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ぱせりさん
ぱせり
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明日も明後日も、島の暮らしは変わりなく
岩波少年文庫100冊マラソン 51冊目


作家のパパと四人の子どもたち、メルケルソン一家は、夏をウミガラス島の赤い家スニッケルズ荘で過ごすためにやってきた。
四人の子ども、といっても、長女のマーリンは19歳で、三人の弟たちと子どもみたいなパパの、母親役になってしまっている。
それでも、パパはいう。「おれはおまえたちに、できるだけのものを与えてやりたかった。この世の美しいもの、すばらしいものを、みんな与えてやりたいと思ってきた」
この言葉どおりのことを本当に考えているし、実際(うまくいかないことも多いけれど)そのように努力しているのがわかるから、みんなはパパが大好きだ。読者も、そして、島の人びと、老人から子どもに至るまで。


メルケルソン家の子どもたち、島の人びとの日常のお話。
一夏きりの避暑客だったはずのメルケルソン一家が、あれよあれよというまに、島の共同体のかけがえのない一員になっていく。一家の人となり(島の人びとと相通ずる価値観や感性)を見れば、納得だ。
悲しいことや苦しいこと、ときにはとりかえしのつかないことも起こるけれど、周囲の大人たちのおおらかな見守りのうちに、子どもたちが子どもたちなりに解決方法を模索する姿を見ているのは心地よい。


ウミガラス島がどんなにすばらしいところか、丁寧な自然描写、風景の一部になってしまう人々の姿に、ほうっとため息が出てしまうが、どんなに素晴らしい場所であったとしても、登場人物の思いが乗ってこなければ、こんなにも名残惜しくはならないだろう。
スニッケルズ荘への家族の愛情を読めば読むほどに、こんなにも住まいに愛情を注げる一人一人が羨ましくなってしまう。だけどそれは、同時に、自分の生活を振り返るよすがにもなっているのだ。ウミガラス島でなくても、スニッケルズ荘でなくても、ほら、ここには、こんなにも愛おしいものがあるよ。捨てがたい暮らしがあるではないか、と。
本のなかから爽やかな風が吹いてくるよう。風は、明日も明後日も、島の人々の暮らしが変わりなく続いていくことを教えてくれる。


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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1741 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

読んで楽しい:2票
参考になる:26票
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