rodolfo1さん
レビュアー:
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臨時教師の村内先生は、髪が薄くて肥満し、吃音症のきつい教師だった。生徒達は当初皆この先生を馬鹿にするが、彼のモットーは、寂しい生徒の常に一番近くに寄り添う事だった。。。
重松清作「青い鳥」を読みました。重松先生初のヒーローものです。
【ハンカチ】中学三年生の千葉知子は場面緘黙症に悩み、しゃべれなくて困る時はいつもポケットの中の古いハンカチを握りしめて耐えていました。そんな中、非常勤の村内先生に呼び出され、知子の日記を読んだと言われました。実は知子は、卒業式を欠席すると日記に書いたのでした。卒業式では担任が生徒一人一人の名前を読んで生徒が返事して一言スピーチする事になっており、知子はそれに耐えられなかったのでした。。。
村内先生は良く考えろと言い、学校は休むなと釘を刺しました。知子は返してもらった日記を読み返しました。村内先生は、自分は一生懸命生徒の名前を呼ぶ練習をし、しっかり名前を呼ぶから知子も返事をしてくれと書いて寄越し。。。知子の中学では5年前に虐めを苦にした生徒が自殺して以来、熱心に虐め対策に取り組んだのでした。しかしそもそも知子が画面緘黙症になったのは、知子が少しキツい事を言う子だったのを虐めと取られ、同級生全員に指弾されたからでした。
卒業式にそなえて同級生達は、一言スピーチの打ち合わせをし、知子にもスピーチに加われと言いましたが、その瞬間ハンカチを失くした事に気づいた知子はパニックに陥り。。。村内先生が美術室に隠れていた知子を見つけ。。。知子は思わず何故教師になったのかと初めて口に出して村内に尋ね、村内は自分を必要とする生徒の為だと言いました。知子はこの中学で自殺した生徒の事を知っているかと村内に尋ね、村内は驚くべき事を言いました。。。卒業式当日知子はついに。。。
【ひむりーる独唱】斎藤義男は久しぶりにクラスに戻って来ましたが、クラスのどこにも義男の居場所はありませんでした。もともと人と円滑にコミュニケーション出来なかった為にクラスで孤立していた義男でしたが、ある日、担任の熱血教師真田先生をナイフで刺して傷を負わせ、三ヵ月間の停学になったのでした。義男を待っていたのは新しい担任で臨時教師の村内先生でした。村内先生は吃音の為に同級生達から無視されていました。実は停学中義男は、転校して祖母の家で暮らす積りでしたが、義男は蛙を惨殺する事に夢中になり、祖母にそれを発見されて家に帰されたのでした。義男は何故自分が事件を起こしたのかよくわからず、誰にも説明出来ませんでした。
ある日義男は学校のビオトープに蛙がいる事に気づき、餌をやろうとパンを持って行きました。するとそこに村内先生が現れ、蛙に餌をやるとは優しい所があると言い、義男は思わず僕の事を聞いているかと尋ね、知っていると村内先生は言いました。そして村内先生は、蛙が好きなら草野心平という詩人の本が図書館にあると言い、その本には義男も居る、ひむりーるに会えると謎のような事を言って去りました。
彼の詩集を借りて読んだ義男は夢中になりました。ひむりーるとは。。。ひむりーるの事を質問した義男に村内先生は、わからない、詩はそれで良いのだと言って先生は2つの詩を暗唱しました。それは。。。真田先生は復帰し、村内先生は代わりに去りました。義男はついに。。。
【おまもり】須藤杏子は同級生の清水ちゃんを見舞いに訪れました。清水ちゃんは誰かの自転車に当て逃げされ、脚を骨折して入院していました。しかし清水ちゃんが言い募る犯人、という物言いに杏子は傷ついていました。実は杏子の父親は12年前に交通事故を起こして一人の女をひき殺し、以後ずっと被害者の墓参りを絶やさず、被害者の家族に謝罪し続けていたのでしたが、家族は決して父親の謝罪を受け入れなかったのでした。毎年落胆して帰宅する父親を見て家族はいたたまれず。。。
