darklyさん
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面白おかしく書いてあるが、漱石の忸怩たる思いは本物だったと思う。#カドブン
#カドブンで松山人だからという理由で「坊ちゃん」の書評を書こうと、早速本屋で角川文庫版「坊ちゃん」を購入し読んでみるとこれが面白い。色々な意味で大人になって読むと面白い。読んだのは小学校高学年か中学の頃なので数十年ぶりということになりますが、このような機会がないと再読することもなかったかもしれないと思うと角川書店さんに感謝です。
実を言うと私は生粋の松山人ではありません。松山出身でもなければ住んだのも子供の頃の数年、30歳半ばまで一番長く住んだのは東京です。そこからは松山に住んでますので今では一番松山が長くなりました。つまり松山と東京にかなりいたことになりますのでその視点から書きたいと思います。
松山人は表面はすごく柔らかいのですが、結構底意地が悪いというか裏表があって利己的な人も散見されるという印象です(【注】あくまでも個人的な印象です)。車の運転は割と本性が出ると言いますが、愛媛には「伊予の早曲がり」という言葉があります。これはこちらが直進中、対向車が右折で待っているときに左折信号を出すと先に右折しようとすることを表します。お分かりの通りこれ結構危ないんです。大体早く曲がろうとする人は周りをよく見ていないので曲がり始めてから歩行者に気づいて急ブレーキも多く、道を塞いだりするわけです。これ老若男女問わず多いです。
また二車線道路は通常速い車が右側ですが、お構いなく右側を遅い車が走る。すると二台の車が平行に走って早く行きたい人も行けない。私はこれを「松山フォーメーション」と呼んでいます。
なのでかなりデフォルメしているとはいえ、坊ちゃん(夏目漱石)が松山に赴任してきた後に起こることや感じたことは共感できることもあり思わず笑ってしまいます。一方、東京人、生まれも育ちも東京の友人も沢山いますが、口は悪いがあまり裏表のない印象です。もちろん坊ちゃんほど極端ではないですけれど。ちなみに大阪にもかなり住みましたが大阪も違う意味で口は悪いが義理人情には厚いタイプの人が多いような気がします。
大人になってこの小説を読み返してみると、当時は分からなかった地理もリアルに分かって面白いです。子供の頃は生活圏が自分の家の近くだけなのでよく分からなかった地理関係も、坊ちゃんがどのようにどこへ行ったのか、ここで食べたのかまで分かるので楽しい。小説では住田と書かれてある「道後温泉」、現在の私の家に近い「古町」の駅、「青嶋」と書かれてある高浜の沖の「四十島」。野だいこがこの島をターナー島と命名し、今ではその名も使われています。
ちなみに「青島」という実在する島は長浜の沖にありますが、島民9人に対し猫が100匹以上という猫島として有名です。その北にはダッシュ島として有名な由利島もあります。坊ちゃんが赴任してきたのが松山中学、現在の松山東高等学校です。公立の名門校です。田中麗奈主演で映画化された「がんばっていきまっしょい」の高校です。
また坊ちゃんが赤シャツと野だいこと共に海で釣りをするのですが、そこで釣れたのがゴルキ(現在の松山ではギゾ)。実はギゾには二種類あって緑っぽい色の青ギゾは美味しいのですが、赤っぽい色の赤ギゾは不味い。別名「猫またぎ」と呼ばれています。猫でも食べずにスルーするという意味です。残念ながら小説の中で骨が多くて不味いと船頭が言うところからも赤ギゾだと思われます。
大人になって読んで思うのは清の存在の大きさです。親からも兄からも愛されなかった坊ちゃんですが、清からは全面的に肯定され愛されます。この清の存在があったからこそ坊ちゃんは自己肯定感の強い前向きな性格となったのでしょう。人はこのように成長する過程で無条件に受け入れてくれる存在を必要としているのだと思います。夏目漱石の不幸な生い立ちを考えたときに、この清の存在は漱石が求める父でもあり母でもあるのでしょう。
漱石は松山を離れて10年後に「坊ちゃん」を書いたわけですが、田舎を小馬鹿にしたというより、もしかすると本当に意趣返しだったのでは?というのが私の仮説です。そうだとするとこの小説が評価され、売れて、さぞかし溜飲を下げたことでしょう。しかし、「漱石先生にはやられてしもうたぞなもし※」と言いながら、ちゃっかり「坊ちゃん」を商売に結びつけるしたたかな松山人の方が一枚上手なのかもしれません。今でも、「坊ちゃん団子」「坊ちゃんスタジアム」「マドンナスタジアム」「坊ちゃん列車」「坊ちゃん劇場」を始めとして飲食店のメニューにも「坊ちゃん」のキャラクターの名前が並びます。
※私が生まれてこの方どんな高齢の人と話しても、こんな口調の人には一度も出会ったことがありません。
