darklyさん
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久々の森村さんの小説だが、ちょっと大風呂敷広げすぎたか。新聞や雑誌の連載小説にはよく見られる。#カドフェス
長井創次はカメラマンであり家庭を顧みずに仕事に邁進してきた。妻と二人の子供の父親であるがいつの間にか家族との間の絆が綻んでいる。妻はオウムの後継団体がモデルと思われる「まほろば教」の信者となっていた。
妻が同窓会に出席するために数日家を空けると言って出掛けたが実は嘘であり東北地方でまほろば教の信者と一緒だった。2011年3月11日に。
長井は被災地に妻の捜索に行く。それは、若い頃に出逢った元恋人を探す旅でもあった。そして、被災地の人々に寄り添い少しでも心の支えになることができればという遍路の旅でもあった。さらに長井の戦場カメラマン時代などの経験からくる負い目の償いの旅でもあった。
一方、原発の協力会社の社長の失踪、原発内での白骨死体発見などを警視庁の棟居らが捜査するうちに、電力会社と電力会社の協力会社、まほろば教、暴力団との関係や地方公共団体の汚職など原発にまつわる黒い構図が明らかとなっていく。そして長井と棟居らの情報がつながったとき、すべての謎が明らかになる。
森村さんの小説ははるかかなたの昔に少し読んだことがあるだけで相当久しぶりです。なんとも言いようのない奇妙なミステリです。伏線となるだろうと思われる出来事も単なる偶然であったりします。伏線が散りばめられているというよりは迷彩が施されているといった印象です。雑誌連載の小説であるため読者を飽きさせないために様々な出来事を埋め込んだのでしょうか。
また、悲しみから立ち直ろうとする被災者、自分の家族の安否も分からないまま使命感から遺体の捜索を行う自衛隊の隊員たち、自らの命も顧みず原発事故に挑んだ現場の作業員たちなど、いわば善の世界と、国策として原発を推進した政治家や官僚・原発メーカー・電力会社や危険な労働に従事させる労働者の確保のための企業・宗教団体・暴力団さらには、利便性至上主義の人々を絶対悪としてそのコントラストを描きたかったのだと思われますが、大風呂敷を広げすぎたのか、あまりにも善と悪を単純化しすぎており、全体的にまとめきれなかった感があります。市長が宗教団体や暴力団と結託して市全体が宗教団体の意のままになるという設定は、もはや社会派小説としてもリアルさがありません。
長井個人の物語としても、妻との関係、元恋人との関係、家族との関係についても中途半端な印象であったり、唐突な展開となったりしてすっきりしませんでした。
個人的には、連載小説と相性が悪いのか、ここ数年読んだ本はほとんど満足できませんでした。ただ久しぶりの森村さんの小説を読むきっかけとなりましたので、カドフェスには感謝したいと思います。
震災ではないのですが、私が住んでいる愛媛県では西日本豪雨の影響で甚大な被害が生じ、未だに日常を取り戻せていない沢山の方がいらっしゃいます。先日、私もボランティア活動に参加してきました。気温が35度の中での作業であり、チームの中には熱中症で倒れた方もいらっしゃいましたが、被災者の方からの感謝の言葉をいただき嬉しい気持ちと同時に、まだまだ復旧には時間がかかるため何度もボランティアに参加しなければならないと思っています。またボランティアの中には東京から来られていた方や外国人の方もおられ感動いたしました。
妻が同窓会に出席するために数日家を空けると言って出掛けたが実は嘘であり東北地方でまほろば教の信者と一緒だった。2011年3月11日に。
長井は被災地に妻の捜索に行く。それは、若い頃に出逢った元恋人を探す旅でもあった。そして、被災地の人々に寄り添い少しでも心の支えになることができればという遍路の旅でもあった。さらに長井の戦場カメラマン時代などの経験からくる負い目の償いの旅でもあった。
一方、原発の協力会社の社長の失踪、原発内での白骨死体発見などを警視庁の棟居らが捜査するうちに、電力会社と電力会社の協力会社、まほろば教、暴力団との関係や地方公共団体の汚職など原発にまつわる黒い構図が明らかとなっていく。そして長井と棟居らの情報がつながったとき、すべての謎が明らかになる。
森村さんの小説ははるかかなたの昔に少し読んだことがあるだけで相当久しぶりです。なんとも言いようのない奇妙なミステリです。伏線となるだろうと思われる出来事も単なる偶然であったりします。伏線が散りばめられているというよりは迷彩が施されているといった印象です。雑誌連載の小説であるため読者を飽きさせないために様々な出来事を埋め込んだのでしょうか。
また、悲しみから立ち直ろうとする被災者、自分の家族の安否も分からないまま使命感から遺体の捜索を行う自衛隊の隊員たち、自らの命も顧みず原発事故に挑んだ現場の作業員たちなど、いわば善の世界と、国策として原発を推進した政治家や官僚・原発メーカー・電力会社や危険な労働に従事させる労働者の確保のための企業・宗教団体・暴力団さらには、利便性至上主義の人々を絶対悪としてそのコントラストを描きたかったのだと思われますが、大風呂敷を広げすぎたのか、あまりにも善と悪を単純化しすぎており、全体的にまとめきれなかった感があります。市長が宗教団体や暴力団と結託して市全体が宗教団体の意のままになるという設定は、もはや社会派小説としてもリアルさがありません。
長井個人の物語としても、妻との関係、元恋人との関係、家族との関係についても中途半端な印象であったり、唐突な展開となったりしてすっきりしませんでした。
個人的には、連載小説と相性が悪いのか、ここ数年読んだ本はほとんど満足できませんでした。ただ久しぶりの森村さんの小説を読むきっかけとなりましたので、カドフェスには感謝したいと思います。
震災ではないのですが、私が住んでいる愛媛県では西日本豪雨の影響で甚大な被害が生じ、未だに日常を取り戻せていない沢山の方がいらっしゃいます。先日、私もボランティア活動に参加してきました。気温が35度の中での作業であり、チームの中には熱中症で倒れた方もいらっしゃいましたが、被災者の方からの感謝の言葉をいただき嬉しい気持ちと同時に、まだまだ復旧には時間がかかるため何度もボランティアに参加しなければならないと思っています。またボランティアの中には東京から来られていた方や外国人の方もおられ感動いたしました。
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昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
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- 出版社:KADOKAWA/角川書店
- ページ数:333
- ISBN:9784041106891
- 発売日:2014年02月27日
- 価格:1944円
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