DBさん
レビュアー:
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街の灯と虚無感に浸る話
ポール・オースターの作品を読むの初めてだった。
ニューヨークを舞台にしたポストモダンな作風の作家だというくらいしか知らなかったので、新鮮な気持ちでページをめくっていく。
主人公はミステリー作家のクイン、妻子を失くして一人で暮らしている35歳の男だ。
ニューヨークの小さなアパートメントに住んで、野球を見たり美術館を巡ったり、そして長い散歩をする孤独な男。
社会との関わりが薄いクインの生活が数ページ読むだけで浮かんできます。
そこにかかってきたのは間違い電話だった。
かけてきたのはピーター・スティルマンという男で、ポール・オースターという男を探していた。
魔がさしたというべきか、自分ではない別の人間になりきるという設定に魅力を感じたのか。
クインはポール・オースターとなってスティルマンに会いに行った。
スティルマンが言うにはポール・オースターは探偵だという。
そして自分を虐待したために刑務所にいた父親が、出所して自分を殺しに来るのだと信じていた。
スティルマンの父親の後を追ってひたすらニューヨークの街を歩き続けるクインの姿が描かれる。
それまでも散歩はしていたが、そこに目的というものが存在することでまったく違ったものになっていた。
転機は自分が間違えられたポール・オースターに実際に会いに行ったことだろう。
だが彼も探偵などではなく、妻子を持ち満たされた生活をしている作家だった。
彼と会ってから、クインの現実はどんどん遠のいていく。
浮浪者のような姿になって、ひたすらスティルマンの家の前に立ち続ける男。
かつての面影もなく、街の誰からも存在を無視される。
赤いノートを残して消えたクインだが、それは失踪や死亡といった事件などではない。
ただ街の中に紛れて消えてしまっただけというかんじだ。
マンハッタンともなればいくつもの灯が輝き、人々がそれぞれの生活を送っている。
だがその中で存在が消えてしまったクインのような人間もいるのだろう。
読み始めはニューヨークで暮らしている男の詳細な現実を読んでいたはずなのに、徐々に絵の中にいるあのような不思議な世界へと引き込まれていく。
それもいつどこで舞台が変わっていくのか気づかぬままに。
事件を持ち込んだピーターが精神的に特殊な状況にいることも、その父親が天才と紙一重の存在であることも影響しているのかもしれない。
クインが自分の中から不必要なものをそぎ落としていって、最後に残ったものが赤いノートだったというようにも見える。
印象に残る作品でした。
ニューヨークを舞台にしたポストモダンな作風の作家だというくらいしか知らなかったので、新鮮な気持ちでページをめくっていく。
主人公はミステリー作家のクイン、妻子を失くして一人で暮らしている35歳の男だ。
ニューヨークの小さなアパートメントに住んで、野球を見たり美術館を巡ったり、そして長い散歩をする孤独な男。
社会との関わりが薄いクインの生活が数ページ読むだけで浮かんできます。
そこにかかってきたのは間違い電話だった。
かけてきたのはピーター・スティルマンという男で、ポール・オースターという男を探していた。
魔がさしたというべきか、自分ではない別の人間になりきるという設定に魅力を感じたのか。
クインはポール・オースターとなってスティルマンに会いに行った。
スティルマンが言うにはポール・オースターは探偵だという。
そして自分を虐待したために刑務所にいた父親が、出所して自分を殺しに来るのだと信じていた。
スティルマンの父親の後を追ってひたすらニューヨークの街を歩き続けるクインの姿が描かれる。
それまでも散歩はしていたが、そこに目的というものが存在することでまったく違ったものになっていた。
転機は自分が間違えられたポール・オースターに実際に会いに行ったことだろう。
だが彼も探偵などではなく、妻子を持ち満たされた生活をしている作家だった。
彼と会ってから、クインの現実はどんどん遠のいていく。
浮浪者のような姿になって、ひたすらスティルマンの家の前に立ち続ける男。
かつての面影もなく、街の誰からも存在を無視される。
赤いノートを残して消えたクインだが、それは失踪や死亡といった事件などではない。
ただ街の中に紛れて消えてしまっただけというかんじだ。
マンハッタンともなればいくつもの灯が輝き、人々がそれぞれの生活を送っている。
だがその中で存在が消えてしまったクインのような人間もいるのだろう。
読み始めはニューヨークで暮らしている男の詳細な現実を読んでいたはずなのに、徐々に絵の中にいるあのような不思議な世界へと引き込まれていく。
それもいつどこで舞台が変わっていくのか気づかぬままに。
事件を持ち込んだピーターが精神的に特殊な状況にいることも、その父親が天才と紙一重の存在であることも影響しているのかもしれない。
クインが自分の中から不必要なものをそぎ落としていって、最後に残ったものが赤いノートだったというようにも見える。
印象に残る作品でした。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:251
- ISBN:9784102451151
- 発売日:2013年08月28日
- 価格:546円
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