一九四一年、六月二十三日。
ヒトラーが電撃的にソ連に侵攻したバルバロッサ作戦の開始後、二日目。
ハンニバル“峻厳”公が建てたレクター城で、公から数えて八代目、八歳のハンニバル・レクターは、妹のミーシャと濠で黒鳥にパン屑を投げ与えていました。
その時、地響きが轟き、水面が震え、遠くから爆発音が。
ミラノのスフォルツァ家とヴィスコンティ家の血を継いだ美しい母親と、父のレクター伯、使用人、家庭教師のヤコブ先生たちと森の中にある狩猟ロッジに逃げたハンニバル一家。
ヒトラーのソ連侵攻作戦の続いた悲惨な三年半の間、レクター一家は森の中でどうにか生き延びたのですが、ハンニバルとミーシャの二人を残して全員が戦闘に巻き込まれて死亡。
そして二人はロッジに潜んでいたのですが、飢えた対独協力者の一味に押し入られ、
ハンニバルだけが生き残り、
孤児院でひどい生活をしていたハンニバルは、父の弟であるロベール・レクターに引き取られました。
家族全員を失ったショックからか、言葉を発することができなかったハンニバルの心を癒してくれたのは、美しい叔母、ロベールの妻の紫夫人でした。
日本の美術やしきたりを教えてくれた紫夫人。
伯父は早くに亡くなり、美しい叔母と暮らし続けたハンニバルには、やり遂げなくてはならない復讐があったのです・・・
シリーズ通して読んでいたのになぜだかこれだけ読むのを忘れていたと、つい最近気づきました。
なぜに『人喰いハンニバル』と呼ばれるような男に、彼がなってしまったのかがよく理解でき・・・
とはいえ、結構普通の理由があってのことだったのねー、と。
生まれつきだいぶ変わってはいたけれど、悲惨な出来事が彼の狂気を呼び覚ましただけであって、
最初からの『人喰い』ではなかったのだというところが、ちょっと気抜けすることもないような・・・
とはいえ、
幼少期に両親は目の前で殺され、守るべきたった一人の愛する妹があんな目に遭えば、
復讐を果たそうとするのは誰だってそうだと思えること。
ただ、この復讐劇が、彼の中の何かを目覚めさせてしまったことは確かで・・・
美しく愛情深い紫夫人。
彼女がハンニバルのもとを去らずにずっと側にいてくれたなら、
彼のその後は少しは違う方向へ向かうことができたのでしょうか。
シリーズ、一気に読み直したくなってしまいました。
でも、それより、映画が一気に見たくなってしまった!!!
やっぱり私は『羊たちの沈黙』が一番好きで。
何十回見たことやら。
映画の中では、レクター博士がこちらを向いて語りかけるシーンが多いんですよね。
なので、こちらに語りかけられてるようで、
ひしひしとその狂気が伝わってきて、ぐっと引き込まれてしまうんです・・・
い、いますぐ見たいー!!!




仕事のことで鬱状態が続いており全く本が読めなかったのですが、ぼちぼち読めるようになってきました!
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この書評へのコメント
- ランピアン2017-09-18 22:43
たしか劇場公開時のパンフレットにも、映画監督の大林宣彦さんが『羊たちの沈黙』を恋愛映画と解釈した文章を寄せていたと記憶してます。
クラリスは過去のトラウマから正気と狂気の境界に立っているわけですが、レクターは彼女を狂気の世界へ引き込んで自分のものにしてしまうこともできるのに、敢えてそれをせず、試練を乗り越えさせることで彼女を治癒させ、正気の世界へ戻してやるんですね。しかし、クラリスが恢復した時点がすなわち二人の別れとなる、と。
なので、『ハンニバル』で結局結ばれちゃったときには、ちょっとがっかりしてしまいましたね。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - ランピアン2017-09-20 21:48
そうですね。訓練生役がしっかりはまってましたしね
。
初めてあの映画を観たときに驚いたんですが、とてもリアルなんですよ。ご存知かもしれませんが、FBIというのは服装に独特の規則があるんですね。私服警官なので、拳銃を隠すために原則上着を着て、しかも拳銃を抜くとき撥ね上げやすいように、服の裾にリベットを打っておくそうです。
拳銃を吊るす場所も独特で、普通の警官のように腰とか脇の下じゃなく、目立たないようあばら骨の窪みのところに張り付けるように隠し持つんですね。映画ではそこらへんもかなり忠実に描かれています。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - ことなみ2017-09-24 01:06
ずいぶん前に映画を見ました。ライジングか見なくちゃ、とおもって。やはり暗い異様な雰囲気でしたが、レビューを読ませていただくと原作の方が面白そうです。まだ読んでないのですがいつか。
コン リーは好きでDVDを何本か見ましたが、これに出ていることは意外でした。レクターを育てるんですね。
コンリーの「たまゆらの女」という、列車で月二回10時間かけて詩人の男に会いに行く、背景も美しくて情感(色気)たっぷりの作品が好きです、賞の対象にもならず地味なんですが。
映画を語るところじゃなかったですね(>人<;)すみません
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- 出版社:新潮社
- ページ数:246
- ISBN:9784102167069
- 発売日:2007年03月01日
- 価格:540円
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