ぷるーとさん
レビュアー:
▼
美しいけれど、謎の多い物語。
岩波少年文庫100冊マラソン93冊目。
『銀河鉄道の夜』は、とても美しい、清涼感に溢れた物語だ。でも、よくよく読んでみると、何だか不思議な、謎の多い物語だと思う。
まず、ジョバンニの境遇だが、父親は遠くに猟か何かに行っていて帰宅が大幅に遅れているらしい。そのため、ジョバンニの家ではお金に困るようになり、ジョバンニは早朝と放課後働かざるをえず、眠さと疲労から学業がすっかりおろそかになってしまっている。クラスメイトのザネリから「ラッコの毛皮持って帰るぞ」とからかわれるのは、その仕事をうらやんでいるのか、さげすんでいるのか、「監獄に入れられた」という噂もあるということは、密猟まがいということだろうか。クラスメイトからいやな感じのからかわれ方をするジョバンニは、質屋の息子賢治の学校時代を映した姿なのかもしれない。
ジョバンニの銀河鉄道の夢は、予知夢だったのだろうか。その列車に乗ってきた青年と子どもたちはタイタニック号沈没事故で亡くなった人たちだと推測され、そのあたりから、この列車の行き先が何処かが分かってしまう。ただ、ジョバンニだけがどこまでも乗っていける無限乗車券を持っているのだが、それは、一周して生の世界に戻ってくるということなのだろうか。
一番不思議なのは、カムパネルラのお父さんがあまりにも簡単に息子の死を受け入れてしまっていることだ。「もうだめです。落ちてから四十五分たちましたから」なんて、川に落ちたこどもを心配する親の言葉とは思えない。そのあとジョバンニに、「あした放課後みんなでうちに遊びに来てくださいね」と言うのも、カムパネルラの死が彼の中ですでに既定概念となってしまっているように思える。もしかして、カムパネルラのお父さんにも、何か予兆のような知らせがあったのだろうか。
ジョバンニもカムパネルラの父親も、カムパネルラのことをとても大切に思っていたはずなのに、その死については、全く拘泥していない。それが、賢治の死生観・宗教観なのだろうか。
他に、「やまなし」「貝の火」「まめとこ山の熊」「オッペルとぞう」「カイロ団長」「雁の童子」
『銀河鉄道の夜』は、とても美しい、清涼感に溢れた物語だ。でも、よくよく読んでみると、何だか不思議な、謎の多い物語だと思う。
まず、ジョバンニの境遇だが、父親は遠くに猟か何かに行っていて帰宅が大幅に遅れているらしい。そのため、ジョバンニの家ではお金に困るようになり、ジョバンニは早朝と放課後働かざるをえず、眠さと疲労から学業がすっかりおろそかになってしまっている。クラスメイトのザネリから「ラッコの毛皮持って帰るぞ」とからかわれるのは、その仕事をうらやんでいるのか、さげすんでいるのか、「監獄に入れられた」という噂もあるということは、密猟まがいということだろうか。クラスメイトからいやな感じのからかわれ方をするジョバンニは、質屋の息子賢治の学校時代を映した姿なのかもしれない。
ジョバンニの銀河鉄道の夢は、予知夢だったのだろうか。その列車に乗ってきた青年と子どもたちはタイタニック号沈没事故で亡くなった人たちだと推測され、そのあたりから、この列車の行き先が何処かが分かってしまう。ただ、ジョバンニだけがどこまでも乗っていける無限乗車券を持っているのだが、それは、一周して生の世界に戻ってくるということなのだろうか。
一番不思議なのは、カムパネルラのお父さんがあまりにも簡単に息子の死を受け入れてしまっていることだ。「もうだめです。落ちてから四十五分たちましたから」なんて、川に落ちたこどもを心配する親の言葉とは思えない。そのあとジョバンニに、「あした放課後みんなでうちに遊びに来てくださいね」と言うのも、カムパネルラの死が彼の中ですでに既定概念となってしまっているように思える。もしかして、カムパネルラのお父さんにも、何か予兆のような知らせがあったのだろうか。
ジョバンニもカムパネルラの父親も、カムパネルラのことをとても大切に思っていたはずなのに、その死については、全く拘泥していない。それが、賢治の死生観・宗教観なのだろうか。
他に、「やまなし」「貝の火」「まめとこ山の熊」「オッペルとぞう」「カイロ団長」「雁の童子」
お気に入り度:





掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
よろしくお願いします。
この書評へのコメント

コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:岩波書店
- ページ数:233
- ISBN:9784001140125
- 発売日:2000年12月01日
- 価格:714円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。






