そこへ最近担任になった村内先生が現れ、2人は間近で聞いた先生の吃音に呆れました。。。やがて退院して来た清水ちゃんは自分がレギュラーの座を杏子に奪われた事に怒り、八つ当たりを始めました。見かねた杏子は日曜日の試合に出ないと宣言し、事故現場に貼り紙をし、被害者はあなたがそのまま逃げてしまった事にショックを受けている、名乗り出てくれと訴えました。本当はあなたとは違って、誠意をもって謝罪している人のために知らん顔して逃げるのは止めろと書きたかったのでした。村内先生はそれを杏子が貼るのを見ており。。。
村内先生は杏子が試合に出ない理由を尋ねましたが、杏子はとても大切な墓参りがあるのだと打ち明け。。。杏子達は今年初めて父親について被害者の墓参りに行きました。いつものように1人で受け取ってもらえない土産物を持って行った父親でしたが。。。実は杏子達が付いて行った経緯については村内先生が。。。
【青い鳥】園部真一達は罰を受けていました。罰を与えたのは村内先生でした。真一を中心としたクラスの殆どの生徒は同級生の野口を虐め、彼に毎日金品を要求し、ついに野口は自殺未遂をして不登校になったのでした。しかし真一達はへらへら笑いながら野口が物や金を持ってくるのは、本人が好きでしているくらいの軽い意識しか持っていませんでした。学校側も野口の机を片付け、虐めは無かった事にしようとしていましたが、村内先生は、忘れるなんて卑怯だと言い、野口の机と椅子を教室に戻し、朝は野口くんおはようと吃音で挨拶し、野口が登校しているかのようにプリントを配ってその机に置いたのでした。。。
野口の件以降、学校は虐め問題に取り組むとし、青い鳥ボックスを設置して虐め相談を始めました。しかしその箱にはそうした取り組みを揶揄するような投書がされ。。。しかし村内先生は、自分は本気の事しか喋らないからみんなも本気で聞いてくれ、自分がこの学校に来たのはみんなが本気の言葉がついにわからなかったからだと言い。。。思わず真一が、人を心の中でだけ嫌っているのは虐めじゃない、先生にも嫌いな人はいないのかと尋ねました。
すると村内先生は、君は間違っているが、本気で聞いたから自分も本気で答える、虐めはひとを踏みにじって苦しめている事に気づかずに、苦しんで叫んでいる事を聞こうといしない事だと言い切り、初めてそれに気づいた僕は泣き出し。。。村内先生は、野口は一生虐めの事を忘れない、君達も野口の事を忘れるな、それが責任だと言いました。村内先生は最後の授業の日、みんなが以前に書いた反省文をみんなに返し、書き直したいなら書き直せと言いました。皆は。。。
【静かな楽隊】中山聡美は小学校の同級生トロちゃんの事を思い出していました。発達障害を持つトロちゃんは授業中じっとしておられず、一人ではしゃいでいました。トロちゃんは聡美とは別の中学の特別学級に入りましたが、聡美はトロちゃんがこの中学に来なくて本当に良かったと思っていました。この中学は、聡美の小学校からの同級生あやちゃんによって牛耳られていました。あやちゃんは私学受験に失敗してこの中学に来ていましたが、美人で頭が良く、生徒や教師を巧みに言葉や行動で恫喝していました。
あやちゃんは何かといえば、教室に虐め対策の一環として貼ってあった、なんでも話そうなんでも聞こう、この中学のすべての先生はみんなの味方だ、とあったポスターを指して、先生の服従を求め、新しく来た吃音の非常勤講師村内先生にもなぜ吃音なのか?吃音なのに何故教師になったのか、なんでも答えてくれるのではないのかとその手を使おうとしましたが、村内先生はこんな事は嘘だと言ってそのポスターを外して持って帰りました。
実は小学生の頃、音楽会で合奏をする事になった時、聡美は緊張の余りどうしても合奏が出来ず、トロちゃんと共にクラスのお荷物扱いされていました。とうとう担任はトロちゃんと聡美に音が出ない楽器を渡し、聡美は音楽界を欠席しました。聡美は今でもそのカスタネットを持っていて。。。
