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はるほん
レビュアー:
インパクトのあるタイトル。これに対抗できるものは「奥さまは魔女」くらいしか思いつかない。
国際結婚は近年、そう珍しいものではなくなった。
アメリカ・ヨーロッパ・アジア圏で嫁になった知人はいるが
アフリカ大陸、ソレも市街地ではなく
サバンナで生活する部族に嫁に行った人は、今のところ周囲にいない。

自分の中のアフリカ人イメージは、サッカーの選手や観客席のサポーター。
やはりあのしなやかな肢体と身体能力は感動だ。
負け試合を応援するあまり、観客席で数人がグルグル回って
何かの祈りを捧げていたのを見た時も感動した。
アフリカ人にはブブセラの音が気にならないと聞いたときも感動した。

偏見という意味でなく本当に
「異文化」という意味でおもしれぇぇぇと思ったのだ。
なんつーか、共通の感覚もソレはソレで楽しいけど
真逆に違うと却って興味を惹かれるというかね。

マサイ族ではないが、首伸ばしたり下唇にお皿入れる部族がいる。
その部族の「美人」と言う基準は、ほんと感じ入る。
本当に首の長い女性を見るとドキドキしたり、
お皿をみて一目惚れすることがあるんだろうかと。
まあそう言う興味もあって、購入した訳だ。

著者の永松さんは、ずっと旅行の添乗員をされていたという。
成程、それで馴れ初めは分かった気がしたが
なんと彼女はカメルーン人との破局しケニア人との離婚を経験、
一時は「もうケニアなんて大嫌い!!!」というキモチにもなったそうだが
どんな運命の導きがあったのか、マサイ族の第二夫人となったと言う。

まあ正直なところ、彼女の恋愛視点がやや中心で
凄いネタを持ってるのにこじんまりおさまってるなという印象もあるが
一般人にはなかなか出会えない異文化コミュニケーションだけに、興味深い。

自分もテレビで見たが、最近のマサイ族は「観光マサイ」と言って
普段はスマホやfacebookを使い、下にはTシャツを着ながらも
観光用に伝統の姿を見せる者もいるのだそうだ。
が、著者はそれを「もともとマサイは、良いものを取り入れてきた先進的な部族。
今のファッションだって、元はヨーロッパから取り入れたもの。
何も不思議な事じゃない」と言う。

日本だって、ニンジャやサムライがいる訳じゃない。
ただ「伝統を捨てない」「伝統を受け継ぐ」という
キモチがあるかないかと言う点が大事なのだ。
うん、コレは納得。

また日本女性である著者と、マサイとの「性」の感覚の違いは面白かった。
彼らはあくまで「子を作るため」に行為をする。
女性の魅力は子を産み、家を守ることにある。
故にキスやハグをしてくれない夫に、著者は物足りなさを感じてしまう。
AVビデオも見せたらしいが、結果は大変なことに。

が、他著で実際にマサイと結婚した西洋人の女性が
夫を自分好みの性を教えた結果
人間性が変わって嫉妬深くなり、離婚したと言う実話があるらしい。
やはり「異文化」なのだ。
夫婦間で歩み寄りというものはあるだろうが
やはり受け入れねばならないものも多いのだろう。

マサイの美人の基準は「衣装のビーズの数」らしい。
無論これもビーズを見てハァハァする訳ではない。
多分お見合いの「釣書」みたいなもんなのだろう。
性に淡泊であるが故、なんらかの基準が必要なのかもしれない。
彼らにとって大事なことは夫が妻に妻が夫に
誠意ある「結婚」という義務を果たすことなのだ。

永松さんはマサイの礼法を受け入れ、牛4匹の結納も受け取り、
花嫁衣装を用意し、家も自分で作る。
そしてマサイ戦士の夫は、永松さんの文化を受け入れる。
「日本人だから」と風習を無理強いせず、
永松さんの添乗員の仕事もそのまま続けていいと言ってくれる。

まさに「受け入れる」民族なのだ。
嫁も死も人生も、あるがこととして当然のように受け止める。
婚姻届けも無ければ、出生届もない。
タンザニアとケニアの国境も、気にせず牛を連れて超えていく。
こまけぇことはいいんだよ、と。

