ぱせりさん
レビュアー:
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大海の真ん中、船の上で。

18世紀末、商船から英国軍艦に強制徴用された若き水兵ビリー・バッドは、持ち前の無邪気な善良さで、仲間たちの人気者になる。
ところが、彼は、ひとりの上官の悪意から、反乱の首謀者として嘘の告発をされる。驚いた彼は、勢いで上官を殴ってしまうが、当たりどころが悪く、殺してしまい、結果、ビリーは、死刑を言い渡されることになるのだ。
新聞は、後に風評をもとに事件を脚色し、ビリーはステレオタイプの悪者になる。
だけど、本来、非情な悲劇、と思われるすべてが、ひとつもビリー自身を損なっていないことに驚かされる。
死を前にした彼は、死に対して、教誨の牧師さんが予想していたような「恐怖」は、感じていなかった。
彼は、無邪気な蛮人であったという。
そういえば、最初のほうに、ビリーはセントバーナード犬程度の自我しか持ち合わせていなかった、という言葉もあった。
ビリーを死なせることに対する、いたたまれない思いは、たぶん、人の法の外で生きてきた無邪気な、一種の不思議な生き物を人の法で裁こうとすることが、無茶だと感じるからなのだろう。
ビリーを類まれな、と思うのは、人の社会のがんじがらめの法の下に生きる私たちにとって、ビリーがそこから完全に精神的に解き放たれた存在だと思えるからだ。
死さえも、彼という人間を損なうことが出来なかったって。
ところが、彼は、ひとりの上官の悪意から、反乱の首謀者として嘘の告発をされる。驚いた彼は、勢いで上官を殴ってしまうが、当たりどころが悪く、殺してしまい、結果、ビリーは、死刑を言い渡されることになるのだ。
新聞は、後に風評をもとに事件を脚色し、ビリーはステレオタイプの悪者になる。
だけど、本来、非情な悲劇、と思われるすべてが、ひとつもビリー自身を損なっていないことに驚かされる。
死を前にした彼は、死に対して、教誨の牧師さんが予想していたような「恐怖」は、感じていなかった。
彼は、無邪気な蛮人であったという。
そういえば、最初のほうに、ビリーはセントバーナード犬程度の自我しか持ち合わせていなかった、という言葉もあった。
ビリーを死なせることに対する、いたたまれない思いは、たぶん、人の法の外で生きてきた無邪気な、一種の不思議な生き物を人の法で裁こうとすることが、無茶だと感じるからなのだろう。
ビリーを類まれな、と思うのは、人の社会のがんじがらめの法の下に生きる私たちにとって、ビリーがそこから完全に精神的に解き放たれた存在だと思えるからだ。
死さえも、彼という人間を損なうことが出来なかったって。
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いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。
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- 出版社:光文社
- ページ数:215
- ISBN:9784334752637
- 発売日:2012年12月06日
- 価格:920円
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