はるほんさん
レビュアー:
▼
「ほら、怖くないよ」…いえ、怖いですが。
数あるマイブームのなかの1つ、クマー本を久しぶりに読む。
「クマーにあったらどうするか」。
想像だけでオケツがそわそわするので考えたくないが、
確かにこの「クマー対策」は諸説紛々で、正解がよく分からない。
有名な死んだフリから熊鈴やスプレー、火が有効だとも言われるが
全部無効だという話も耳にする。
本書は「アイヌ最後の狩人」と呼ばれた姉崎氏の話を
インタビュー形式でまとめたものだ。
ハンターという視点だけでなく、アイヌの風習や儀式を通して
熊という生態をみつめている。
コレが非常に面白かった。
今までにも羆撃ち・熊を殺すと雨が降る・邂逅の森などの山の民の本を読んだが
どれも山に対して、すなわちその頂点に立つ熊に対しても
非常な畏敬の念を抱いているという点で共通している。
たまたまこれを読む前に、手塚治虫の「ブッダ」を読み直していたのだが
山の民の考えというのは、仏教の「縁起」にとても近い。
「縁起」とは、「全ての存在が因縁によって繋がっている」の意だ。
熊を捕り、感謝し、それを山に返す。
その循環を壊さぬよう、彼らは些細な迷信や謂われをも順守し、
また動物や植物、水や火などそれぞれに精霊のような存在を信じる。
仏陀が悟ったとされるピッパラの木の下と、
八百万の神々を受け入れる日本と、そして独自の文化を築いた蝦夷地で
そこはかとない「繋がり」があったというのは、興味深い。
まあ今回は宗教の話ではないのでさておいて、
インタビューの中で紹介されるアイヌの風習が、非常に面白い。
聞き手も語り手もかなりのアイヌ文化識者であり、
文字だけで読むと「?」と感じるところもないでもないのだが
お蔭でいいサイトを見つけた。
アイヌ文化振興・研究推進機構(アイヌ文化財団)
風習ごとにPDFが読めるようになっているので、スマホやタブレットに保存できる。
今回はイオマンテの項目を閲覧したのだが、コレは他のも読みたい!
儀式の詳細が写真付きで書かれており、本書を読むのにとてもいい参考になった。
ともあれ「クマにあったらどうするか」だが、
最初にも書いた通り、対策に諸説あってハッキリしない。
が、大概は熊に近い距離である人ほど
「熊は人を襲う動物ではない」と断言されることが多い。
要はその人たちは、「熊をよく知っている」のだ。
冬眠に入る前の熊。春に目覚めた熊。子連れの熊。
山深い場所でひっそりと暮らす熊。里に近い場所で暮らす熊。
──そして、1度でも人を襲ってしまった熊。
これらを十把一絡げにしてしまうから、熊の像がブレてしまうのだ。
山やアイヌの民は、常に彼らを「見て」いた。
「共存」するために山や熊のルールを知り、
それを守ることを自身たちに課していたのだと思う。
「今はね、人間側がルールを守らないでしょう」
アイヌ最後の狩人の言葉は、確かにそうだと感じた。
熊は、頭のいい動物だ。だから人間のことを
「なんだか分からないヤツ」と、警戒しているんだそうだ。
それは、そうだろう。
ヤツらはたった100年で北海道を別天地に変えてしまったのだ。
クマーが「近寄らない方がよさそうだ」と判断するのは正しい。
が、一度でも人を襲った熊はアウトだ。
「なんでぇ、コイツこんなに弱っちかったのか」と思わせてしまったら
もうその熊は人の手に負えない「最恐生物」と化す。
故に、クマにであったときは「逃げ」てはいけないらしい。
動いたら習性でクマは飛びついてしまうから
動かずに、ガンをとばすのがよいらしい。
だが何かのアクシデントで、既にクマーに飛びつかれた後かも知れない。
が、クマーはすぐに噛みついてくることはないのだとか。
そのままじっとして助かった人もいるらしい。
いやでも更なるアクシデントで、もう目の前にぐわっとクマーが口が開いてるやもしれぬ。
そんな時は口の中に手を突っこんで舌を引っ張ると、
クマーが戦意を喪失することもあるらしい。
うむうむ成程!よしわかった!!
無 理 で す 。
目の前にクマーがいる時点で心が死んでるわ!
口の中見えた時点で心が折れるわ!!
もうココ読んでるだけでオケツ浮いてるんですけど!!!
