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たけぞう
レビュアー:
飛ぶ。風をつかまえて飛ぶ。心はどこにある?
「掲示板:秋だ!旅だ!紅葉だ!」 参加書評です。

自然を題材に、自分の思いをのせて書くエッセーをネイチャーライティングと呼ぶらしい。梨木さんのネイチャーライティング第二弾。
第一弾は、「水辺にて」。湖のさざ波のひとつひとつにカヤックという魔法の道具でわけ入るように、自然の仲間入りをする作品だった。
渡りの足跡は、双眼鏡やスコープを使い、オオワシを、山や海の鳥の仲間たちを追い続け、心ごと融け込もうとするエッセーだった。
日本に冬鳥として渡ってくる鳥たちの多くは、シベリア、カムチャツカ、サハリン、或いはアムール川流域等を繁殖地として使っている。
<中略>
ここ数十年程の森林面積のすさまじい減少が、あるいは使用されている農薬が、最近夏山で彼らの囀りが聞こえなくなった原因ではないかと言っている学者もいる。

世界は一つであり、繋がっているのだという紛れもない事実に圧倒されそうになる。

梨木さんの語る世界とは、人間も、鳥も海も山も森も、生命のあるものすべてを指している。人間はその一部である。自らの存在と世界のつながりという事実をとらえようとする視界が感じられる言葉である。
ああ、まったくもう梨木さんだよななんて、妙に知ったかぶりをしたくなる一文。

オオワシを追って、諏訪湖、福島潟、斜里の町と知床、カムチャツカ。
日常の出来事なども織り交ぜながら書かれているけれど、
その日常から鳥たちの世界へと向かう一篇一篇は、
渡りの足跡を追って旅する人そのものであるし、
異世界の扉を順番に開けているようでもある。

最終章は文庫本オリジナルだ。
四年ぶりに訪れた知床。鉛色のオホーツク海を眼下にしながら、能取湖の向こうを見やる。オオワシが三羽。
場所を変え、斜里町のバードウオッチャーのカフェに寄ったりしながら、
ついに、グルと出会った。むかし諏訪湖で見かけたオオワシ。
死にそうになっていたのを案内人に助けられた一羽。
そんな偶然がと逡巡するさまは、旅に欠かせない運命という言葉を運んで、最終章の余韻となった。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1462 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
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この書評へのコメント

  1. たけぞう2014-11-02 01:29

    渡り鳥を追いかけていくこの作品は、ひょっとしてあの人も関係しているのではないかと想像がたくましくなってしまう一冊であった。

  2. かもめ通信2014-11-02 08:08

    え?この本、そんなにご当地ネタ満載の本だったのですか?
    これは早速買い求めなければ~!(いや、買うだけでなく読めよ!>自分)

  3. たけぞう2014-11-02 08:21

    >かもめ通信さん
    あっ、グルだっ(んなわけないか

  4. No Image

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