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darklyさん
darkly
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ユーミンのアルバムにみる女性たちの恋愛観、結婚観、仕事観の変遷。少し無理がある解釈も多いが。
今年、ユーミンファンの聖地である苗場ツアーに初めて参加することができました。あらためてユーミンの楽曲の素晴らしさを再確認したのですが、そういえば本書を10年以上前に買っていたのを思い出し、引っ張り出してきました。

本書は主に荒井由実の時代及び1980年代から1990年初めにかけての所謂バブルの勃興と終焉、そしてそれに重なる第二次ユーミンブームに発表されたアルバム毎にテーマを設定し主に女性の恋愛事情を曲に重ねて解説したものです。

著者の略歴を見ると主に恋愛や女性の生き方の評論を得意とするコラムニストのようですので、ユーミンファンとしてこの本を書いたというよりも、その時々の恋愛事情や世相を無理やりユーミンの曲に当て嵌めた感がかなりあります。特にユーミンが作曲の背景まで公言し、明らかに恋愛とは関係のない曲まで恋愛の曲としてしまう力業には苦笑するしかありません。

ただ、時代と共に移り変わっていく女性たちの恋愛観、結婚観、仕事観についてはさすが専門であるだけに感心する部分も多く読み物として面白くないわけではありません。当然ユーミンのアルバムも時代の空気が影響しているのは間違いなく、筆者の解説もなるほどなあと思う部分もあります。

例えば筆者が使う秀逸だと思う言葉は「助手席性」。これは色々な意味を含みますが、確かにユーミンの歌には助手席に乗っているものが多い。特にユーミンファンでなくても知っている曲では「中央フリーウェイ」「埠頭を渡る風」「14番目の月」、そのほかにも沢山あります。

しかし時代が移り変わっていく中でも人が持っている根本的な価値観や思想は変わるはずもなく、ユーミンについても当然そうでしょう。私はファンクラブに入ったり、ツアーを追いかけたりするレベルのファンではありませんが、ほとんどのアルバムを聴いており、ユーミンの曲や発言から受けるユーミンの根本的な精神性を述べたいと思います。

著者の主張では例えばアルバム「MISSLIM」の解説ではユーミンの歌に出てくる「泣かない女」はダサいから泣かないとまとめています。つまり泣いて男にしがみつくのはダサいという恋愛観がその当時の女性から「男とつがいになるためには手段を選ばない」という、なりふり構わない必死さを、彼女達から奪ったのではないかと分析しています。

私はユーミンがそのように考えているとは思えません。ユーミンの恋愛観の基本にあるのは私は「運命」ではないかと思っています。あなたが悪いわけではない、私が悪いわけでもない、これは運命なのだというものが何か根底に流れているような気がします。「運命」によって別れたのだから、逆に言えば「運命」によってまた出会いがあるという基本的にポジティブな思想の持ち主だと思うのです。

同じ日本を代表する女性シンガーである中島みゆきは真逆を行くような気がします。彼女は失恋の原因を「運命」のような外的な、人間にはどうしようもないものに求めるよりも、内的なものに求める曲が多い。あなたはひどい人だ、私が悪い、私はあなたにふさわしくない、泣き叫びます、恨みます、死にます。当然ながらポジティブに次の恋愛には移行できません。しかしその強烈な負のエネルギーが怨念のように楽曲に乗り移り私たちの魂に深い爪痕を残すのです。

以上は恋愛についてのものですが、ユーミンの精神世界はそもそももっと大きなものでできており、その中の一つが恋愛における「運命」なのではないかと思います。ユーミンファンならお分かりだと思いますが、ユーミンが歌うテーマは恋愛だけでなく、人生、冒険、宇宙、死、オカルティズム、輪廻など幅広く、しかもかなりスピリチュアルな傾向の曲も多いと思います。それが根底にあって恋愛に降りてきているような気がします。

ただ一般的なイメージのスピリチュアルというよりも楽天的でロマンティック、そして健全なものであり、現実逃避的であったり、自分は特別であるというようなものではないと思います。謂わば楽天的で明るいスピリチュアリストと言えるのではないかと思います。

本書はコアなユーミンファン向けというよりは、同じ時代を過ごした女性たちがその当時を回顧しながら懐かしむためのものだと思います。
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darkly
darkly さん本が好き!1級(書評数:337 件)

昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。

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