や、実際クマにあったらどうするかという点は別にしても、
クマーの相反する世間一般イメージが、本書でとても腑に落ちた。
自分達はクマーをよく知らないから「怖い」のだ。
そしてクマーも、よくわからない人間が「怖い」のだ。
それは「歩み寄り」ではない、
「距離がある」ことで互いを守ることが出来るのだと、自分は思う。
熊を含む「自然界と人間の関係」を考えるにも、良書と思う。
「クマーにあったらどうするか」。
想像だけでオケツがそわそわするので考えたくないが、
確かにこの「クマー対策」は諸説紛々で、正解がよく分からない。
有名な死んだフリから熊鈴やスプレー、火が有効だとも言われるが
全部無効だという話も耳にする。
本書は「アイヌ最後の狩人」と呼ばれた姉崎氏の話を
インタビュー形式でまとめたものだ。
ハンターという視点だけでなく、アイヌの風習や儀式を通して
熊という生態をみつめている。
コレが非常に面白かった。
今までにも羆撃ち・熊を殺すと雨が降る・邂逅の森などの山の民の本を読んだが
どれも山に対して、すなわちその頂点に立つ熊に対しても
非常な畏敬の念を抱いているという点で共通している。
たまたまこれを読む前に、手塚治虫の「ブッダ」を読み直していたのだが
山の民の考えというのは、仏教の「縁起」にとても近い。
「縁起」とは、「全ての存在が因縁によって繋がっている」の意だ。
熊を捕り、感謝し、それを山に返す。
その循環を壊さぬよう、彼らは些細な迷信や謂われをも順守し、
また動物や植物、水や火などそれぞれに精霊のような存在を信じる。
仏陀が悟ったとされるピッパラの木の下と、
八百万の神々を受け入れる日本と、そして独自の文化を築いた蝦夷地で
そこはかとない「繋がり」があったというのは、興味深い。
まあ今回は宗教の話ではないのでさておいて、
インタビューの中で紹介されるアイヌの風習が、非常に面白い。
聞き手も語り手もかなりのアイヌ文化識者であり、
文字だけで読むと「?」と感じるところもないでもないのだが
お蔭でいいサイトを見つけた。
アイヌ文化振興・研究推進機構(アイヌ文化財団)
風習ごとにPDFが読めるようになっているので、スマホやタブレットに保存できる。
今回はイオマンテの項目を閲覧したのだが、コレは他のも読みたい!
儀式の詳細が写真付きで書かれており、本書を読むのにとてもいい参考になった。
ともあれ「クマにあったらどうするか」だが、
最初にも書いた通り、対策に諸説あってハッキリしない。
が、大概は熊に近い距離である人ほど
「熊は人を襲う動物ではない」と断言されることが多い。
要はその人たちは、「熊をよく知っている」のだ。
冬眠に入る前の熊。春に目覚めた熊。子連れの熊。
山深い場所でひっそりと暮らす熊。里に近い場所で暮らす熊。
──そして、1度でも人を襲ってしまった熊。
これらを十把一絡げにしてしまうから、熊の像がブレてしまうのだ。
山やアイヌの民は、常に彼らを「見て」いた。
「共存」するために山や熊のルールを知り、
それを守ることを自身たちに課していたのだと思う。
「今はね、人間側がルールを守らないでしょう」
アイヌ最後の狩人の言葉は、確かにそうだと感じた。
熊は、頭のいい動物だ。だから人間のことを
「なんだか分からないヤツ」と、警戒しているんだそうだ。
それは、そうだろう。
ヤツらはたった100年で北海道を別天地に変えてしまったのだ。
クマーが「近寄らない方がよさそうだ」と判断するのは正しい。
が、一度でも人を襲った熊はアウトだ。
「なんでぇ、コイツこんなに弱っちかったのか」と思わせてしまったら
もうその熊は人の手に負えない「最恐生物」と化す。
故に、クマにであったときは「逃げ」てはいけないらしい。
動いたら習性でクマは飛びついてしまうから
動かずに、ガンをとばすのがよいらしい。
だが何かのアクシデントで、既にクマーに飛びつかれた後かも知れない。
が、クマーはすぐに噛みついてくることはないのだとか。
そのままじっとして助かった人もいるらしい。
いやでも更なるアクシデントで、もう目の前にぐわっとクマーが口が開いてるやもしれぬ。
そんな時は口の中に手を突っこんで舌を引っ張ると、
クマーが戦意を喪失することもあるらしい。
うむうむ成程!よしわかった!!
無 理 で す 。
目の前にクマーがいる時点で心が死んでるわ!
口の中見えた時点で心が折れるわ!!
もうココ読んでるだけでオケツ浮いてるんですけど!!!
や、実際クマにあったらどうするかという点は別にしても、
クマーの相反する世間一般イメージが、本書でとても腑に落ちた。
自分達はクマーをよく知らないから「怖い」のだ。
そしてクマーも、よくわからない人間が「怖い」のだ。
それは「歩み寄り」ではない、
「距離がある」ことで互いを守ることが出来るのだと、自分は思う。
熊を含む「自然界と人間の関係」を考えるにも、良書と思う。
投票する
投票するには、ログインしてください。
歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
- この書評の得票合計:
- 54票
| 読んで楽しい: | 36票 | |
|---|---|---|
| 参考になる: | 14票 | |
| 共感した: | 4票 |
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。
この書評へのコメント
- かもめ通信2015-09-30 12:59
少しだけどあるよ~wここ ↓ にw
http://photo.ap.teacup.com/applet/kamometabinikki/msgcate18/archiveクリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:筑摩書房
- ページ数:366
- ISBN:9784480431486
- 発売日:2014年03月10日
- 価格:907円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。























