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かもめ通信
レビュアー:
惚れっぽい私がまたまた熱を上げた今度のお相手は、動きに愛嬌がありどこか愛らしくセクシーな“ドーソン”。残念ながら彼(あるいは彼女?)は顕微鏡をのぞかなければ見えないような微小生物なのだけれど……。
新潮クレストブックスの魅力は、おしゃれで軽量な装丁と読みやすい訳文だけでなく、意識的に日本にはじめて紹介する作家や、既に紹介されていてもあまり広く知られていない作家の作品を紹介していることにある。

ページをめくる前に作家やその作品に対する予備知識や先入観というものがない分新鮮味がある上に、良い作品、好みの作家に出会えた時の喜びもひとしおなのだけれど、正直に言えば(外れたなあ~)と思うこともある。

言うまでもなく次々と出版される本にすべて目を通していくことは不可能なわけで、がっかりを減らして嬉しい出会いを増やすための1つの方法として、私が重視することのひとつは翻訳者だ。
そして、私は(彼が選んだ本が面白くないはずがない!)と思うほど藤井光さんという訳者に絶大な信頼を置いている。

そんなわけで手にした本書には、ページをめくる前から大きな期待を寄せていた。あんまり期待が大きいとついつい評価が辛口になりがちになるものだが、この本に限ってはその心配もなかった。

1989年生まれというまだ若いアメリカ人作家が2011年に刊行した初の短篇集である本書には、以下の11作品が収録されている。

ロウカ発見/フロスト・マウンテン・ピクニックの虐殺/ハーレムでの生活/格子縞の僕たち/征服者(コンキスタドール)の惨めさ/大いなる不満/包囲戦/フランス人/諦めて死ね/筆写僧の嘆き/微小生物集――若き科学者のための新種生物案内
 

毎年大勢の死者が出ることがわかっていながら、続々と参加者が集まるピクニック。
美女がひしめく王のハーレムにたった一人囲われた醜い男。
部下の手前心ならずも原住民を打ち付けて死に至らしめる征服者。
エデンの園に忍び寄る崩壊の兆し。   

不条理で寓話的、シニカルで挑発的、あり得ないのに妙に現実的で、夢物語のようなのに風刺が効いている不思議な物語たち。

中でもお気に入りは「フロスト・マウンテン・ピクニックの虐殺」「筆写僧の嘆き」「微小生物集」というところ。

いやこれはたいした新人が現れたものだ。
思いっきり惚れてしまった!
「誰に?」ってもちろん!作者と訳者とそして“ドーソン”に?!
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2240 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2014-07-24 07:26

    ROOK:新潮クレスト・ブックだな。
    http://rook.hn/note/no878/index.html

  2. No Image

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