あやちゃんは村内先生の授業中ずっと村内先生を攻撃し続けましたが、先生は少しも気にせず、吃音で授業を続けました。聡美は先生の吃音に会わせて密かにカスタネットを打ち、先生を応援していました。あやちゃんはついに村内先生の授業はわからないから辞めてくれと直談判しましたが、村内先生は、先生の仕事は生徒のそばにいることだ、生徒からの私はひとりぼっちですか?という質問に、先生がいるからひとりぼっちではないのだと答える事だと言い、ひとりぼっちではないから徒党を組んで誰かを虐める事はいらないのだと言いました。。。
【拝啓ねずみ大王さま】富田洋介は父親に自殺されました。父親はブラックな職場で心を病んだのでした。父親は死ぬ前に洋介に念願のハムスターを買ってくれ、洋介はハムスターにねずみ大王さまという名前を付けて可愛がりました。進学校から転校した先の中学はうんざりするほど退屈でした。しかも全員参加を強制されるムカデ競争をする事になりました。身体が大きくてスポーツ万能だった洋介は、クラスのリーダー古賀に頼りにされましたが、洋介には反感しかありませんでした。1月の駅伝大会のように脅迫電話で行事を潰そうと考えていました。
古賀は、ムカデ競争練習時間を取ろうとして、各教師に授業時間の融通を頼みましたが、新任の非常勤講師村内先生だけはそれに応じませんでした。古賀達は熱心に練習をさせ、洋介もしぶしぶ早朝練習に付き合いましたが、どうにも集中できず、古賀に嫌味を言われてとうとう離脱しました。父親の自殺後、すべての人間が嫌いになったのでした。洋介は、遺書を残さず自分達を置いて逝ってしまった父親は、自分達家族の事をどう思っていたのだろうと考え。。。
ふと洋介が教室に戻ると、村内先生だけが居ました。他の生徒達は勝手にまだ練習していたのでした。みんなは遅れて教室に戻り、村内先生は練習して来ていいと言い、みんなは練習に戻りました。洋介は村内先生と2人になり、気まずくなった洋介は練習に参加するふりをして体育館の座席で練習を眺めていました。すると村内先生が現れ、洋介はなぜ授業を止めたのかと先生に尋ねました。すると先生は驚くべき事を言い出し。。。みんなというものを嫌うのは洋介だけではなく、自分もそうだと言いました。。。
【進路は北へ】篠沢涼子は今年の年賀状を中学で教わったすべての先生に出しました。しかし村内先生からの返信には不思議な事が書いてありました。教室の黒板は東西南北どこにあるでしょうか?とあったのでした。涼子には村内先生がこの名門中学に何をしに来たのか全く分かりませんでした。特に先生の欠員は無かったのでした。しかも涼子のFellow teacherになったのでした。涼子はこの小学校から大学まで内部進学できる一貫校の内部生でした。しかし涼子は高校受験を望み、担任教師に詰問されていました。
涼子が内部進学を嫌うのは、中学から受験で編入して来た古川翔子を内部生が虐めて追い出したのを見たからでした。翔子は退学する際に内部生達をひとごろしと罵ったのでした。涼子はコンパスを買い、教室の黒板が西である事を村内先生に報告し、何故そんな事を聞いてきたのかと先生に尋ねました。先生は日本の学校の黒板がすべて西にある事とその理由を涼子に話し、涼子が修学旅行に際して書いた水族館のアナゴの作文は面白かったと言いました。それは。。。
涼子はある日、担任に呼び出されました。きっとまた嫌がらせをされるのだと思った涼子は思わず村内先生に同席を求め。。。しかし村内先生は、涼子が悩んでいる事はたいせつな事なのだ、自分はここにたいせつな事を教えに来たのだ、正しくなくてもたいせつな事はあるのだと涼子に言い。。。最後に村内先生は涼子を連れてある場所に行き。。。
【カッコウの卵】てっちゃんは智恵子と幸せに暮らしていましたが、ある日帰宅する途中で、元中学の担任だった村内先生がバスに乗っているのを見つけて興奮しました。実はてっちゃんは中学の時荒れていましたが、村内先生に大変世話になり、今でもそれを感謝していたのでした。てっちゃんは村内先生に智恵子を会わせたいと思い、村内先生が勤めているだろう中学を探しました。村内先生はてっちゃんの事をカッコウの卵だと言いました。てっちゃんも智恵子も、育児放棄されて施設で育ったのでした。
