かもめ通信さん
レビュアー:
▼
物語に身を任せ考えれば考えるほど、漂えば漂うほどに面白い。
ブダペストは素敵な街で、いつの日かまた是非訪れたいと思っている街でもある。
そんなブダペストをタイトルにしたブラジル文学だと聞いて、興味本位に手を伸ばした私は作者であるシコ・ブアルキが、ブラジルの著名なシンガーソングライターであるということさえ知らなかった。
そう聞けばなるほどと思うほどに物語の導入部は音楽的だ。
主人公の男ジョゼ・コスタは飛行機トラブルでブダペストに降りたつことを余儀なくされ、ホテルで一夜を過ごす。
TVのニュースでは繰り返し、自分が乗ってきた飛行機のことが取り上げられていたが、彼は全くハンガリー語を解さなかった。
それでも朝までの間に、何度も耳を傾けているうちにだんだんと単語らしいものが聞き分けられるようになっていく、そうしてその間にハンガリー語の音のにすっかり魅せられてしまったのだ。
だがそれも一夜限りのこと。
翌日には再び機上の人となり、リオデジャネイロの妻ヴァンダとひとり息子の元にもどって、慌ただしく仕事に取りかかる。
手紙や論文の代筆から始まって、政治家の演説内容や誰かの回想録、ありとあらゆるものを本人に成り代わって書くというゴーストライターの仕事に。
やがて彼は、仕事に行き詰まりを感じるようになり、再びブダペストへと旅立つ。
そこで一人息子のいる女性クリスカと知り合い、ハンガリー語を習い始め、ゾゼ・コッスタとして一緒に暮らすようになる。
ハンガリー語に馴染んだころにリオに戻るが、家庭に自分の居場所はなく、皮肉なことにかつて手がけた他人の自伝はベストセラーになっていた。
迷ったあげくコスタはまたブダペストに舞い戻る。
しかし、二重生活を送る彼の混乱はますます加速していく。
リオデジャネイロとブダペスト、ポルトガル語とハンガリー語、ジョゼ・コスタとゾゼ・コッスタ、ヴァンダとクリスカ………。
物語にはいくつもの対比が織り込まれていて、まるで合わせ鏡であるかのように向き合っているかとおもえば、ときに重なり合って、次第に境界が曖昧になり、いつしかあれこれが混ざり合う。
言葉との間で、愛の狭間で、仕事に関して、自分の居場所について、コスタとともに読者である私も迷い、漂い、彷徨う。
地の文も会話も作中作も主人公の思考もすべて、同じレベルに並べられて語られているものの、決して読みづらいという印象を受けないのは、翻訳にリズムがあるからかもしれない。
そう思うと意味はわからなくても原書の朗読を聞いてみたくなる。
だがまてよ。
この物語、そもそもポルトガル語で書かれたものか?
ハンガリー語ということは?あるいは半々とか?!
だいたい主人公のコスタとはいったい何者だったのか?
物語を語っているのは誰なのか?
そしてまたこの物語を書いたのは本当のところいったい誰なのか?!
考えれば考えるほど、漂えば漂うほどに面白い。
そんなブダペストをタイトルにしたブラジル文学だと聞いて、興味本位に手を伸ばした私は作者であるシコ・ブアルキが、ブラジルの著名なシンガーソングライターであるということさえ知らなかった。
そう聞けばなるほどと思うほどに物語の導入部は音楽的だ。
主人公の男ジョゼ・コスタは飛行機トラブルでブダペストに降りたつことを余儀なくされ、ホテルで一夜を過ごす。
TVのニュースでは繰り返し、自分が乗ってきた飛行機のことが取り上げられていたが、彼は全くハンガリー語を解さなかった。
それでも朝までの間に、何度も耳を傾けているうちにだんだんと単語らしいものが聞き分けられるようになっていく、そうしてその間にハンガリー語の音のにすっかり魅せられてしまったのだ。
だがそれも一夜限りのこと。
翌日には再び機上の人となり、リオデジャネイロの妻ヴァンダとひとり息子の元にもどって、慌ただしく仕事に取りかかる。
手紙や論文の代筆から始まって、政治家の演説内容や誰かの回想録、ありとあらゆるものを本人に成り代わって書くというゴーストライターの仕事に。
やがて彼は、仕事に行き詰まりを感じるようになり、再びブダペストへと旅立つ。
そこで一人息子のいる女性クリスカと知り合い、ハンガリー語を習い始め、ゾゼ・コッスタとして一緒に暮らすようになる。
ハンガリー語に馴染んだころにリオに戻るが、家庭に自分の居場所はなく、皮肉なことにかつて手がけた他人の自伝はベストセラーになっていた。
迷ったあげくコスタはまたブダペストに舞い戻る。
しかし、二重生活を送る彼の混乱はますます加速していく。
リオデジャネイロとブダペスト、ポルトガル語とハンガリー語、ジョゼ・コスタとゾゼ・コッスタ、ヴァンダとクリスカ………。
物語にはいくつもの対比が織り込まれていて、まるで合わせ鏡であるかのように向き合っているかとおもえば、ときに重なり合って、次第に境界が曖昧になり、いつしかあれこれが混ざり合う。
言葉との間で、愛の狭間で、仕事に関して、自分の居場所について、コスタとともに読者である私も迷い、漂い、彷徨う。
地の文も会話も作中作も主人公の思考もすべて、同じレベルに並べられて語られているものの、決して読みづらいという印象を受けないのは、翻訳にリズムがあるからかもしれない。
そう思うと意味はわからなくても原書の朗読を聞いてみたくなる。
だがまてよ。
この物語、そもそもポルトガル語で書かれたものか?
ハンガリー語ということは?あるいは半々とか?!
だいたい主人公のコスタとはいったい何者だったのか?
物語を語っているのは誰なのか?
そしてまたこの物語を書いたのは本当のところいったい誰なのか?!
考えれば考えるほど、漂えば漂うほどに面白い。
お気に入り度:







掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:白水社
- ページ数:202
- ISBN:9784560027400
- 発売日:2006年02月28日
- 価格:2160円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。