あかつきさん
レビュアー:
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たまにはメジャー作品をレビューしてみる。
難しいな、ご存知本のレビューって奴は。
伊坂幸太郎は何冊か読んでいるが、手元に残っているには「重力ピエロ」だけだ。
あの本を私に勧めてくれたのは、20代前半当時ちょいと色っぽい関係だった男友達で、そいつは言うにことかいて「これ、おれの話なんだ」と宣って自分の写真を挟んで私に本を押し付けた。
受け取った当時も(イタいこと言うなぁ…)と思ったが、今、当時の若気の至りを差し引いてみてもやはりイタい。
そんな奴も今はどっかでおっさんになっているのだろう。
因みに、読み終わった後に返そうとしたが、頑として受け取ってくれなかったので今も持っている(写真も)。
多分、彼はハルに自己を投影していたんだろう。
そいつもハルに劣らないきれいな姿をした男で、兄貴が大好きで、潔癖で、人の定めた善悪の垣根をひょいと長い足で飛び越えてしまう、それでいてそれが爽快に、そして哀しげに見える男だった。
唯一異なっていたのは、性を憎んでいなかったことか。
さて、この「オー!ファーザー!」は伊坂幸太郎の作品で言えば、第一期の集大成になる物語だそう。
飄々とした主人公、彼らを取り巻く意味ありそうで意味なさそうな人々、交わされる多重的な意味が含められた会話、多重的な出来事。
一つのエピソードが次のエピソードを呼び、忘れていた頃に以前のエピソードが伏線として生きてくる。
この物語に可笑しみを加えているのは、主人公・由紀夫の4人の父である。
皆が皆、愛すべきしょうもないところもある男たちで、お年頃の少年には一人の父親でさえ疎ましいだろうに、4人もいるなんて哀切の極みだ。
最後までその姿を表さないながら絶大な存在感を誇る由紀夫の母、ストーカー気味のうざい(それでいて、最終的には役に立つ)同級生の女子、わけのわからぬ事件に巻き込まれる友人たちなど、第一期の他の作品にもあったモティーフが散りばめられ、好きな人には堪らず、そうでない人には材料と製法は同じでトッピングが違う新製品を味合わされている感じであろうか。
あ、でも一期の作品によく認められた、他の作品とのコラボレーションシーンはなかったな。気づかなかっただけかもしれないが。
面白いし楽しい、このパターンは嫌いじゃない。
涙ぐましい可愛い親父たちの活躍はカタルシスが得られる。
でも、心に「読んで良かった」という余韻が残らない。
巧く纏められた、ちょっと上級なファーストフードを食べたような、そんな感じ。
@私信
提督、「エローナ」、まつごえた「イローナ」入手しました。
あの本を私に勧めてくれたのは、20代前半当時ちょいと色っぽい関係だった男友達で、そいつは言うにことかいて「これ、おれの話なんだ」と宣って自分の写真を挟んで私に本を押し付けた。
受け取った当時も(イタいこと言うなぁ…)と思ったが、今、当時の若気の至りを差し引いてみてもやはりイタい。
そんな奴も今はどっかでおっさんになっているのだろう。
因みに、読み終わった後に返そうとしたが、頑として受け取ってくれなかったので今も持っている(写真も)。
多分、彼はハルに自己を投影していたんだろう。
そいつもハルに劣らないきれいな姿をした男で、兄貴が大好きで、潔癖で、人の定めた善悪の垣根をひょいと長い足で飛び越えてしまう、それでいてそれが爽快に、そして哀しげに見える男だった。
唯一異なっていたのは、性を憎んでいなかったことか。
さて、この「オー!ファーザー!」は伊坂幸太郎の作品で言えば、第一期の集大成になる物語だそう。
飄々とした主人公、彼らを取り巻く意味ありそうで意味なさそうな人々、交わされる多重的な意味が含められた会話、多重的な出来事。
一つのエピソードが次のエピソードを呼び、忘れていた頃に以前のエピソードが伏線として生きてくる。
この物語に可笑しみを加えているのは、主人公・由紀夫の4人の父である。
皆が皆、愛すべきしょうもないところもある男たちで、お年頃の少年には一人の父親でさえ疎ましいだろうに、4人もいるなんて哀切の極みだ。
最後までその姿を表さないながら絶大な存在感を誇る由紀夫の母、ストーカー気味のうざい(それでいて、最終的には役に立つ)同級生の女子、わけのわからぬ事件に巻き込まれる友人たちなど、第一期の他の作品にもあったモティーフが散りばめられ、好きな人には堪らず、そうでない人には材料と製法は同じでトッピングが違う新製品を味合わされている感じであろうか。
あ、でも一期の作品によく認められた、他の作品とのコラボレーションシーンはなかったな。気づかなかっただけかもしれないが。
面白いし楽しい、このパターンは嫌いじゃない。
涙ぐましい可愛い親父たちの活躍はカタルシスが得られる。
でも、心に「読んで良かった」という余韻が残らない。
巧く纏められた、ちょっと上級なファーストフードを食べたような、そんな感じ。
@私信
提督、「エローナ」、まつごえた「イローナ」入手しました。
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色々世界がひっくり返って読書との距離を測り中.往きて還るかは神の味噌汁.「セミンゴの会」会員No1214.別名焼き粉とも.読書は背徳の蜜の味.毒を喰らわば根元まで.
この書評へのコメント
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- 出版社:新潮社
- ページ数:557
- ISBN:9784101250274
- 発売日:2013年06月26日
- 価格:788円
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