三太郎さん
レビュアー:
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最終章で一気に「繭美」のキャラクターが爆発する‼
伊坂幸太郎の作品を何かもう一つ読んでみようかと思って、最初に目についたこの本を手に取りました。この小説は6章からなりますが、5章までは連続した短編集の様です。各短編は時系列でならんでいて、主要な登場人物も同じです。
それは30歳になったばかりの星野一彦と、彼の婚約者?の金髪でハーフの繭美の二人です。そして3番目の登場人物は星野の恋人で、彼はこれから順番に今でも付き合っている5人の恋人に順々に別れを告げるために、繭美と一緒に彼女らの部屋を訪れることになります。
これは太宰治の「グッド・バイ」へのオマージュ作品として企画されたとか。僕は太宰を読まないので果たしてその目論見は果されたのかどうか分かりませんが。
一編ずつ独立した話ではありますが、読み進むと次第になぜ星野が繭美を伴って5人の恋人に別れ話をすることになったのか判ってきます。どうも星野は返せないほどの借金を作り、さらに裏社会のある人物の怒りをかってしまったらしい。そこで恋人に別れを告げたらバスに乗せられてどこかに連れ去られることになっています。繭美は彼が逃げないように見張る役目のようです。
バスに乗ってどこに連れ去られるのか興味がでてきますが、作者ははぐらかしてはっきりとは教えてくれません(僕は勝手に、傭兵にされてどこかの戦場に送り込まれるのかと想像しましたが・・・)。
ところでこの繭美というキャラクターの印象が強烈です。金髪で身長180cm、体重200kgという外人レスラーのような巨漢ですが、顔は可愛らしいとか。ただし言動と行動は粗暴の極みです。
実はこの繭美以外の女性はあまり特徴がないというか・・・、5人の恋人達にはあまり個性も魅力も感じられません。ちょっとキャラが立っているのは第三話のユミくらいでしょうか。伊坂の小説にでてくる女性の描写には面白みがない気がします。伊坂は女性の登場人物を魅力的に描くことに興味がないのかも。
一方、星野がなぜすぐに女性と親しくなって彼女らの部屋に入れるのか、これは各短編の冒頭に星野と彼女らとの出会いが描かれているので、なんとなく解る気がします(解っても真似はできませんが)。
第5章の女優との別れ話の当たりから物語の温度が上がってきて、第6章でクライマックスを迎えます。5章までが最終章のお膳立てに過ぎないことがはっきりしている小説だと思いました。章を追うごとに繭美のキャラクターが浮き上がってくる感じです。
最後に、タイトルのブラックバードって主人公の星野のことなのでしょうね。ビートルズのブラックバードは自由を求める者の歌でしたが・・・星野はそれまでの自由をすべて失いかけているので、皮肉なタイトルですが、自業自得かもしれませんね。(最後の最後で自由を得られた可能性も残されていますが。)
それは30歳になったばかりの星野一彦と、彼の婚約者?の金髪でハーフの繭美の二人です。そして3番目の登場人物は星野の恋人で、彼はこれから順番に今でも付き合っている5人の恋人に順々に別れを告げるために、繭美と一緒に彼女らの部屋を訪れることになります。
これは太宰治の「グッド・バイ」へのオマージュ作品として企画されたとか。僕は太宰を読まないので果たしてその目論見は果されたのかどうか分かりませんが。
一編ずつ独立した話ではありますが、読み進むと次第になぜ星野が繭美を伴って5人の恋人に別れ話をすることになったのか判ってきます。どうも星野は返せないほどの借金を作り、さらに裏社会のある人物の怒りをかってしまったらしい。そこで恋人に別れを告げたらバスに乗せられてどこかに連れ去られることになっています。繭美は彼が逃げないように見張る役目のようです。
バスに乗ってどこに連れ去られるのか興味がでてきますが、作者ははぐらかしてはっきりとは教えてくれません(僕は勝手に、傭兵にされてどこかの戦場に送り込まれるのかと想像しましたが・・・)。
ところでこの繭美というキャラクターの印象が強烈です。金髪で身長180cm、体重200kgという外人レスラーのような巨漢ですが、顔は可愛らしいとか。ただし言動と行動は粗暴の極みです。
実はこの繭美以外の女性はあまり特徴がないというか・・・、5人の恋人達にはあまり個性も魅力も感じられません。ちょっとキャラが立っているのは第三話のユミくらいでしょうか。伊坂の小説にでてくる女性の描写には面白みがない気がします。伊坂は女性の登場人物を魅力的に描くことに興味がないのかも。
一方、星野がなぜすぐに女性と親しくなって彼女らの部屋に入れるのか、これは各短編の冒頭に星野と彼女らとの出会いが描かれているので、なんとなく解る気がします(解っても真似はできませんが)。
第5章の女優との別れ話の当たりから物語の温度が上がってきて、第6章でクライマックスを迎えます。5章までが最終章のお膳立てに過ぎないことがはっきりしている小説だと思いました。章を追うごとに繭美のキャラクターが浮き上がってくる感じです。
最後に、タイトルのブラックバードって主人公の星野のことなのでしょうね。ビートルズのブラックバードは自由を求める者の歌でしたが・・・星野はそれまでの自由をすべて失いかけているので、皮肉なタイトルですが、自業自得かもしれませんね。(最後の最後で自由を得られた可能性も残されていますが。)
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1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。
長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。
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- 出版社:双葉社
- ページ数:368
- ISBN:9784575515657
- 発売日:2013年03月14日
- 価格:680円
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