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DBさん
DB
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コンピューターの父の伝記
『レンブラントの身震い』や『暗号解読』を読んで、コンピューターの話で必ず名前が挙がるのがこのチューリングだった。
コンピューター理論は学生時代にコボルで挫折してから避けて通っていたが、レンブラントを読んで興味を持ったので本書を読んでみました。

映画「イミテーションゲーム」でベネディクト・カンバーバッチが演じたチューリングの姿が印象的ですが、天才的な学者だったにもかかわらず戦争と冷戦のおかげでその研究が機密扱いとなり長らく世の中に知られることのなかった人物だ。
キングス・カレッジを卒業してすぐに特別研究員に選ばれ、「計算可能な数について、決定問題への応用とともに」というタイトルのコンピューター科学の礎石となる論文を書き上げる。
プリンストン大学でわずか十八カ月という通常の半分の博士号を取るとキングス・カレッジに復帰したが、そこではすでに戦争の影が忍び寄ってきていた。
プリンストン大学では英米の文化の違いになじめなかったり、師事していたチャーチとうまくいかなくなったことやフォン・ノイマンがアメリカに残るように勧めてくれたがケンブリッジにかえっていったことなどが語られる。
王冠をかけた恋で有名なエドワードの退位についても私見を述べて愛国心とセキュリティーの重要性を表明していたのが印象的だ。

第二次世界大戦中にブレッチリー・パークでエニグマの暗号解読をしていた話は有名だ。
ドイツのUボートによって物資が届かず困窮していたイギリスを救ったのがこのブレッチリーのメンバーだったが、このブレッチリーの雰囲気が伝わってきます。
ここでもチューリングは個性を発揮して、軍隊式の生活にはなじめなかったであろうことがうかがい知れる。
エニグマの構造やその解読方法は知っていたが、その後ドイツが使ったタニーの暗号や、技術屋だったフラワーズが作り上げたコロッサスについても詳しく書かれていた。
フラワーズのようにチューリングと意気投合して何でも意見を交わせる仲間もいたようです。
本来であれば胸につけきれないほどの勲章を贈られても不思議ではないほどの結果を出しながら、戦後もブレッチリーでの働きは秘密保持のためにすべてが闇に葬られた。

戦後にNPLでACEというプログラム内蔵式コンピューターの開発にかかわったが、ここでは人間関係がうまくいかなかったことが災いしたようだ。
マンチェスター大学に移ってからは初期のコンピューターソフトの開発をしながら人工知能の概念的な問題にも取り組み、あのチューリングテストを作り出す。
形態形成と数理生物学という分野にもかかわっていき、チューリングの方法をもとにした仮想のサンゴの成長が挿絵になっていました。
スキャンダラスな事件もあり不幸な亡くなり方をしたのかもしれないが、チューリングの閃きで作られた理論は今でも社会に受け継がれているのだろうと思った。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2029 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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