書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

星落秋風五丈原
レビュアー:
文豪戦記 明治篇~禁じ手あり 目眩ましありの 筆バトル
「序 論争の人間味」は、まあ、置いといて、
「鴎外にだけは気をつけよ」「鴎外はじめて苦境に立つ」
「論理に勝って気合負け逍遥」「鴎外の追撃を断ち切った逍遥」
「樗牛が鴎外に罠を仕掛ける」「評論から手を引く羽目になった鴎外」
「対決を回避して遁走する鴎外」「樗牛が逍遥に噛まれて謝る」
「手練手管の度を越した樗牛の小細工」「樗牛が釈明の機を逸する」
「西洋思想史を居丈高に説教して空振り」など、
これは文学談義ではなく、何かの戦記か?と見紛うタイトルばかり。

 では、必要なのは盾と矛?いえいえ、やはりインクとペン。
そして、やはりこれは、ひとつの戦。

 なぜなら、文学史も歴史の一つ。歴史といえば勝者の記録しか残らない。敗者になれば、的外れのラベルを貼られ、しかも自らは訂正できない歴史の彼方まで貼られっぱなし。実際、高山樗牛の項目を辞書で引いてみたら、ニーチェ主義のラベルがついていた。勘違いした熱血親友さまさまなのだが、これじゃあ樗牛は浮かばれない。

 そんな事態を避けるには、答えは一つ、勝てばいい。どんな手段を使っても。皮肉、挑発、困った時には論理のすり替え、開き直り。豊富な語彙を持つ表現・論理のプロが、自らの存続を賭けて戦う、
やはりこれは、ひとつの戦。

 ただでは読まさぬ。苦労して読めと言わんばかりの文章だったが、読みかかった本を諦めるのは悔しいので、辞書を片手に何とか読むと、やっと作家の生の姿が見えてきた。読者と書物の格闘。そんな読書も、たまにある。
やはりそれも、ひとつの戦。

登場人物や登場書籍は、巻末に詳細な説明あり。いざと思わん勇者は、どうぞ。
2004年読売文学賞/研究・翻訳賞受賞作品。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2329 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

読んで楽しい:19票
参考になる:14票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. かもめ通信2016-09-19 08:20

    鴎外、根に持ちそうな感じww

  2. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『文豪たちの大喧嘩―鴎外・逍遙・樗牛』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