書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

morimoriさん
morimori
レビュアー:
人生の希望を失った主人公、紫紋がたどり着いた場所「尽果」。崖っぷちにある定食屋「まぐだら屋」には、何も問わずに受け入れてくれる人たちの温かさがあった。
 東京神楽坂の老舗料亭「吟遊」で修業していた紫紋(シモン)には、いつか自分の店を持ちたいという夢があった。しかし、内部告発による偽装事件発覚により夢も仲間も失い、濡れ衣を着せられた後輩の自殺により生きる希望を失った。有り金をはたいて東京を脱し、最後の所持金を使い果たしてバスを降りた。その場所は、「尽果」崖っぷちにたつ小屋を今の自分に見立て、目指して歩いていくとそこは、「まぐだら屋」という食堂だった。馥郁とした出汁の香りに引き寄せられ空腹を訴えると、「開店まえでたいしたものないけど・・・何食べたい?」

 普通なら、無銭飲食でお縄ものだが店主マリアの恩情により紫紋は、まぐだら屋で働くことになった。いや、その前に、まぐだら屋で働くことを許してもらうため、女将に挨拶をする必要があった。その女将の正体は、さらに女将とマリアとの関係は?わからないまままぐだら屋で働く紫紋だが、まぐだら屋を訪れる客は、紫紋に訪れた理由を聞くものはいない。地塩村に残る伝説が、今も人々の心に大切にしまわれているからだ。

 やがて、紫紋が地塩村での生活に慣れてきたころ丸弧(マルコ)という行き倒れの青年が、まぐだら屋にやってきた。紫紋は、丸弧とともに生活することになった。丸弧は、なぜ尽果に降り立ったのか、正体がわからない者を受け入れる地塩村の伝説とは。


 いつか読みたいと思っていた「まぐだら屋のマリア」。タイトルから、想像した通り登場人物の名前が聖書に出てくる人物。マリアを始め、シモン、マルタ、ヨハネにアンナ。マリアを支え、シモンの父親のような存在となったカツオさんだけ違うと思ったら、生業は漁師だった。地塩村に伝わる姫君とその召使の女(実は母親)の伝説も、読み手に興味を持たせ物語の世界へと引き込む伏線のような役割を持っている。東北出身の紫紋が、自分の故郷ではなく東京を脱し、山陰地方を訪れる。とにかく、東京から逃げたかったのかもしれない。冬の暗い日本海を想像すると紫紋や丸弧の生きてきた背景が想像できるかのようだ。

 理由を問わず、傷ついた人を受け入れる場所地塩村、人生に力尽きた人たちがたどり着く場所は、温かく受け入れてくれる人たちによって、生きる力を蓄えることのできるところだった。そのためには、おいしい料理が欠かせない。出汁の香りが漂ってきそうなまぐだら屋、和食のあたたかさが伝わって体も心も元気になれるような気持ちになった。

 きょうは、クリスマスイブ!特にだからといって、選んだ本ではなかったけれど素敵な本を読めたことに感謝!!「本が好き!」に関わっている人たちすべてが、素敵なクリスマスを迎えることができますように・・・メリークリスマス!!! !(^^)!
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
morimori
morimori さん本が好き!1級(書評数:951 件)

多くの人のレビューを拝見して、読書の幅が広がっていくのが楽しみです。感動した本、おもしろかった本をレビューを通して伝えることができればと思っています。

読んで楽しい:9票
参考になる:18票
共感した:3票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『まぐだら屋のマリア』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