なんとかその中学を探し出し、生徒に村内先生はいるかと尋ねました。生徒は居ると答え、村内先生の悪口を言い出し、怒ったてっちゃんは生徒の胸倉を掴み、生徒は謝りました。てっちゃんは中学の校門で村内先生を待ち、不審者として教師に通報されました。村内先生に会いに来たのだと打ち明けると、教師は先に許可を取れと注意しましたが、先日胸倉を掴んだ生徒が、てっちゃんに殴られた、友達が証人だと言いつけ、教師はてっちゃんの会社と警察に通報すると脅した所に村内先生が現れ、てっちゃんだ、お前がやっていないと言うならやっていないのだろうと言い、てっちゃんは思わず男泣きしました。。。
教師は村内先生に、生徒が嘘を言ったと言うのかと詰め寄りましたが、村内先生は、生徒はみんな嘘をつく、それは寂しいからだ、教師が信じてやる事が必要なのだ、てっちゃんも中学の時はひとりぼっちで寂しい嘘ばかり必死でついていたのだと言い、思わず教師は沈黙し、目を落としました。。。てっちゃんは村内先生を家に呼び、智恵子の料理で歓待しました。智恵子はその席上で驚くべき事を言い、てっちゃんと村内先生は。。。
重松先生は教職を目指しておられたのでしたが、吃音症に悩み、ついに教職を諦められたそうです。先生の鬱憤を晴らすべく登場した本書のヒーローは髪が薄くて肥満し、吃音症のきつい先生でした。密かに悩みを抱える生徒達は当初皆この先生を馬鹿にしますが、他の教師達は彼にみな一目置いていました。そのヒーローのモットーは、寂しい生徒の常に一番近くに寄り添う事だったのでした。。。浪花節ですね。きれいごとばかりです。しかし浪花節は200年続き、浪曲と名を変えて今も楽しまれています。私も大変楽しみました。是非続編をお願いしたいと思いました。
【ハンカチ】中学三年生の千葉知子は場面緘黙症に悩み、しゃべれなくて困る時はいつもポケットの中の古いハンカチを握りしめて耐えていました。そんな中、非常勤の村内先生に呼び出され、知子の日記を読んだと言われました。実は知子は、卒業式を欠席すると日記に書いたのでした。卒業式では担任が生徒一人一人の名前を読んで生徒が返事して一言スピーチする事になっており、知子はそれに耐えられなかったのでした。。。
村内先生は良く考えろと言い、学校は休むなと釘を刺しました。知子は返してもらった日記を読み返しました。村内先生は、自分は一生懸命生徒の名前を呼ぶ練習をし、しっかり名前を呼ぶから知子も返事をしてくれと書いて寄越し。。。知子の中学では5年前に虐めを苦にした生徒が自殺して以来、熱心に虐め対策に取り組んだのでした。しかしそもそも知子が画面緘黙症になったのは、知子が少しキツい事を言う子だったのを虐めと取られ、同級生全員に指弾されたからでした。
卒業式にそなえて同級生達は、一言スピーチの打ち合わせをし、知子にもスピーチに加われと言いましたが、その瞬間ハンカチを失くした事に気づいた知子はパニックに陥り。。。村内先生が美術室に隠れていた知子を見つけ。。。知子は思わず何故教師になったのかと初めて口に出して村内に尋ね、村内は自分を必要とする生徒の為だと言いました。知子はこの中学で自殺した生徒の事を知っているかと村内に尋ね、村内は驚くべき事を言いました。。。卒業式当日知子はついに。。。
【ひむりーる独唱】斎藤義男は久しぶりにクラスに戻って来ましたが、クラスのどこにも義男の居場所はありませんでした。もともと人と円滑にコミュニケーション出来なかった為にクラスで孤立していた義男でしたが、ある日、担任の熱血教師真田先生をナイフで刺して傷を負わせ、三ヵ月間の停学になったのでした。義男を待っていたのは新しい担任で臨時教師の村内先生でした。村内先生は吃音の為に同級生達から無視されていました。実は停学中義男は、転校して祖母の家で暮らす積りでしたが、義男は蛙を惨殺する事に夢中になり、祖母にそれを発見されて家に帰されたのでした。義男は何故自分が事件を起こしたのかよくわからず、誰にも説明出来ませんでした。
