馬が好きです。犬や猫はもちろん動物は全般的に好きですが、
馬は競走馬という別角度の魅力があります。
愛玩動物という言葉があるくらい動物を仲間的に受け入れる一方で、
馬に対しては競争という欲望を乗せ、道具のように扱う面も人間はあわせ持っています。
馬に罪はありません。
駆けっこの本能を刺激されて純粋に早さを求める馬のことを、
可哀想と思うか、強いチームの一員と思うか、とらえ方は人それぞれでしょう。
こんなことを書きながら、自分の心も揺れ続けています。
きっと答えなんてないのでしょう。愛おしくて、強くて、優しい馬たち。
この一冊は、そんな気持ちが詰まっています。
競走馬を扱った小説では、宮本輝さんの優駿が好きです。
そのあとがきで知った「名馬・風の王」を読んで、競走馬のロマンに目覚めました。
物話は競馬学校の一幕から始まります。
地方競馬の騎手養成場にいる芦原瑞穂が主人公です。中央競馬も含め
女性騎手はほんの一握りです。しかし瑞穂はそんなことはまったく構いません。
牧場で育ち、馬の声を聴いて大きくなった経験をより所にして、
同期の中ではいつもトップ争いです。
卒業間近になり、みんな実習先の競馬場へと本配属が決まっていきます。
もちろん瑞穂もです。ところが、ほぼ決まりかけていた配属先がありながら、
実習先ではない広島の競馬場から声がかかります。
それってスカウトかと色めき立つ同期たち。
意気揚々と瑞穂が向かった先には、疲弊しきった地方競馬場の
客寄せパンダという任務が待っていたのでした。
廻りを見渡せばすべて駄目に囲まれた状況。
それを一枚一枚、トランプを裏返すように乗り越えていくサクセスストーリーです。
たとえいまは駄目でも、かつては夢を見ていたはずの人たち。
そのわずかな希望をたぐりよせ、細い糸をつなげていきます。
ヤングアダルト作品ですが、かえって爽やかに伝わるものがあります。
しばらくぶりに馬に会いに行きたくなりました。優しい気持ちになれる一冊です。




ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
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この書評へのコメント
- Wings to fly2017-09-19 09:31
たけぞうさん
お読みいただきありがとうごさいます^^
>わずかな希望をたぐりよせ、細い糸をつないでいきます。
そうなんですよー!そこが読ませるんですよね。傷ついた人々が、それぞれに希望と生きがいを見出す中心に馬がいる。その馬も心に傷を負っていて、馬と人が一緒に何かを乗り越えてゆくんですね。馬はなんと素晴らしい生き物なんだろうと、私も思いました。
この作品は10月2日からNHK FMで、全10回のラジオドラマとして放送されます。
http://www.nhk.or.jp/audio/html_se/se2017017.html
クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - たけぞう2017-09-19 23:27
>Wings to flyさん
ご紹介ありがとうございます。いい時間を過ごせました。久しぶりに馬に会いたいですー
ところで、まさかのラジオドラマ! もしそのうちの1回が、ほぼ競馬中継だったらと思うと笑えてきまして(独特の実況のしゃべりが脳内で反響しています
##各馬 第3コーナーを回って 徐々にスピードを上げ 京都の登り坂を 駆け抜けていきます おっとここで3番のサンシャインガデスがかかり気味 しかし先頭は依然としてメガヘイマオ さらに外側から ジュネバが するするっと抜けて おっと後方でも 動きが フィッシュアイズ、フィッシュアイズが突っ込んでくる うちではジュネバが粘る サンシャインガデ おーっと一気に フィッシュアイズ! 各馬 横一列 壮絶な追い込みあい 一着は、一着はーーーー (くどいですね、すみません。コーフンしてしまいました。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。

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- 出版社:小学館
- ページ数:357
- ISBN:9784093863759
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