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はにぃさん
はにぃ
レビュアー:
お鮨を食べたくなる小説!?いえいえ、それだけじゃ終わらない。バブルの時代と共に成長していく一人の女性のせつない物語。
栃木から上京し、25歳を目前に故郷に帰りお見合いするつもりだった主人公の青子。
勤務先の社長に「送別会だよ」と、座るだけで3万円といわれる高級鮨店に連れて行ってもらった。
その店で、若い職人から白木のカウンターごしに握りを直接手渡され、刺身を載せただけではない「仕事」をされている鮨を食べ、衝撃を受ける。
その鮨の味と、職人の手に惚れ込んでしまった青子は、急遽田舎に帰ることを取りやめ、不動産会社に転職する。
そして、慎ましい生活をしながら、青子はその鮨屋に通い続ける。
客と職人、カウンターをはさんでの対応。
想い続けても、それ以上の関係にはなれないのだ。
「ヅケ」も知らなかった田舎から出てきた大人しいお嬢さんが、仕事に打ち込んでいくうちに、いつしか華やかな都会の女性へと成長していく。
1983年に初めて鮨屋を訪れた日から1992年までの、一人の女性のせつない恋愛と成長の物語である。

まず、今まで読んだ柚木麻子さんの小説と違い、「浮ついた感」が全く感じられないことに驚いた。
「ランチのアッコちゃん」「伊藤くん A to E」などでは、その「浮ついた感」が小説の面白さを加速させていたのだが。
文壇暴露小説でもある「私にふさわしいホテル」の推薦文で、辛口書評家の豊崎由美さんに「ユズキ、直木賞あきらめたってよ(笑)」と言われていたが、もしかしたら「ユズキ、本気で賞を狙ってるってよ」なのかもしれない。
(現在「本屋さんのダイアナ」で直木賞にノミネートされているので、そこで受賞するかもしれないが)

そして、この小説の舞台となっている1983年~1992年といえば、バブルの夜明け前から崩壊までである。
変貌を遂げる東京の街や当時の風俗がそこかしこにあふれ、その当時を知る者としてはとても懐かしい。
「ルンルンを買っておうちにかえろう」、ユーミンの曲、銀座のホステスやチャラい広告プランナー、地上げ、そしてバブル崩壊。
当時はまだ学生の身だったのだが、その頃のあんなことやこんなことを思い出し、感傷的になってしまった。
柚木さんは1981年生まれというからあの時代を体感していない分、第三者の目から冷静に描けたのかもしれない。

バブルに染まり、どんどん痛々しくなっていく主人公には共感できないものの、
鮨の描写が細かくて食べたくなるグルメ小説。
当時の風俗をを描くバブル小説。
せつない恋愛小説。
そんな多彩な顔を持った小説でもある。
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はにぃ
はにぃ さん本が好き!1級(書評数:483 件)

趣味はダンスと読書と食べること。

こちらに復帰してから読書計画が破綻気味です。
図書館の本も、期限内に読めずに返すということが増えてきました。
積読本も減らず。
それなのに読みたい本はどんどん増えていく・・・(´-ω-`)

気が向いたときに出没します。
どうぞよろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. rams2014-07-04 12:34

    「本屋さんのダイアナ」
    もうすぐです!

  2. gs子2014-07-04 13:32

    タイトルと、短文書評で、一瞬おにぎりの話かと空目しましたw
    書評をちゃんと拝読して、お鮨が食べたくなりました。

  3. はにぃ2014-07-04 17:05

    ramsさん 「本屋さんのダイアナ」私はあと何ヶ月かかかりそうです。
    直木賞発表の発表ももうすぐですね!

  4. はにぃ2014-07-04 17:07

    gs子さん お鮨の描写は、もぉヨダレが出そうですよ!
    職人さんのこだわりやお鮨のウンチクも色々出てきて、面白かったです。
    でも、高級鮨店のカウンターには縁がないんですけどね゚(゚´Д`゚)゚

  5. かもめ通信2014-07-17 17:41

    最近お見かけしないから、一足早い夏休みかな?と勝手にうらやましがっていたら、なんと病休だったのですね!首は大切だからね。どうぞお大事に。(あ、お返事はいらないからね)

  6. 梅里松庵2014-07-20 12:45

    『バブルへGO!! 』という映画を観ましたが、そんなに昔という印象がないにもかかわらずもうファッションがありえないですねwたぶん活字になってもそのへんの事情は同じで、イタさが楽しめるのではないかと思います。

  7. No Image

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