ある日義男は学校のビオトープに蛙がいる事に気づき、餌をやろうとパンを持って行きました。するとそこに村内先生が現れ、蛙に餌をやるとは優しい所があると言い、義男は思わず僕の事を聞いているかと尋ね、知っていると村内先生は言いました。そして村内先生は、蛙が好きなら草野心平という詩人の本が図書館にあると言い、その本には義男も居る、ひむりーるに会えると謎のような事を言って去りました。
彼の詩集を借りて読んだ義男は夢中になりました。ひむりーるとは。。。ひむりーるの事を質問した義男に村内先生は、わからない、詩はそれで良いのだと言って先生は2つの詩を暗唱しました。それは。。。真田先生は復帰し、村内先生は代わりに去りました。義男はついに。。。
【おまもり】須藤杏子は同級生の清水ちゃんを見舞いに訪れました。清水ちゃんは誰かの自転車に当て逃げされ、脚を骨折して入院していました。しかし清水ちゃんが言い募る犯人、という物言いに杏子は傷ついていました。実は杏子の父親は12年前に交通事故を起こして一人の女をひき殺し、以後ずっと被害者の墓参りを絶やさず、被害者の家族に謝罪し続けていたのでしたが、家族は決して父親の謝罪を受け入れなかったのでした。毎年落胆して帰宅する父親を見て家族はいたたまれず。。。
そこへ最近担任になった村内先生が現れ、2人は間近で聞いた先生の吃音に呆れました。。。やがて退院して来た清水ちゃんは自分がレギュラーの座を杏子に奪われた事に怒り、八つ当たりを始めました。見かねた杏子は日曜日の試合に出ないと宣言し、事故現場に貼り紙をし、被害者はあなたがそのまま逃げてしまった事にショックを受けている、名乗り出てくれと訴えました。本当はあなたとは違って、誠意をもって謝罪している人のために知らん顔して逃げるのは止めろと書きたかったのでした。村内先生はそれを杏子が貼るのを見ており。。。
村内先生は杏子が試合に出ない理由を尋ねましたが、杏子はとても大切な墓参りがあるのだと打ち明け。。。杏子達は今年初めて父親について被害者の墓参りに行きました。いつものように1人で受け取ってもらえない土産物を持って行った父親でしたが。。。実は杏子達が付いて行った経緯については村内先生が。。。
【青い鳥】園部真一達は罰を受けていました。罰を与えたのは村内先生でした。真一を中心としたクラスの殆どの生徒は同級生の野口を虐め、彼に毎日金品を要求し、ついに野口は自殺未遂をして不登校になったのでした。しかし真一達はへらへら笑いながら野口が物や金を持ってくるのは、本人が好きでしているくらいの軽い意識しか持っていませんでした。学校側も野口の机を片付け、虐めは無かった事にしようとしていましたが、村内先生は、忘れるなんて卑怯だと言い、野口の机と椅子を教室に戻し、朝は野口くんおはようと吃音で挨拶し、野口が登校しているかのようにプリントを配ってその机に置いたのでした。。。
野口の件以降、学校は虐め問題に取り組むとし、青い鳥ボックスを設置して虐め相談を始めました。しかしその箱にはそうした取り組みを揶揄するような投書がされ。。。しかし村内先生は、自分は本気の事しか喋らないからみんなも本気で聞いてくれ、自分がこの学校に来たのはみんなが本気の言葉がついにわからなかったからだと言い。。。思わず真一が、人を心の中でだけ嫌っているのは虐めじゃない、先生にも嫌いな人はいないのかと尋ねました。
すると村内先生は、君は間違っているが、本気で聞いたから自分も本気で答える、虐めはひとを踏みにじって苦しめている事に気づかずに、苦しんで叫んでいる事を聞こうといしない事だと言い切り、初めてそれに気づいた僕は泣き出し。。。村内先生は、野口は一生虐めの事を忘れない、君達も野口の事を忘れるな、それが責任だと言いました。村内先生は最後の授業の日、みんなが以前に書いた反省文をみんなに返し、書き直したいなら書き直せと言いました。皆は。。。
