書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

Jun Shinoさん
Jun  Shino
レビュアー:
哀切、人間の本性・・激しく虚しいトリュフォー映画の原作。
かなり昔、谷村新司が「ピアニストは撃たないで」という曲を歌っていた。耳慣れないフレーズが唐突に出て来たから、これは多分映画か舞台のタイトルかセリフにでもあるのかな・・と思ってそのままにしていた。やっと長い間の謎に踏み込んだ思い。不思議なもんです。

フィラデルフィア、ポート・リッチモンド地区にある場末の酒場、そこでピアノを弾いているエディのもとに、兄のターリーが転がり込む。ターリーは強面の男たちに追われていた。ターリーはエディに、なぜ正装をして、満席のコンサートホールにいない、と大声で問い、逃亡する。エディはターリーを助けようと思わず追手の2人組の邪魔をして、巻き込まれていくー。


エディは故郷のサウス・ジャージーで音楽の才能を見込まれ、苦労の末華々しくデビューしたクラシックピアニストだった。しかし妻をめぐるトラブルで落ちぶれ、酒場にたどり着いて、人生の目的もなく日々を過ごしていた。長兄クリフトンと次兄ターリーの2人は悪童が長じてヤバい商売に手を出していた。

酒場のハリエットとその夫で元プロレスラーのプライン、エディを助けるウェイトレスのレナ、どこか間抜けでかけ合いを繰り広げる追手のフェザーとモーリス、エディと同じ下宿の娼婦クラリスら、激しく闘うエディを取り巻く者たちもキャラが立ち、物語を盛り上げる。

グーディスは本国での評価はそれほどでもないが、フランスで大変な人気を博したそうだ。そのガラスのような心のうちと、家系的な暴力を好む本性、やさぐれてクールな他者との関係性を丁寧に描写している筆致には、何となく感じるものがある。虚無に近い哀愁、転落した英雄の再生、ハードなバイオンスはアメリカっぽい感じもするけども。

開拓時代、アメリカ西部の酒場には「どうかピアニストを撃たないでください」という貼り紙があったそうだ。もめごと、ケンカ、撃ち合いは日常茶飯事、ピアニストは貴重な人材で、いなくなると困ったわけです。原題「Down There」がフランスで翻訳刊行される時、このエピソードをひっくり返してシャレでつけられたタイトルだとか。トリュフォーは「大人はわかってくれない」に続く長編第2作として映画化したらしい。

このタイトルはなぜか刺さるものがある。大きなホールでピアノを弾いているところをスナイパーが狙っている場面を想像していたので物語はかなり違った。でも心に残るものがある作品だった。

映画も、いつか観ようかな。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
Jun  Shino
Jun Shino さん本が好き!1級(書評数:1366 件)

読む本の傾向は、女子系だと言われたことがあります。シャーロッキアン、アヤツジスト、北村カオリスタ。シェイクスピア、川端康成、宮沢賢治に最近ちょっと泉鏡花。アート、クラシック、ミステリ、宇宙もの、神代・飛鳥奈良万葉・平安ときて源氏物語、スポーツもの、ちょいホラーを読みます。海外の名作をもう少し読むこと。いまの密かな目標です。

読んで楽しい:4票
参考になる:22票
共感した:1票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. ef2022-11-09 18:41

    エルトン・ジョンが1973年に『ピアニストを撃つな!』というアルバムを出していますね(トリュフォー監督の映画にインスパイアされたものだそうです)。

  2. hacker2022-11-09 18:43

    こんにちは。トリュフォーの映画化作品も、主演のシャルル・アズナブール(どこかトリュフォー本人を連想させる雰囲気です)が、いい味を出していて、私は気に入っています。機会があれば、ぜひご覧ください。

  3. Jun Shino2022-11-09 19:42

    こんにちは。コメントありがとうございます〜✌︎('ω')✌︎

    efさん おおエルトン・ジョンが!英語でもやっぱり刺さるタイトルなのですな。トリュフォーの映画、その性格イメージにもマッチしそうな気が。探せばもっとありそうですね^_^

    hackerさん 検索したら登録があったので、hackerさんちゃうかな〜と思ったらやっぱりそうでした。嬉しっす。シャルル・アズナブールは名画にたくさん出てますね。トリュフォーは「突然炎のごとく」のみなので、ぜひ観たいです!

  4. ゆうちゃん2022-11-09 21:38

    日本のジャズピアニスト山下洋輔の小説に「ピアニストを笑え」と言うのがありますが、この辺の小説のパロディかもしれませんね。「ピアニストを撃て」の類はこの書評とコメントで初めて知りました。
    Jun Shinoさんアイコン変えられたのですね。

  5. Jun Shino2022-11-10 16:34

    ゆうちゃんさん、こんにちは。山下洋輔の本、この作品にちなんでる、と解説にありましたよ( ◠‿◠ )ホンマに探せばまだ出てきそうですね。アイリッシュ短編集シブくてナイスですね。
    アイコンは、愛犬が旅立っちゃったのです。またいずれ変えると思います。

  6. hacker2022-11-10 17:16

    アイコンは、そういう事情だったのですね。お悔やみ申し上げます。私も犬猫との別れは何度も経験していますから、その辛さは理解できます。

  7. Jun Shino2022-11-10 18:05

    ありがとうございます。やっぱりいろいろ考えちゃいますね。クスン、なんて。元気回復中です^_^

  8. ゆうちゃん2022-11-10 21:47

    山下洋輔の本、やはりそうでしたか。解説にまで載っているとは・・。
    黒が印象的な可愛いワンちゃんでしたね。僕も実家で犬を飼っていたことがあります。僕の周囲では「虹を渡った」と表現しています。大変ご愁傷様でした。

  9. Jun Shino2022-11-10 22:40

    ありがとうございます。虹を渡った、いい言葉ですね。。元気だし率少し上がりました^_^

  10. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『ピアニストを撃て』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