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かもめ通信
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朝目覚めて、仕事に、学校に、どうしても行きたくなかったら、こんな本を読んでみる?!(注:その結果、虫になろうが、クビになろうが、しかられようが、保証の限りではありません。)
実を言うと私は、
朝、目覚めたら虫になってしまっていたというこの奇妙な物語を
はじめて読んだ10代の頃からかなり好きだった。
けれどもそういう感想を口にすると、
必ずと言っていいほど相手が「変なものをみてしまった!」
とでもいうような嫌な顔をするので、
これまであまり口に出したことはなかったのだけれど……。

今回、カフカの他の作品を読む前に、
予習のつもりで久しぶりに読んだのだが、
やっぱり相変わらず(すごく好きだなあ)というのが率直な感想だったので
ちょっとばかり勇気をだしててカミングアウトしてみることにした。



(かつてのカフカの仕事場は今はショップに/プラハ)



この物語をはじめて読んだ頃、私は学校嫌いだった。
中学時代には不登校も経験したし、高校に入ってようやく学校が楽しくなってからも
年中保健室の常連だったし、自宅と学校が目と鼻の先であったにもかかわらず
雨が降ったからとサボったこともある。

朝、起きて学校に行きたくない。
このままベッドの中で過ごしたい。
見えなくなってしまえたら良いのに。
何か他のものになれたなら。
そう願ったのは他ならぬ私自身なのだ。

仕事に行かなくてはいけないことはわかっている。
自分の肩に家族の生活がかかっていることも。
妹の夢を叶えてやりたいともおもっている。
それらはもちろん本心なのだけれど、
でもそれでも、仕事は
グレゴール・ザムザにとって、本当にやりたいことではなかったのだ。

もしも自分がそうした義務を放棄し
もしも自分が家族の役に立たず
ただのお荷物にしかならなかったら
家族は自分を愛してくれるだろうか……

カフカの、グレゴールの苦悶と絶望に
今も昔も私は共鳴してしまうのだった。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2234 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. ふらりん2015-03-22 09:56

    こんにちは。ここで使っている名前、ふらりんのふらはフランツ・カフカのフラなのですよ。変身は始め読んだ時かなり衝撃的でしたが、私も好きな作品です。

  2. かもめ通信2015-03-22 10:02

    ええっ!ふらりんさんのふらはフランツ・カフカのフラなんですか!!
    それはすごいっ!

    実は私、今、カフカの「城」を読んでいるのですが、まるで迷路に迷い込んだみたいなんですよね。。。。(汗)

  3. ふらりん2015-03-22 10:10

    ←の写真の飼い猫の名前がフランツという名前なのです・・・。そこからここで使う名前をつけました。カフカ氏の作品は「不条理」とかひと言ですませてしまうにはもったいないというか、申し訳ないというか・・・。「城」のストーリーは憶えてないのですが、多分迷路に迷い込んだまま読了してしまうのではないかと(笑)

  4. かもめ通信2015-03-22 10:13

    おおっ!フランツって名前なんですね!猫さん!
    もしかして、朝起きたら猫になっていた……とか……ww

  5. ラビー2015-03-22 10:41

    朝起きてネコになってたら・・・うちのネコだったらしあわせかも(え? 野良だったら、生き残れる自信なし・・・野生持ち合わせてないし(笑

  6. かもめ通信2015-03-22 10:54

    まあラビーさんの場合は、朝目覚めたら、相方様の愛猫になっていた…というのなら、相当幸せになれるでしょうが、まかりまちがってじっちゃんの……(以下自粛)ww

  7. ラビー2015-03-22 11:19

    相方さまのネコになったら、ご主人様にべったべたの甘ったれネコ決定ですな(わはは
    まかりまちがって・・・ぎゃーーーーーっ
    虫になったほうが・・・(どこか違う

    変身は、高校の頃読みました。
    図書室にある本で、こういうお話って、珍しかったのかなぁ~
    私も、印象に残ってて、好きだったなぁ。

  8. かもめ通信2015-03-22 20:33

    どうせならラビーさんは鳥になったほうがw(ますます違う

  9. oha20062015-03-27 02:13

    かもめさんは、春樹はお嫌いでしたっけ? 海辺のカフカは、ともかく 恋するザムザは、お読みになった?

  10. かもめ通信2015-03-27 07:51

    ohaさん!「恋するザムザ」!なんですかそれ?!思わずググってしまいましたw
    私、重症ハルキアレルギー患者ではありますが、読みます!それ読みます!!
    教えてくださってありがとうございます。

  11. Tetsu Okamoto2015-04-01 05:03

    アップロードありがとうございます。横田順弥のパロディ短編でミズコール・サムサが朝おきたら氷になっていた、というプロットのものがあったのを思い出しました。

  12. かもめ通信2015-04-01 06:07

    Tetsu Okamotoさん
    え?氷ですか?氷ってことは、生きものでもないんですよね??
    どういう展開になるのでしょうか、ちょっと興味がわいてきましたw

  13. noel2021-11-30 11:28

    >もしも自分がそうした義務を放棄し、もしも自分が家族の役に立たず、ただのお荷物にしかならなかったら、家族は自分を愛してくれるだろうか……

    現実問題として実感ですね。

  14. かもめ通信2021-11-30 16:24

    そうですね。実際にはあり得ない話のはずなのに,読むたびとてもリアルに迫ってくるものがあります。

  15. noel2021-11-30 16:32

    姥捨て山も、そのコンセプト上にあるのでしょうね。役に立たなければ、いかに貢献者であったとしても、もう用済みである、と……。

  16. かもめ通信2021-11-30 16:56

    私は自身の存在意義をめぐる苦悩という風に受け止めましたが。

  17. noel2021-11-30 21:57

    わたしは何のために存在するのか、それとも存在し終えてしまった人間なのか……。

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