【静かな楽隊】中山聡美は小学校の同級生トロちゃんの事を思い出していました。発達障害を持つトロちゃんは授業中じっとしておられず、一人ではしゃいでいました。トロちゃんは聡美とは別の中学の特別学級に入りましたが、聡美はトロちゃんがこの中学に来なくて本当に良かったと思っていました。この中学は、聡美の小学校からの同級生あやちゃんによって牛耳られていました。あやちゃんは私学受験に失敗してこの中学に来ていましたが、美人で頭が良く、生徒や教師を巧みに言葉や行動で恫喝していました。
あやちゃんは何かといえば、教室に虐め対策の一環として貼ってあった、なんでも話そうなんでも聞こう、この中学のすべての先生はみんなの味方だ、とあったポスターを指して、先生の服従を求め、新しく来た吃音の非常勤講師村内先生にもなぜ吃音なのか?吃音なのに何故教師になったのか、なんでも答えてくれるのではないのかとその手を使おうとしましたが、村内先生はこんな事は嘘だと言ってそのポスターを外して持って帰りました。
実は小学生の頃、音楽会で合奏をする事になった時、聡美は緊張の余りどうしても合奏が出来ず、トロちゃんと共にクラスのお荷物扱いされていました。とうとう担任はトロちゃんと聡美に音が出ない楽器を渡し、聡美は音楽界を欠席しました。聡美は今でもそのカスタネットを持っていて。。。
あやちゃんは村内先生の授業中ずっと村内先生を攻撃し続けましたが、先生は少しも気にせず、吃音で授業を続けました。聡美は先生の吃音に会わせて密かにカスタネットを打ち、先生を応援していました。あやちゃんはついに村内先生の授業はわからないから辞めてくれと直談判しましたが、村内先生は、先生の仕事は生徒のそばにいることだ、生徒からの私はひとりぼっちですか?という質問に、先生がいるからひとりぼっちではないのだと答える事だと言い、ひとりぼっちではないから徒党を組んで誰かを虐める事はいらないのだと言いました。。。
【拝啓ねずみ大王さま】富田洋介は父親に自殺されました。父親はブラックな職場で心を病んだのでした。父親は死ぬ前に洋介に念願のハムスターを買ってくれ、洋介はハムスターにねずみ大王さまという名前を付けて可愛がりました。進学校から転校した先の中学はうんざりするほど退屈でした。しかも全員参加を強制されるムカデ競争をする事になりました。身体が大きくてスポーツ万能だった洋介は、クラスのリーダー古賀に頼りにされましたが、洋介には反感しかありませんでした。1月の駅伝大会のように脅迫電話で行事を潰そうと考えていました。
古賀は、ムカデ競争練習時間を取ろうとして、各教師に授業時間の融通を頼みましたが、新任の非常勤講師村内先生だけはそれに応じませんでした。古賀達は熱心に練習をさせ、洋介もしぶしぶ早朝練習に付き合いましたが、どうにも集中できず、古賀に嫌味を言われてとうとう離脱しました。父親の自殺後、すべての人間が嫌いになったのでした。洋介は、遺書を残さず自分達を置いて逝ってしまった父親は、自分達家族の事をどう思っていたのだろうと考え。。。
ふと洋介が教室に戻ると、村内先生だけが居ました。他の生徒達は勝手にまだ練習していたのでした。みんなは遅れて教室に戻り、村内先生は練習して来ていいと言い、みんなは練習に戻りました。洋介は村内先生と2人になり、気まずくなった洋介は練習に参加するふりをして体育館の座席で練習を眺めていました。すると村内先生が現れ、洋介はなぜ授業を止めたのかと先生に尋ねました。すると先生は驚くべき事を言い出し。。。みんなというものを嫌うのは洋介だけではなく、自分もそうだと言いました。。。
【進路は北へ】篠沢涼子は今年の年賀状を中学で教わったすべての先生に出しました。しかし村内先生からの返信には不思議な事が書いてありました。教室の黒板は東西南北どこにあるでしょうか?とあったのでした。涼子には村内先生がこの名門中学に何をしに来たのか全く分かりませんでした。特に先生の欠員は無かったのでした。しかも涼子のFellow teacherになったのでした。涼子はこの小学校から大学まで内部進学できる一貫校の内部生でした。しかし涼子は高校受験を望み、担任教師に詰問されていました。
