ぷるーとさん
レビュアー:
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ドイツ留学の思い出を典雅な擬古文で綴った、森鷗外の代表作。
鷗外は、幕末、津和野藩の典医森静男の長男として生まれた。藩の典医とはいっても、あまり裕福ではない下級武士階級、鷗外の母峰は跡継ぎ息子を優秀な医者とするためにスパルタ教育を施したことで有名だ。明治になり、その自慢の息子林太郎が、国費でドイツに留学することとなった。そういった晴れがましさは、一家の気分を高揚させただろうし、期待を一身に受けている鷗外自身も鼻高々な気分だっただろう。
鷗外は、そういった期待を一身に受けながらも、ただ学問一辺倒というだけではなく外国留学生活を心おきなく満喫している。それは、いつも自分の行動を規制しつづけていた母親の厳しい目から離れることができたという開放感からくるものだったのではないだろうか。
留学生活を満喫している鷗外は、かの地での恋も経験した。その相手をモデルとした作品が『舞姫』だ。 『舞姫』には、自我に目覚め恋人との生活に重きをおこうとする青年が、官僚主義の中にのみこまれていく苦悩と挫折が描かれている。機械の一部と化したようなような人間にはなるまいと思いながらも、主人公豊太郎はついには恋人を捨て、官僚として日本に帰っていく。
鷗外と実際の恋人との関係がどれほどのものだったのかはわからないが、エリスがわざわざ日本まで鷗外に逢いに来たことから考えると、かなり深い仲だったのだろう。物語では豊太郎の立身出世だけを願いながら母親は亡くなってしまうが、鷗外の母は豊太郎の母とは違って健在だったから、留学中鷗外の頭の片隅にはわが子の立身出世だけを願い続けている母の姿がちらついていただろう。母の手の届かないところでは思い切りはめを外したものの、最後にはやはりちらつく母の姿に恋も諦めなけれればならなかった。恋人を捨てたのは、官僚主義だけでなく、家族のしがらみも強く絡んでいたに違いない。
話そのものはよくあるモチーフともいえるが、異国情緒にあふれた内容が典雅な擬古文でよりロマンチックな印象を強めており、鷗外のロマンチシズムが遺憾なく発揮されている。 実際の体験をもとにしているということもあってか、鷗外の描く異国の女性は、情緒にあふれ、艶やかでなまめかしい。
鷗外は、そういった期待を一身に受けながらも、ただ学問一辺倒というだけではなく外国留学生活を心おきなく満喫している。それは、いつも自分の行動を規制しつづけていた母親の厳しい目から離れることができたという開放感からくるものだったのではないだろうか。
留学生活を満喫している鷗外は、かの地での恋も経験した。その相手をモデルとした作品が『舞姫』だ。 『舞姫』には、自我に目覚め恋人との生活に重きをおこうとする青年が、官僚主義の中にのみこまれていく苦悩と挫折が描かれている。機械の一部と化したようなような人間にはなるまいと思いながらも、主人公豊太郎はついには恋人を捨て、官僚として日本に帰っていく。
鷗外と実際の恋人との関係がどれほどのものだったのかはわからないが、エリスがわざわざ日本まで鷗外に逢いに来たことから考えると、かなり深い仲だったのだろう。物語では豊太郎の立身出世だけを願いながら母親は亡くなってしまうが、鷗外の母は豊太郎の母とは違って健在だったから、留学中鷗外の頭の片隅にはわが子の立身出世だけを願い続けている母の姿がちらついていただろう。母の手の届かないところでは思い切りはめを外したものの、最後にはやはりちらつく母の姿に恋も諦めなけれればならなかった。恋人を捨てたのは、官僚主義だけでなく、家族のしがらみも強く絡んでいたに違いない。
話そのものはよくあるモチーフともいえるが、異国情緒にあふれた内容が典雅な擬古文でよりロマンチックな印象を強めており、鷗外のロマンチシズムが遺憾なく発揮されている。 実際の体験をもとにしているということもあってか、鷗外の描く異国の女性は、情緒にあふれ、艶やかでなまめかしい。
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 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 
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- 出版社:
- ページ数:17
- ISBN:B009IYDZTW
- 発売日:2012年09月27日
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