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ゆうちゃん
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デーン家の姉妹は家族に見立てた5体の人形を持っていた。心を持つその5体は自分たちの家が欲しくなり、その夢は実現したが、家と一緒に高価な人形もついてきて、一家はその召使にされてしまう。
「やりなおし世界文学」の一冊に入っていたので、読んでみました。

題名の通りまさに人形の家の物語。エミリーとシャーロットのデーン家の姉妹には、プランタガネット一家に見立てた人形が5体あった。もともと男の子の人形だったものが、前の持主の子どもに髭をいたずら書きされてしまい、一家のお父さん役になったプランタガネットさん、安っぽいセルロイドで出来ているプランタガネットの奥さん(ことりさん)、ふたりの長女役でこの本の主人公の木の人形のトチー、親指程のフラシ天で出来た小さな幼い人形でふたりの長男のりんごちゃん。そして飼い犬のかがり。トチーは珍しい一文人形で、実はエミリーとシャーロットのひいおばあちゃんであるローラの代からデーン一家の人形だった。
エミリーとシャーロットは5体の人形を靴箱に入れて取り出してはおままごとをしていたがプランタガネット一家は自分たちの家が欲しかった。トチーは昔、ローラのものだった人形の家のことを思い出してプランタガネットさんたちに話した。丁度その頃、ローラが亡くなり、ローラの家から埃だらけの人形の家が出て来た。ローラの親族は小さい女の子がある家に贈ろうと言いだし、その人形の家はエミリーとシャーロットにプレゼントされた。トチーは昔の家だとわかったが、その家に自分の後から来たマーチベーンと言う傲慢な性格の人形のいたことを思い出した。エミリーとシャーロットはお母さんに手伝ってもらいながら人形の家を洗い、家具も綺麗にした。プランタガネット一家は自分たちの新しい家を得て喜んだが、ソファセットと椅子はボロのままだった。エミリーは、ソファも骨董品だから骨董品のミニチュアのものを手に入れなければならないと言う。姉妹の親族のイニスフリーおばさんがふたりのためにソファを修繕してくれることにした。そのお礼という訳ではないが、エミリーとシャーロットは、おばさんが役員をしている目の見えない子のために人形の展示会にトチーを貸し出すことにした。トチーは自分が売られてしまったと誤解していたが、その展示会でトチーの真向いに置かれたのが、やはりローラの家で見つかりクリーニング屋で綺麗にされたマーチベーンだった。展示会が終わり、クリスマスが来た。トチーは売られずにデーン家に戻されたが、同時に展示会に並べられていたマーチベーンもデーン家に送られた。エミリーは、人形の家はマーチベーンに相応しいと言い出し、プランタガネット一家は台所に追いやられ、マーチベーンの召使い役にされてしまう。

人形の家というと、イプセンの名作を思い出す。ぽんきちさんも読み比べをされていたが、その真似をしてみた。邦題は一緒だがイプセンを本歌取りしているような形跡はない。しいてそれっぽいのは、イプセンの方は人間の姿を人形に託し、本書の方は、エミリーとシャーロットと言う人間の性向を描きながらも、プランタガネット一家と言う人形たちにも人間の姿を投影して描いている点かなと思う。ことりさんは、セルロイドで出来ているせいか、人形としても、またその性格も軽く描かれているものの、最後には勇敢な行動を取って皆の心の中に残る。人形では重さが大きな価値に見えるが実際はそうではない。それは人間にとってお金が大事に見えるが実際にはそうではないのと一緒のようだ。いいおじさんが、人形やぬいぐるみには、魂があると言うと笑われてしまうかもしれないが、人形とはそういうものだ。実家を取り壊してしまうことになってしまったが、親が大切にしていた人形は、弟や息子に呆れられながらも、人形供養とはせずに、ほぼ救い出してしまった。人形に人間を託して小説を書いても全くおかしなことはない。
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ゆうちゃん
ゆうちゃん さん本が好き!1級(書評数:1688 件)

神奈川県に住むサラリーマン(技術者)でしたが24年2月に会社を退職して今は無職です。
読書歴は大学の頃に遡ります。粗筋や感想をメモするようになりましたのはここ10年程ですので、若い頃に読んだ作品を再読した投稿が多いです。元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、最近は、文明論、科学ノンフィクション、音楽などにも興味が広がってきました。投稿するからには評価出来ない作品もきっちりと読もうと心掛けています。どうかよろしくお願い致します。

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