実を言うと私は生粋の松山人ではありません。松山出身でもなければ住んだのも子供の頃の数年、30歳半ばまで一番長く住んだのは東京です。そこからは松山に住んでますので今では一番松山が長くなりました。つまり松山と東京にかなりいたことになりますのでその視点から書きたいと思います。
松山人は表面はすごく柔らかいのですが、結構底意地が悪いというか裏表があって利己的な人も散見されるという印象です(【注】あくまでも個人的な印象です)。車の運転は割と本性が出ると言いますが、愛媛には「伊予の早曲がり」という言葉があります。これはこちらが直進中、対向車が右折で待っているときに左折信号を出すと先に右折しようとすることを表します。お分かりの通りこれ結構危ないんです。大体早く曲がろうとする人は周りをよく見ていないので曲がり始めてから歩行者に気づいて急ブレーキも多く、道を塞いだりするわけです。これ老若男女問わず多いです。
また二車線道路は通常速い車が右側ですが、お構いなく右側を遅い車が走る。すると二台の車が平行に走って早く行きたい人も行けない。私はこれを「松山フォーメーション」と呼んでいます。
なのでかなりデフォルメしているとはいえ、坊ちゃん(夏目漱石)が松山に赴任してきた後に起こることや感じたことは共感できることもあり思わず笑ってしまいます。一方、東京人、生まれも育ちも東京の友人も沢山いますが、口は悪いがあまり裏表のない印象です。もちろん坊ちゃんほど極端ではないですけれど。ちなみに大阪にもかなり住みましたが大阪も違う意味で口は悪いが義理人情には厚いタイプの人が多いような気がします。
大人になってこの小説を読み返してみると、当時は分からなかった地理もリアルに分かって面白いです。子供の頃は生活圏が自分の家の近くだけなのでよく分からなかった地理関係も、坊ちゃんがどのようにどこへ行ったのか、ここで食べたのかまで分かるので楽しい。小説では住田と書かれてある「道後温泉」、現在の私の家に近い「古町」の駅、「青嶋」と書かれてある高浜の沖の「四十島」。野だいこがこの島をターナー島と命名し、今ではその名も使われています。
ちなみに「青島」という実在する島は長浜の沖にありますが、島民9人に対し猫が100匹以上という猫島として有名です。その北にはダッシュ島として有名な由利島もあります。坊ちゃんが赴任してきたのが松山中学、現在の松山東高等学校です。公立の名門校です。田中麗奈主演で映画化された「がんばっていきまっしょい」の高校です。
また坊ちゃんが赤シャツと野だいこと共に海で釣りをするのですが、そこで釣れたのがゴルキ(現在の松山ではギゾ)。実はギゾには二種類あって緑っぽい色の青ギゾは美味しいのですが、赤っぽい色の赤ギゾは不味い。別名「猫またぎ」と呼ばれています。猫でも食べずにスルーするという意味です。残念ながら小説の中で骨が多くて不味いと船頭が言うところからも赤ギゾだと思われます。
大人になって読んで思うのは清の存在の大きさです。親からも兄からも愛されなかった坊ちゃんですが、清からは全面的に肯定され愛されます。この清の存在があったからこそ坊ちゃんは自己肯定感の強い前向きな性格となったのでしょう。人はこのように成長する過程で無条件に受け入れてくれる存在を必要としているのだと思います。夏目漱石の不幸な生い立ちを考えたときに、この清の存在は漱石が求める父でもあり母でもあるのでしょう。
漱石は松山を離れて10年後に「坊ちゃん」を書いたわけですが、田舎を小馬鹿にしたというより、もしかすると本当に意趣返しだったのでは?というのが私の仮説です。そうだとするとこの小説が評価され、売れて、さぞかし溜飲を下げたことでしょう。しかし、「漱石先生にはやられてしもうたぞなもし※」と言いながら、ちゃっかり「坊ちゃん」を商売に結びつけるしたたかな松山人の方が一枚上手なのかもしれません。今でも、「坊ちゃん団子」「坊ちゃんスタジアム」「マドンナスタジアム」「坊ちゃん列車」「坊ちゃん劇場」を始めとして飲食店のメニューにも「坊ちゃん」のキャラクターの名前が並びます。
※私が生まれてこの方どんな高齢の人と話しても、こんな口調の人には一度も出会ったことがありません。
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昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
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- 出版社:角川書店
- ページ数:223
- ISBN:9784041001219
- 発売日:2004年05月01日
- 価格:300円
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