涼子が内部進学を嫌うのは、中学から受験で編入して来た古川翔子を内部生が虐めて追い出したのを見たからでした。翔子は退学する際に内部生達をひとごろしと罵ったのでした。涼子はコンパスを買い、教室の黒板が西である事を村内先生に報告し、何故そんな事を聞いてきたのかと先生に尋ねました。先生は日本の学校の黒板がすべて西にある事とその理由を涼子に話し、涼子が修学旅行に際して書いた水族館のアナゴの作文は面白かったと言いました。それは。。。
涼子はある日、担任に呼び出されました。きっとまた嫌がらせをされるのだと思った涼子は思わず村内先生に同席を求め。。。しかし村内先生は、涼子が悩んでいる事はたいせつな事なのだ、自分はここにたいせつな事を教えに来たのだ、正しくなくてもたいせつな事はあるのだと涼子に言い。。。最後に村内先生は涼子を連れてある場所に行き。。。
【カッコウの卵】てっちゃんは智恵子と幸せに暮らしていましたが、ある日帰宅する途中で、元中学の担任だった村内先生がバスに乗っているのを見つけて興奮しました。実はてっちゃんは中学の時荒れていましたが、村内先生に大変世話になり、今でもそれを感謝していたのでした。てっちゃんは村内先生に智恵子を会わせたいと思い、村内先生が勤めているだろう中学を探しました。村内先生はてっちゃんの事をカッコウの卵だと言いました。てっちゃんも智恵子も、育児放棄されて施設で育ったのでした。
なんとかその中学を探し出し、生徒に村内先生はいるかと尋ねました。生徒は居ると答え、村内先生の悪口を言い出し、怒ったてっちゃんは生徒の胸倉を掴み、生徒は謝りました。てっちゃんは中学の校門で村内先生を待ち、不審者として教師に通報されました。村内先生に会いに来たのだと打ち明けると、教師は先に許可を取れと注意しましたが、先日胸倉を掴んだ生徒が、てっちゃんに殴られた、友達が証人だと言いつけ、教師はてっちゃんの会社と警察に通報すると脅した所に村内先生が現れ、てっちゃんだ、お前がやっていないと言うならやっていないのだろうと言い、てっちゃんは思わず男泣きしました。。。
教師は村内先生に、生徒が嘘を言ったと言うのかと詰め寄りましたが、村内先生は、生徒はみんな嘘をつく、それは寂しいからだ、教師が信じてやる事が必要なのだ、てっちゃんも中学の時はひとりぼっちで寂しい嘘ばかり必死でついていたのだと言い、思わず教師は沈黙し、目を落としました。。。てっちゃんは村内先生を家に呼び、智恵子の料理で歓待しました。智恵子はその席上で驚くべき事を言い、てっちゃんと村内先生は。。。
重松先生は教職を目指しておられたのでしたが、吃音症に悩み、ついに教職を諦められたそうです。先生の鬱憤を晴らすべく登場した本書のヒーローは髪が薄くて肥満し、吃音症のきつい先生でした。密かに悩みを抱える生徒達は当初皆この先生を馬鹿にしますが、他の教師達は彼にみな一目置いていました。そのヒーローのモットーは、寂しい生徒の常に一番近くに寄り添う事だったのでした。。。浪花節ですね。きれいごとばかりです。しかし浪花節は200年続き、浪曲と名を変えて今も楽しまれています。私も大変楽しみました。是非続編をお願いしたいと思いました。
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こんにちは。ブクレコ難民です。今後はこちらでよろしくお願いいたします。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:437
- ISBN:9784101349268
- 発売日:2010年06月29日
- 価格:662円
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