書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

Wings to fly
レビュアー:
#ナツイチ 命あることの尊さを、分かち合った少年たち。
「むりをして生きていても どうせみんな死んでしまうんだ」
11歳で自殺した少年が書き残した言葉を、良一は何度も思い出す。良一は中学三年生、内向的で心を打ち明ける友人もなく、豊かな感受性の表現手段はピアノ演奏だ。しかし、音楽の道に進む夢をピアノ教師の母に言い出すことも出来ずにいる。

親への反発、優秀な弟への引け目、押しつぶされそうな閉塞感は、自殺という選択肢すら目の前にちらつかせる。そんなある日、良一は口をきいたこともない同級生に、「人の命がかかっているから」野球部の試合をビデオ撮影してほしいと頼まれる。

依頼人の徹也は野球部のエースで、明るく逞しく積極的で、私立の野球強豪校にも女子たちにも熱い視線を注がれている。正反対の性格のふたりは同じ少女を好きになり、同じ苦しみを知る。試合のビデオを喜んだ直美は、不治の病にかかっていた。

15歳にして大きな悲しみを知ってしまう、三者三様の心の揺れ動きが鮮やかだ。
もうすぐ死ぬことを思うと、時々周囲に八つ当たりせずにはいられない直美。幼馴染で相思相愛の直美に良一が恋心を持ったことを知りつつ、良一を排除しようとしない徹也。直美の病床を少しでも賑やかに楽しくということよりも、直美を失うことの悲しみが抱えきれず、それを分かち合う仲間が欲しかったのかもしれない。15歳はまだまだ幼く弱く、その心情を愛おしいと思う。

「生きろよ」「ああ、生きるよ」
それは“僕は君のことを忘れない”という亡き人への約束なのだ。
命あることの尊さを、思春期の揺らぎの中に描いている。傷つけたり傷つけられたり、哀しい体験をしても生きていたい。泣きながら、これが生きていることなんだって実感したい。このストレートさが、胸を打つ。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

読んで楽しい:4票
素晴らしい洞察:1票
参考になる:25票
共感した:2票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. かもめ通信2017-08-05 06:52

    いやはやこれはまた懐かしいw
    甘酸っぱい“苺”かと思いきや“一五”だったっていうヤツですよね!w
    1990年代の作品?
    観てはいませんが映画やドラマにもなったと記憶しています。
    ホント、ナツイチラインナップは謎だなあ~ww

  2. Wings to fly2017-08-05 08:50

    たいへん有名ですが、実は初読みでした(笑)
    心理描写の優れた作品ですね。
    確かにナツイチのラインナップは…(笑)でもこれは良いね、うん。
    そうそう、かもめ通信さん『吾輩は猫である』の書評をお持ちでしたよね。あれもナツイチに入ってるので掲示板に持ってきて下さらない?(集英社版じゃなくてもオッケーだそうです)
    それで、謎のラインナップから何かお読みにならない?祐太郎さんが喜ぶよー!

  3. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『いちご同盟』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