ikuttiさん
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「隠り江」は主人公の心の投影。歯の痛みは心の痛みと思って読み返すと命の連鎖が見えてくる。
主人公は妻の三回忌の後にf植物園へ園長として転任してきた。忙しさにかまけて放置していた歯が耐えられないほどの痛みとなり歯科へと行く。決めていた歯科ではなく間違いだと気づいたのは治療を終えからだった。他に患者はおらず、歯科医師の妻はときどき犬になる。
やはり始まりから梨木ワールドである。
『家守綺譚』でこの世とあの世の境界を『裏庭』では自分と向き合うための内面世界を、『沼地のある森を抜けて』では命の繋がりの物語を書いてきた。
いつもテーマは境界だ。f植物園の「隠り江」(こもりえ)で出会うナマズ神主やカエル小僧は現実なのか夢なのか。
この本は7年ぶりの再読で文庫になって私の手元に再びやってきた。以前読んだときは主人公が落ちる「大木のうろ」が気になり、洞は主人公の心の虚もしくは空に繋がるのかと思ってきた。今は水の流れの滞りがとても気になっている。
「洞」という字は水が通り抜けるほら穴という意味を持つ。水が通り抜けるのが当たり前なのだ。何度も登場する言葉「治水」。「治」といいう字は大地を耕し水をおさめるという意味だ。水の流れが滞るところすなわち澱みで気の流れの滞りに繋がる。歯の痛みは心の痛みに通じる。主人公が手入れをする「隠り江」の荒れはそのまま心の状態なのだ。
「ナスベキハイエノチスイ」
水が流れ出した。少しずつ。
あちこちに差し込まれたエピソードが派生読書へと繋がりそうです。
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梨木香歩と「境界」
書評あり
『沼地のある森を抜けて』
『ワニ―ジャングルの憂鬱草原の無関心』
『りかさん』
『ぐるりのこと』
『僕は、そして僕たちはどう生きるか』
『ピスタチオ』
書評なし
『家守綺譚』
『裏庭』
『からくりからくさ』
『この庭に―黒いミンクの話』
書評なしもいずれ再読して‘今’の書評を書きたいが、まずは梨木本の積読2冊をどうにかしたい。
主人公・佐田豊彦を知りたくてf植物園と思われる小石川植物園へ行ってきました。小石川公園は非常に低地で近くには「窪」のつく名称も多くあり、崖地を自転車で走るのは非常に気持ちよかったです。
やはり始まりから梨木ワールドである。
『家守綺譚』でこの世とあの世の境界を『裏庭』では自分と向き合うための内面世界を、『沼地のある森を抜けて』では命の繋がりの物語を書いてきた。
いつもテーマは境界だ。f植物園の「隠り江」(こもりえ)で出会うナマズ神主やカエル小僧は現実なのか夢なのか。
「隠り江」は最近の私の熱情の対象となっている。
この本は7年ぶりの再読で文庫になって私の手元に再びやってきた。以前読んだときは主人公が落ちる「大木のうろ」が気になり、洞は主人公の心の虚もしくは空に繋がるのかと思ってきた。今は水の流れの滞りがとても気になっている。
「洞」という字は水が通り抜けるほら穴という意味を持つ。水が通り抜けるのが当たり前なのだ。何度も登場する言葉「治水」。「治」といいう字は大地を耕し水をおさめるという意味だ。水の流れが滞るところすなわち澱みで気の流れの滞りに繋がる。歯の痛みは心の痛みに通じる。主人公が手入れをする「隠り江」の荒れはそのまま心の状態なのだ。
「ナスベキハイエノチスイ」
水が流れ出した。少しずつ。
あちこちに差し込まれたエピソードが派生読書へと繋がりそうです。
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梨木香歩と「境界」
書評あり
『沼地のある森を抜けて』
『ワニ―ジャングルの憂鬱草原の無関心』
『りかさん』
『ぐるりのこと』
『僕は、そして僕たちはどう生きるか』
『ピスタチオ』
書評なし
『家守綺譚』
『裏庭』
『からくりからくさ』
『この庭に―黒いミンクの話』
書評なしもいずれ再読して‘今’の書評を書きたいが、まずは梨木本の積読2冊をどうにかしたい。
主人公・佐田豊彦を知りたくてf植物園と思われる小石川植物園へ行ってきました。小石川公園は非常に低地で近くには「窪」のつく名称も多くあり、崖地を自転車で走るのは非常に気持ちよかったです。
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読書&書評リハビリ中
山登り始めてみました
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- 出版社:朝日新聞出版
- ページ数:240
- ISBN:9784022646675
- 発売日:2012年06月07日
- 価格:525円
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