書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

はにぃさん
はにぃ
レビュアー:
「治験」は割のいいバイトである・・・とは聞いたことがあったが、それを職業とする人がいるとは!「プロ治験者」となった男のアブない記録。
「新薬開発のためにご協力いただけませんか?」
「ボランティアを募集しています。」
製薬会社のそんな新聞広告を何度か目にしたことがある。
しかし、本書「職業治験」の中に出てくる「治験」とは、新聞広告で大々的に募集するような最終段階の治験ではない。
動物実験を繰り返し初めてヒトに投与する段階、「第一相治験」と言われるいわば「人体実験」とも言うべき治験のことである。
参加者たちは、あくまで自分の意思で治験に参加するボランティアという立場なので、治験で得られる報酬は労働の対価としてではなく、時間拘束に対しての負担軽減費という形で支払われるのだという。

著者は、一部上場の会社を2ヶ月で退職しブラブラしていた頃、治験ボランティアに登録した。
その後、「20泊21日のボランティアを募集しています」という電話が掛かってきて、53万円という報酬に魅力を感じ応募する。
するとそこは、漫画本があふれ、ゲームやネットがし放題の楽園のような世界だった!
しかも震えが止まらないほど美味しい豪華な食事付き!
(ただし、投薬日に何度も行われる採血の痛さを我慢しなければならないが。)
そこで治験業界では有名な「教授」に出会い、楽して儲けることに目覚めた著者は、治験参加を繰り返し、職業として生計を立てる「プロ治験者」となったのだ。

そして著者は、C型肝炎のインターフェロン、認知症薬、麻酔薬、統合失調症の薬、サプリメント・・・と様々な新薬の治験に参加していく。
その中には、臨床試験受託事業協会に加盟していない病院で行われる劣悪な環境の「裏治験」、日本人を対象として海外で行われる至れり尽くせりの「海外治験」まで含まれていて、こんな世界があったのかと驚きながら読みすすめた。

治験に群がる男たちも、なかなか個性的だ。
コミュニケーション力が欠如した男、禁煙厳守の病院で隠れて喫煙する男、風呂場の壁や手すりに自慰行為の残骸をぶち撒ける男・・・
共通するのは、怠惰臭を撒き散らし、定職は持たないが被験者になりたいという熱い情熱は持っている男たちである。

楽をしながら稼げる夢のような生活だと憧れる若者も多いかもしれないが、参加できるのは20代~40代の健康な男性である。
いつまでもできる仕事ではないのである。
しかも著者の年収は約160万円だというのだから、贅沢できる金額ではない。

そして彼らは働き盛りの年代であり、このようなアングラ的世界に漂っているのはもったいないように思える。
でも、新薬開発のために彼らのような治験者が必要なわけで、私も彼らの恩恵を受けているわけで・・・
「新薬を創るための社会貢献などとは一切思っていません。楽がしたかったのです。」
という著者の言葉を聞くと、なんとも複雑な気持ちになってしまう。
そして、お節介ながら彼らの将来を心配してしまうのであった。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
はにぃ
はにぃ さん本が好き!1級(書評数:483 件)

趣味はダンスと読書と食べること。

こちらに復帰してから読書計画が破綻気味です。
図書館の本も、期限内に読めずに返すということが増えてきました。
積読本も減らず。
それなのに読みたい本はどんどん増えていく・・・(´-ω-`)

気が向いたときに出没します。
どうぞよろしくお願いします。

読んで楽しい:14票
素晴らしい洞察:2票
参考になる:19票
共感した:2票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. 風竜胆2014-01-29 07:32

    私の知らない世界が、こんなところにも・・・w

  2. 有坂汀2014-01-29 12:43

    たしかに、『懲りない面々』が多かったですね。

  3. はにぃ2014-01-29 22:28

    風竜胆さん 私もこんな世界があるんだと驚きました。
    世の中には色々な方がいるようです。

  4. はにぃ2014-01-29 22:30

    有坂汀さん まさに『懲りない面々』ですね。
    一度甘い蜜を吸ってしまうとなかなか抜け出せないのでしょうか。
    でも甘い蜜と言うにはリスクが大きすぎると思うのですが(^^;

  5. たけぞう2014-01-29 22:57

    やせる薬の被験者になりたいです。
    もしあったら、超競争倍率になりそうですね。。

  6. はにぃ2014-01-30 07:10

    多毛増様 もし、絶対に副作用のない薬なら。
    もし、服用するだけで努力せずに簡単に痩せるのなら。
    既に多くの実績があり、全員マイナス面なしで痩せたのなら。
    それならぜひ服用したいけど、最初に実験台になるのは怖い゚(゚´Д`゚)゚
    でも、中にはぜひ実験台になりますって方も多いんでしょうね。
    えっ!多毛増様も実験台に?
    おやめなさい。
    楽して痩せる方法はないのですよ。
    経験者より♡

  7. gs子2014-03-28 06:25

    友人でアルバイトがわりに治験を何度か経験した方がいます。
    治験できる健康な青年男性となると、そこそこ数が少ないらしく、お声がかかるとかかからなとかw

    アルバイト気分で参加してても、近くに患者がいるある病気の新薬の治験にあたった時は、とても感慨深そうでした。

  8. はにぃ2014-03-27 22:33

    gs子さん そのご友人、深みにはまらないといいのですが・・・
    宇宙関連の本で、筋力低下の実験として長期間ベッドに寝たままの状態で過ごす仕事のことを読んだことがあります。(食事も排泄も!)
    私は報酬が高くても遠慮したいですが(^^;

    この場をお借りしてご報告させていただきます。
    読書会「ホンノワ」の「連想ゲーム」で、gs子さんの「100年前の写真で見る 世界の民族衣装」を勝手に紹介させていただきました。
    http://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no179/index.html#com2th-7619

  9. gs子2014-03-28 06:43

    治験はともかく、筋力低下の実験は、リハビリが大変そうなので嫌ですw
    そして筋力低下よりも先に、床ずれしそうですね。

    ご紹介ありがとうございました。

  10. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『職業治験 治験で1000万円稼いだ男の病的な日々』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