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darklyさん
darkly
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夜のみ開催される驚異のサーカス。人々は魅了されるが、そのサーカスを舞台にシーリアとマルコの戦いは続く。過酷な運命に抗う手立てはあるのか。
世界を旅するサーカス「ル・シルク・デ・レーヴ」は夜のみ開かれる。サーカス内のテントには美しくも奇想天外で現実離れした出し物が目白押しだ。魅了されサーカスの追っかけとなる集団まで現れる。それもそのはず、サーカスを支えているのは本物の魔術師だからだ。

いにしえから行われてきた魔術師プロスペロと灰色のスーツの男による戦い。それは今プロスペロの娘シーリアと施設から灰色のスーツの男に引き取られたマルコに引き継がれた。サーカスを舞台に熾烈を極める二人の戦いとは一体どのようなものなのか?惹かれ合う二人に過酷な運命に抗うすべはあるのか?

この作者の作品は先に最新作の「地下図書館の海」を読んで興味を持ち、デビュー作であるこの「夜のサーカス」を手に取りました。個人的には舞台がほとんど別世界で展開される「地下図書館の海」よりも現実と幻想のあわいを行き来し神秘的でノスタルジックな本書のほうが好みでした。

一般的に魔術師や超能力を扱う物は基本的にバトル系の話が多いように思いますが、話が面白いと思えるかどうかの境目は登場人物にとって何ができて何はできないのかという設定にあるように思います。いかにこの設定が上手くいくかによって物語の緊張感や興奮度合いは左右されると思います。そして能力は違えども対称的な戦い、例えば敵を認識しお互いの命をとることが目的であるなど、噛み合うのが通常です。それはある意味少年ジャンプ的、あるいは男性的とも言えるかもしれません。

ところがこの物語はそのような設定にはなっていません。確かに二人は戦っていますが、彼ら自身は何が戦いなのかの自覚もなければ実は誰と戦っているのかも最初は知りません。また別の見方をすればお互いに協力しあっているとも言えるという奇妙なものなのです。だからこそ単純な戦いでは醸し出すことができない物語の深みが増し、そしてその設定が秀逸な物語の結末につながるのです。

そして本書の特徴と言えば脇を固めるキャラクターの魅力が挙げられます。個性的なサーカスを支える人たち、その中でも重要な人物は軽業師「月子」。「月子」は名字なのか名前なのかも明らかでないと紹介されますが、当然日本人をモデルにしていると思われます。謎めいたキャラクターは西洋人が日本文化に感じる神秘性を体現しているようにも思えます。そして彼女は物語上においても大きな役割を担います。

以上のように一風変わった構成を取りながらも、舞台が夜のサーカスで魔術物というファンタジー的にはどストレートな設定、ファンタジー好きなら間違いない作品だと思います。本作品は映画化も進んでいるようです。現代の映像技術ならかなり忠実に作品の雰囲気を出せると思います。こちらも楽しみです。
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darkly
darkly さん本が好き!1級(書評数:337 件)

昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。

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