たけぞうさん
レビュアー:
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背伸びしなくていいんだよ。
「正直に、取り繕わず、制作者の心をさらけだした作品は、ある映画をめぐってのやり取りです。
必ず誰かに嫌われます。そういうものは力強い代わりに粗も多く、
でこぼこで、違う意見を持つ人にとってはひどく目障りになるからです」
「その意見が本当にいいものだったら、誰も嫌ったりしないでしょう」
「いえ、誰にも嫌われないのはいい作品じゃなくて、どうでもいい
作品ってことです。強く主張するものが無くて、意識に残らないから
嫌われない」
自分の中にある考えを、これほど見事に言語化されると、全面的に
賛同するしかないですね。
たまたま映画の話ですが、小説も同じだと思っています。
この作品のすごいところは、それを人間関係にまで持ち込んでしまうのですよ。
全部で五編の短編集です。舞台は近いですが、いずれも独立した話です。
読後に心を落ち着けて考えてみると作者の価値観が浮かんできます。
それが冒頭に紹介した会話です。
人に合わせすぎると心を痛めます。自己主張が強すぎると人が去ります。
好きという思いが強すぎると、何かのきっかけで反転し、修復不可能なほど
壊れてしまうことがあります。でも、好きという思いをあらわさないと、
いつまでたっても都合のいい人のままなのです。
そんな心の距離感のお話です。
人と人が接するって難しいですね。それぞれの人と、それぞれの距離。
きっと生き物のように呼吸をしているのでしょう。
読みながらそんなことを感じました。
この短編集は、距離をつかみ損ねて失敗した人のお話でまとめられています。
身につまされます。そんなナイーブさが垣間見える作品ばかりでした。
書評のタイトルは、登場人物に向けたメッセージのように、ぽっと心に浮かんだ
フレーズです。考えてみると、メッセージ先にはわたし自身も含まれている気がします。
思い当たる方はどうぞご一読を。
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ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
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よかったらのぞいてみて下さい。
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- 出版社:光文社
- ページ数:221
- ISBN:9784334929282
- 発売日:2014年02月19日
- 価格:1470円
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