み解くヒントもたくさん盛り込まれていた。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2234 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. Wings to fly2014-09-25 07:58

    広告で見かけてすぐに図書館に予約したのですが、私より素早い人が何人かいました。面白そうですね!回ってくるのを楽しみに待ちます(^ ^)

  2. Kurara2014-09-25 21:35

    かもめ通信さん♪

    チラッ(・_| 書評楽しみました!ローズさんは生涯独身だったのかな?以前読んだマーガレットはずっとメイドでいることに疑問を持ち結婚したけど、ローズさんはキャリア派っぽいですね。
    私の方は図書館に1冊しか入ってこなかったので、年内は絶望的です(泣)
    慰めに別のメイドものに手を出しそうになっていますw

  3. かもめ通信2014-09-25 22:00

    >Wings to flyさん
    私も出版社のツイートで見かけてすぐに予約したのですが、一番乗りではなかったですw
    想像していたよりずっと硬派(?)な感じでしたが、二人のやりとりがまた面白い!
    後にレビューを書かれる方のためにその辺は引用しないでおきましたから、ゆっくり楽しんで面白い書評を書いて下さいませww

  4. かもめ通信2014-09-25 22:06

    >Kuraraさん
    ローズさんは生涯独身でした。母親のために家を買い、母亡き後は自分の家として時々「訪れる」のを楽しみにしていたそうですが、彼女が休暇をとるとお屋敷が大変なことになって………ww
    ちなみにこちら↓は私が気に入っているコージーミステリなのですが、丁度同じ時代が舞台なので、登場人物がかぶっていたりしてそういう意味でも面白かったです。

  5. ラビー2014-09-26 13:33

    書評で、いや~気になる気なる(笑
    早速図書館で予約しましたよ~♪
    5番で~す、いつ来るかな。

  6. かもめ通信2014-09-26 14:29

    >ラビーさん
    メイドさんご本人の回想録なので,文章はお世辞にもこなれているとはいえないけれど,思い入れたっぷりに語っているので,読んでいるうちになんだか登場する人々に親近感がわいてきましたw
    おそらく手元に届いた際にはその分厚さにたじろがれることと思いますが,軽い気持ちで読みはじめればなかなか楽しめると思いますよ。

  7. 星落秋風五丈原2014-10-22 22:05

    こんにちは。お二人に続いてやっと読み終えました。

    >文章はお世辞にもこなれているとはいえないけれど

    というのはまさにその通りで、翻訳者の腕ではなく、原文が紋切り型だったんだろうなと思います。

    レディ・アスターが、この人だ!と見染めたローズを娘付きから自分付に変える時の言い方がツンデレで笑ってしまいました。

  8. かもめ通信2014-10-22 22:10

    星落秋風五丈原さん、お疲れ様でしたw
    そうそうきっと原文がね。
    でも綺麗に整えられた文体でないことがかえって
    これはこれでいいんだ!と思わせるものがありましたよね。
    本当になかなか楽しい本でしたw

  9. No Image

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