そうしてマサイという部族は、これからも変化していくのだ。
ツイッターで「伝統なう」なんてツイートしながらも。
「伝統を捨てて幸せに生きてる人は、少ないと思うんだ」
マサイ戦士の言葉は、ちょっとツッコミどころがありながらも、深い。
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はるほん
はるほん さん本が好き!1級(書評数:684 件)

歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。

年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。

秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。

2018.8.21

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2014-05-14 08:12

    おーこの方、こういう本も出しておられるんだ!
    ツアーガイドをしているのは知っていたけれどw
    http://www.tabisen-tsunagu.com/?page_id=787

  2. manjyu2014-05-14 19:28

    興味深く読ませていただき、ふと思いました。

    はるほんさんは一体どこでこういう本にめぐりあうのでしょうか。
    本屋さん?
    インターネット?
    それともアンダーグランド的な?謎の組織があるとか?^^;

  3. 風竜胆2014-05-14 20:05

    第二夫人とは、また微妙な・・・w

  4. はるほん2014-05-14 22:16

    >かもめ通信さん
    そうそう、遅まきながらこの本で知りました。
    さすがの面白そうなツアーなんですよね。

    いつかアフリカへ行くときは(行くんかい)
    是非著者様のツアーに参加したいと思いました!

    >manjyuさん
    もっぱら本屋派です。
    ネットはブレーキが利かなくて怖いから…。

    本屋って店員さんがコーナーを作ってるので
    案外「コレは!」って本を見つけると
    趣味に合うのが続々入ってきたりするんです。

    謎の組織…。あったらいいなあ、うふふ…。
    でも偏り過ぎて直ぐ崩壊しそう…。 ...( = =)トオイメ

    >風竜胆さん
    既に第一夫人がいらしたからだそうで
    単に順番なので愛情の差はないそうですが、
    何となく楽そうな印象で案外いいなあと思ったり。(笑)

  5. アリーマ2014-05-15 21:40

    日本の女性は本当に世界中どこまでも浸透してるなあ、と改めて感心します。

    ところで、第二夫人と聞くと正妻より格落ちみたいなイメージかもしれないけれど、たとえばイスラーム圏では第一夫人と同じ権利を認められているれっきとした「正妻」なんですよね。
    たぶんマサイ文化でも同じような話なのでは?

    しかし、例えば昔猫二匹の嫉妬合戦の狭間で暮らした経験から思うと、人間の女性二人を同居させて、金銭的にも愛情面でも同列に扱う男性がいるとしたらつくづく立派だなあ、と。

    愛人と気が向いたときに遊ぶのじゃなくて、法的拘束力のある家庭を二重に構える(しかも同じ家の中で。またはほぼ隣近所で)、ていう状況は、女性が考えても男性に強烈な負担のかかる状況だよねー、としみじみ思います。
    やり遂げるとしたら、ある意味、これぞ男の甲斐性ってもんじゃないでしょうか?(笑)

  6. はるほん2014-05-15 21:57

    >アリーマさん
    そうそう、まさにそうなんですよー。
    なので最近はマサイでも妻は1人と言う人も増えているそうです。
    やっぱり大変なので。

    第一夫人は第二夫人を迎えることを
    家族、すなわち夫を助ける人間が増えると喜ぶのだそうです。
    家はそれぞれ妻が作り、夫はそこに均等に泊まるという。

    確かにペットを沢山飼う方がイメージ近いかも。
    イヤ妻がペットって意味じゃなくて
    「妾」じゃなくて「妻を持つ」という考えなんですよねー。

    トルコ行ったときにも奥さん沢山連れてるイスラムの人見ましたが
    実に堂々としたもんで、奥さんたちも楽しそうでしたしねー(´∀`*)

  7. 祐太郎2014-05-16 09:25

    読み始めましたが、大映テレビもビックリの展開に読書しながらも定期的な休憩を挟まざるを得ません

  8. はるほん2014-05-16 21:01

    >祐太郎さん
    おお!マサイなうですか!←?
    凄い人生ですよね。渡る世間はケニア人ばかりというか。←??

    多分後半の方が面白いです。がんばってー。

  9. 祐太郎2014-05-17 07:41

    夫婦生活で一番大事な3つのうちの1つに多分性生活があるのかなぁと思いつつ、残り100ページ。

  10. はるほん2014-05-17 21:35

    ははあ、給料袋と胃袋とたま(やめなさい!!)

  11. No Image

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