風竜胆さん
レビュアー:
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さあ、今日からあなたも混浴生活。 Let's begin!
「混浴」、この言葉にあこがれる男子諸君も多いと思う。今ではあまり見られなくなったこの習慣も、かっての日本では、当たり前の風景だった。例えば、伊豆湯ヶ島温泉。この温泉を舞台として、川端康成の「伊豆の踊子」、井上靖の「しろばんば」、田山花袋の「温泉めぐり」といった作品に、混浴風景が描かれているという。そう、「混浴」とは庶民の楽しみであり、日本の伝統文化でもあったのだ。
なにしろ混浴の記録は、721年(養老5)も成立した「常陸国風土記」まで遡れるという。また、「出雲国風土記」にも2か所ばかり混浴に関する記載があるようだ。このような太古の昔から延々と続いてきた習慣を、伝統文化と言わずに何と呼べばよいのだろうか。
当時混浴は温泉での「湯あみ」だけではなかった。川などで水浴びを行う「川あみ」もあり、そこでは「歌垣」といって、男女がいっしょに飲食をし、歌を交わしながら、気の合った相手と男女の関係を結んでいたのだ。かっての日本人は、性に関しても、とてもおおらかな民族だったのである。
この伝統文化が現在のように壊滅的になったのには、庶民の楽しみは何でも規制したがるお上と、自分たちの価値観を押し付けたがる西洋人たちの影響が大きい。徳川鎖国体制が終わり、日本に来た西洋人がびっくらこいたのは、混浴の習慣だという。キリスト教的価値観に染まっていた彼らの目には、この日本の伝統は、このうえなくみだらに映ったようだ。明治政府も、1868年(慶応4)には、東京・築地を外国人に開放するため、付近の銭湯の混浴を禁止し、この動きは、横浜や大阪にも広がった。そして、1872年(明治5)には、混浴は軽犯罪として取り締まられるようになったのだ。軽犯罪と言っても、その取り締まりは容赦がなかったようである。もっとも、お上が、庶民の楽しみを禁止するのは、これに限ったことではない。797年(延暦16)には、藤原園人により、日本初の混浴禁止令が出され、江戸時代においても、老中松平定信により、1791年(寛政3)に入り込み湯(混浴)が禁止されたという。
このように混浴の歴史とは、権力者と庶民の闘いの歴史でもあったのだ。著者は言う。
「混浴」というテーマで、ここまで風呂敷を広げられるというのはすごい(笑)。しかし、このような切り口で歴史を見るという視点は、なかなか新鮮で面白い。
本書は、2013年の発行だが、著者が取材した温泉関係者から「全国では100を超える混浴温泉があるはず」との証言があったという。ネットで検索してみると、「スッチーの混浴露天風呂体験記」というサイトを見つけた。確かに、まだまだ多く残っているようだ。興味ある方は、混浴を旅のテーマのひとつにしてはどうだろうか。ただ、運よく?混浴体験ができたとしても、人生の大先輩のような方といっしょになる確率が非常に高いだろうことは、想像に難くないが。
なにしろ混浴の記録は、721年(養老5)も成立した「常陸国風土記」まで遡れるという。また、「出雲国風土記」にも2か所ばかり混浴に関する記載があるようだ。このような太古の昔から延々と続いてきた習慣を、伝統文化と言わずに何と呼べばよいのだろうか。
当時混浴は温泉での「湯あみ」だけではなかった。川などで水浴びを行う「川あみ」もあり、そこでは「歌垣」といって、男女がいっしょに飲食をし、歌を交わしながら、気の合った相手と男女の関係を結んでいたのだ。かっての日本人は、性に関しても、とてもおおらかな民族だったのである。
この伝統文化が現在のように壊滅的になったのには、庶民の楽しみは何でも規制したがるお上と、自分たちの価値観を押し付けたがる西洋人たちの影響が大きい。徳川鎖国体制が終わり、日本に来た西洋人がびっくらこいたのは、混浴の習慣だという。キリスト教的価値観に染まっていた彼らの目には、この日本の伝統は、このうえなくみだらに映ったようだ。明治政府も、1868年(慶応4)には、東京・築地を外国人に開放するため、付近の銭湯の混浴を禁止し、この動きは、横浜や大阪にも広がった。そして、1872年(明治5)には、混浴は軽犯罪として取り締まられるようになったのだ。軽犯罪と言っても、その取り締まりは容赦がなかったようである。もっとも、お上が、庶民の楽しみを禁止するのは、これに限ったことではない。797年(延暦16)には、藤原園人により、日本初の混浴禁止令が出され、江戸時代においても、老中松平定信により、1791年(寛政3)に入り込み湯(混浴)が禁止されたという。
このように混浴の歴史とは、権力者と庶民の闘いの歴史でもあったのだ。著者は言う。
「混浴に対する国家の烙印と、「どこが?」という庶民の反発には埋めがたい溝があるのだ。その溝の深さは「国とは何か?」という疑問を抱かせるのに十分である。
本書で筆者が目指しているのはこの対立を復元し、それを通して見えてくるこの国の形をもう一度確認したいということである」
「混浴」というテーマで、ここまで風呂敷を広げられるというのはすごい(笑)。しかし、このような切り口で歴史を見るという視点は、なかなか新鮮で面白い。
本書は、2013年の発行だが、著者が取材した温泉関係者から「全国では100を超える混浴温泉があるはず」との証言があったという。ネットで検索してみると、「スッチーの混浴露天風呂体験記」というサイトを見つけた。確かに、まだまだ多く残っているようだ。興味ある方は、混浴を旅のテーマのひとつにしてはどうだろうか。ただ、運よく?混浴体験ができたとしても、人生の大先輩のような方といっしょになる確率が非常に高いだろうことは、想像に難くないが。
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昨年は2月に腎盂炎、6月に全身発疹と散々な1年でした。幸いどちらも、現在は完治しておりますが、皆様も健康にはお気をつけください。
この書評へのコメント
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- 2017-08-18 20:45
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(コメントは消去されました。)
クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - はにぃ2015-07-06 22:58
風竜胆さま、いやこれは旦さまかな?
ありがとうございます♫
先日、共同露天風呂で風紀が乱れ閉鎖に追い込まれるというニュースを見ました。
http://www.sankei.com/region/news/150601/rgn1506010011-n1.html
AV撮影や乱交パーティーの場と化し、使用済みのアレやコレやが散乱していたとか…
条件付きで再開されるようですが、のどかだった地域の憩いの場がこうなってしまうのは悲しいですね。
そして、風竜胆さん、ちょわさん、色々とありがとうございます。
家で入浴したあとも首の調子は良くなるので(血流が良くなるからだと思います)、温泉ならなお良さそうですね!
でも、混浴は(^-^;
ちょわさん勇気あるなぁ。
また、時々顔出しますので「ヘンな本」関係よろしくお願いしますヽ(≧∇≦ )~クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 コメントするには、ログインしてください。
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- 出版社:筑摩書房
- ページ数:224
- ISBN:9784480858047
- 発売日:2013年07月24日
- 価格:1995円
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