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DBさん
DB
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深夜に見上げる夜空の話
カドブン2023の本です。
森絵都の作品は初めてだった。
「児童文芸新人賞」の文字に子供向けの話かと思いつつ読んでみました。
中学二年生になる姉の陽子と一つ下の弟リンの物語だ。
ふたりの両親は仕事が忙いと連続で外泊するような親で、姉弟はかなり放任状態で生活していた。
陽子がちょっとしたきっかけで不登校になっても、両親は本人の問題だとばかりに学校からの呼び出しにも応じない。
その代わりに担任の先生からは毎朝電話がかかってくるし、話を聞きつけた母の親友のさおりさんは自宅に姉弟を呼び出して説教してくる。
なんとなくさぼり癖がついた結果である陽子の不登校は、担任が家まで迎えに来るに至って二週間で終わりを告げた。

基本は二人で留守番の姉弟は二人で遊びを考え出していく最高の相棒だった。
最近はまっているのは深夜の屋根登り。
もちろん自宅ではなく他所のお宅の屋根に登ってみるという「子供だから」で済むかどうか微妙な遊びだ。
適応力はあるというべきか、ご近所が寝静まった夜に人通りがなくて周りの建物から見えにくく、犬がいなくてトタン屋根ではない家を見つけ出すのがポイントだとか。
そのまま空き巣の心得と同じだな。

二人だけの遊びだった屋根登りですが、リンと同じ陸上部で陽子のクラスメイトでもある七瀬さんが仲間に加わってきた。
リンから屋根登りの話を聞いて、ぜひ自分も登りたいと参加してきたのだ。
三人で知らない家の屋根に登るスリルにはまっていたある夜、陽子のクラスメイトでキオスクという綽名の男子生徒に屋根登りの姿を目撃されてしまった。
クラスメイトからパシリにされていたキオスクを口封じ代わりに屋根登りに誘うことになったのですが、もともと慎重な性格のキオスクは結局屋根に登ることができず家に帰ってしまった。
そのまま今度はキオスクが不登校になり、さらに自殺未遂をしたという噂まで飛び込んでくる。
いろいろと悩んでいた陽子はキオスクの見舞いに行くことにし、ある覚悟を決めたのだったが。

中学生という大人の階段を上り始めた年頃の子供たちの揺れる心をみずみずしく描き出した作品だったと思う。
四人が成長して社会人になり子供の親になっても、ふとした瞬間に屋根に登って見上げた夜空を思い出すんだろうなと思いました。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2033 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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